開拓しますか?発掘しますか?それとも神様殴りますか?

伝説のたにし

第一章 異世界講習

第1話 とりあえず一発殴らせてくれ、そしたら転生してやるよ

 いつか人の努力は報われる

 そんな言葉を信じていた。


 でも、どんなに頑張っても天才にはかなわない

 いつもそうだった。

 最初は上手く出来るんだ。

 だが、"壁"に当たる


 昔、天才に言われた

「君は決して一流にはなれない」

「君はどんなに上達が早かろうと二流止まりだ」


 何かを成し遂げようとした。

 我武者羅になんでもやった。スポーツや武道、勉学から芸術まで多くのことに手を出していた。

 でも、すべて二流ぼんじん止まりだった。


 いつからだろうか、自分の限界に気付けるようになった。

 いつからだろうか、理不尽を道理と納得するようになった。

 いつからだろうか、執念を忘れてしまったのは。


 努力は誰よりもしたのかもしれない


 ・

 ・

 ・


 死というのは一瞬にしてあっという間に訪れる。


 俺はお昼休みにふと散歩に出たのだ。

 その際に建設現場の横を通り抜けようとした時だった

 突風が背中押れ姿勢がよろけたのだ

 体制を立て直した時には先程まで自分の影しか写ってなかった地面に大きな影が近づいていた


 上を見上げたとき、もう目の前には鉄骨があったのだ。


 痛かった。辛かった。

 でも、執着はなかった。

 やりたいことはやり尽くし、何にも成れなかったのだから


 ・

 ・

 ・



 気付くと何もない空間に意識だけがポツンと存在していた。


 終わったという感覚が永遠のような一瞬に漂っていた

 俺は確かに死んだ、それだけは鮮明に覚えてる


 なのになぜ俺は目覚めたのか、意識もはっきりしている

 思考も問題ない



「教えて進ぜよう!!!!!」


 煩っ!頭にキーンと来る様な声が…

 何時からかわからないが、目の前に人ならざる存在がいることだけはわかった

 上手く見えない、ただ人型の輪郭だけは感じることが出来た


「君は死んでしまった、だがしかし!スーパーな神である私によって、本来天に還る魂を引き留めたのよ!!」


 やっぱり死んだのは間違ってなかったんだな

 しかし、なぜ自称スーパーな神(笑)さんが俺の魂を引き留めたんだ?


「(笑)は要らないわよ!」

「最近、神の間で人間転移・転生させて異世界で暮らす様子を眺めるのが流行ってるのよ」

「だから、私もやってみようかなーって」


 ペット感覚か!

 え、理由が思ったよりもしょうもな

 人が安らかな眠りに付こうって思った最中に何してくれるんだ


「エンジョイ&エキサイティングよ!!」


 ウザいなこの神...


「で、これから貴方を転生させる世界について説明するわね」

「ざっくりいうと神々が簡単に介入できて荒し回ったあとの世界なの」


 話が一方通行だな、おい

 まぁ、神話とか見る限りだとロクでもないやつ多いもんな神って…


「そうなのよ、ロクでもない奴多いのよ」

「もうラグナロクなんてしょっちゅう起きてるのよ」

「魔法や神秘が発達したら科学とか司る神がラグナロっちゃって文明埋め立てたりとか、科学が発展したら戦いの神がふざけて全人類核戦争突入させたりとかでね…」


 ラグナロるって動詞はどうなん?

 てか、マジでロクでもない無さすぎるだろ神

  

「でね、その世界に住んでる人々もよく浄化されたり洗い流されたり焼却されたりしてたのよ。世界ごと」

「それでも生き延びて繁栄してるのよ」


 逞しいな人類、とても応援したくなる


「まぁそういう経緯があって主神がお前らいい加減にしろよって多くの神にお触れを出したのよ」

「で、その世界に対しての神の介入をできないようにしたのね」


 ロクでもない奴らの総本山の主神が一番マトモなんだな


「ただ問題があってね、過去に神が遊び過ぎたせいで、その世界自体にとっても神パワー的な力が世界に宿っちゃったのよ。」

「世界を物にすれば一気に主神の座を奪えるくらいに…」


 ちなみに奪われるとなんかあんの?


「神の世界の均衡が崩れて、もれなく神含めて全世界崩壊ぐらいね」


 やばくね?


