第6話:転生練金術師は魔力試験を受ける

 ◇


「こちらへどうぞ」


「ああ」


 俺は、まず一つ目の試験である魔力試験を受けるため、ギルドの受付の奥の部屋へと来ていた。


 ここは受験者と試験を見る受付嬢しか入れないということで、リリミアにはギルドで待ってもらっている。


 幸い、すぐに終わるとのことだった。


 部屋の中心には、サッカーボールくらいの大きさの水晶が設置されている。


 逆にそれ以外は何もない部屋だった。


 受付嬢は採点用の用紙を挟んだスケッチボードを携えながら、説明を始めた。


「この巨大な水晶は、対象の魔力を感じとり、計測することができます。こんな風に」


 受付嬢は自ら水晶に触れる。


 水晶が煌き、そして——


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 MP:114

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 奇妙なウィンドウが表示されたのだった。


「これが私の魔力量です」


「これって多いのか?」


「いえ、多くはありませんが……合格点は100MPなので、及第点といったところですね。冒険者であればもう少し欲しいところです」


 基準がわからなかったからこれはありがたいな。


 冒険者でない受付嬢でもクリアしているということは、普通の人ならクリアできるのだろう。


 俺は確か、さっきステータスを見た時にSランクだったから、多分大丈夫だとは思うけど……まあ、測ってみればわかることか。


「魔力量っていうのは、もし少なかったとして増やすことはできるのか?」


「はい。魔力量は消費し、回復することで徐々に増えていくと言われています。逆にまったく使わないと少しずつ衰えますから、日々の鍛錬は大切です」


 まるで筋肉みたいだな。


「なるほど、努力次第でなんとかなるわけだ」


「しかし錬金術師はMPの量に関しても少なく伸び代もあまりないと聞きますが……いえ、なんでもありません」


「まあ、やってみればわかることだよ」


 俺は、さっき受付嬢がやっていたのと同じように水晶に手を触れた。


 水晶がLEDも顔負けなくらい眩く輝く。


 半透明だった水晶はもはや直視できないほどに光を放ち——


 パキ……パキパキ……と、嫌な音をたてた。


「な、なんですかこれは……⁉︎」


「いや、俺が聞きたいんだが……」


「こんなの、ギルドに務めてから初めてですよ!」


「そ、そうなのか?」


 と、そんなことを言っているうちに、魔力量を示すウィンドウが表示された。


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 MP:99999+

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 え、何これ?


 MPが99999+って、十万以上の数値だから表示できないってことなのか……?


「えーと、これってどういう——」


 パリン————ッ‼︎


 受付嬢に何が起こっているのかを聞こうとしたその時、俺が触れていた水晶が突然粉々になってしまった。


 幸い水晶の破片で怪我はしなかったようだが、割れるとは思っていなかっただけにかなり驚かされた。


「あわわわわわ……こ、こんなのあり得ません……あり得ません……」


「なあ、これってどういうことなんだ?」


「こ、これはですね……水晶の魔力許容限界を超えた時に起こる現象……と言われています」


「魔力許容限界?」


 聞き慣れない単語……というか、初めて聞く言葉だったので、反射的に聞き返していた。


「ギルドに設置されている試験用の水晶は、99999MPまでしか計測できないのです。それを超えた際には、耐えきれなくなり爆発してしまいます」


 イメージ的には風船のような感じだろうか。


 限界に到達するまでは問題なく膨らむが、限界を超えると破れてしまう——みたいな。


「そうだったのか……。そう言えば、合格点は100MPだったよな? 試験結果はどうなるんだ?」


「そりゃもう当然、なんの文句もなく合格ですよ‼︎」


 混乱していた受付嬢だったが、この言葉だけはかなり自信があるようだった。


 水晶が壊れたときはどうなることかと思ったが、無事に合格できたようで、安心した。


「こんなの、少なくともこの村——ノイマール村初の快挙ですから! あ、あの……本当にシンヤさんって錬金術師なんですか……?」


「うん。っていうか自分の目で見ただろ?」


「そ、そうですよね……自分の目がもう信じられなくて……シンヤさんは本当に凄すぎますよ……!」


「えっと……ありがとう」


 こんなにベタ褒めされたのは、前世でもなかった気がするので、ちょっと照れてしまう。


 こういうとき、どんな反応をすればいいんだろうな?

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