「やばいわよ?」

「まぁ、私はどうとでもなからどうでもいいんだよねー」


 コイツって基本的に自分勝手なんだな


「それで多くの神が主神の座を狙ってちょっかい出してるのよ」

「しかも、放置しようにも過去の経緯から人間が手にしたらヤバい物めっちゃ眠ってるのよその世界」

「今は安定してる世界だけど、旧文明のヤバ目の遺物が産出したらワンチャン人類がまた滅びるわね」


 ワンチャンのチャンスがでか過ぎる


「世界の端は前世代の魔物が人類生存圏に攻めてくるし、人類生存圏の地下には旧文明の遺跡が爆弾抱えて眠ってるし…」


「でもロマンはあるのよ?」

「その世界では科学も神秘も発展してて文化水準とても高い」

「未開拓地や旧文明圏を探索する"開拓者"と旧文明を発掘して遺品を持ち帰る"発掘家"なんてのがこの世界の2大職業ね 」


「あなたの行く予定の世界はそんな世界よ」


 思ったよりもなんでもありそうな世界だな

 遺跡発掘とか未開拓地の冒険はなんかワクワクする

 てか、拒否権あるの?


「あるに決まってるじゃない、そんな邪神じゃあるまいし」


 邪神の類だと思ってたわ


 ん-、危ないから無しかな...

 前世より悲惨な死に方しそうだし


「ッチ、そこは普通に快諾するところでしょ?」


 舌打ちしたぞこの邪神


「あーあー、折角前世に生き返るチャンスだったのに残念ねー」

「膨大な神パワーものにしちゃえば前世に生き返るんだけどなー」


 そういうメリットは先に言えよ


「え?行きたくなった?」


 いや、全然行きたくないけど

 というか、未練ないからな


「はぁ?期待させるようなこと言わないでよ馬鹿」


 マジでどんどん口悪くなってんなコイツ


「あーもういいですよ、いいですよ、こっちも勝手にやらせていただきますよ」

「神なめんなよー?」


 なんでケンカ腰になってんだよ

 そもそも、そんなに見たいなら別の奴でいいだろ?


「いやよ、貴方以外考えられないわね」


 これは意外だ、もしかして俺すごい才能あるのとか?


「だってそれは....」










「貴方って弄られたら光るタイプじゃない?」


 うん、これはあれだわ

 とりあえず一発殴らせてくれ、そしたら転生してやるよ


「あら?それでいいの?」

「はいどうぞ」


 素直に頭を下げてくるとは潔い

 自分でもカッとなって言ったが、案外聞き分けが良いものだな

 転生すること自体は乗り気ではないが、

 こいつはこのままのさばらせてはいけない邪神だ


 全身全霊の力を込めて頭を一発ゲンコツ食らわせてやる

 それでチャラにしよう

 それでは振りかぶって....







 ってあれ?俺腕無くね?






「ップ」

「アーハッハッハッハッハッハッハ」

「魂なのに体あるわけないじゃない、バーカバーカ」

「ヒィーオナカイタイ...」


「それじゃ契約成立ね、転生させるわよ」



 おい!待て殴れてないだろの今の!無効だろ!?


「残念でしたー!もう転生確定ですー!」


 なんか俺の周りが光り始めた...!?

 おい、せめてチートとか何かないのかよ!!


「あ、それじゃあ私の祝福あげるわねー」

「まぁ、普通に冒険する分には絶対役に立たないと思うけど...」

「貴方なら気に入ると思うわ、頑張りなさい!」


「それじゃ、いってらっしゃーい」


 おい、せめて説明ぐらいしろよ、神いいいいいぃぃぃぃ...........



 ・

 ・

 ・



 真っ白な空間に漂っていた...

 ふわふわとしていて何も感じない

 さっきまで感じなかった次第に手と足の感覚を感じてくる


 体が作られていくのを感じる

 ああこれで俺は......




「あの神をぶん殴れるぞおおおおおおおお」


 思わず声を荒げてしまう

 出来立ての体を身振り手振りとのたうち回る

 とりあえずなんでもいいから八つ当たりしたい気分だった


 徐々に視界がはっきりとしてきた、視覚も聴覚も回復してきたその時だった....



「コイツ暴れているぞ!早く拘束しろ!」


 気付くと俺は鎮圧されていた...

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