第51話

「どう?」

「かなり深いですね…10メートル以上はあるかとおもいます」

「手持ちのロープで一番長いのは30メートルですがここではどこにも結ぶことができません」

「ん~…カミューさん」

「はい!」

「この穴に安藤さんがいるとおもいますか?」

「はい!ほぼ間違いないと思います!」

「そうですか…アリスさん、岩盤を砕くあの鉄の棒ってありますか?」

「はい」

「何本ありますか?」

「10本ほどございます」

「よし!全部ください!」

「かしこまりました」


タチバナ様にくさびと掛矢を手渡すと入念に位置をみて次々打ち込み始めました、たぶんこのくさびにロープを結ぶのだと思います。


「長いロープを2本ください!」

「どうぞ」

「これでよし!テト一緒に来てくれる?」

「にゃ!」

「じゃあ下までいってみてきます!」

「私たちもご一緒を」

「いや、大丈夫!二人にはこっちにいて安藤さんの命綱を引っ張ってほしいんだ」

「かしこまりました」

「ありがとう!じゃあ行ってきます!」

「お気をつけて」

「よろしくおねがいします!!」


タチバナ様がロープを使い降りて行きました…テトが一緒といえど大丈夫でしょうか…。


「おぉ…ギリギリだった…おもったより広いな…おーい!安藤さーん!」


返事がねぇ!ってか声の反響がひどいな…どんだけ広いんだ…。


「にゃぁ~」

「テトどうしたの?」


テトがクンクン匂いを嗅いで歩き始めた!もしかしたら安藤さんをみつけたのかもしれない!


「しゃー!」

「テトそんなに威嚇してどうした…え?」

「ひさしぶりね…こんなに大きくなって…」


テトが威嚇している先には…高校生の時に死んだ俺の母さんが…昔と変わらない笑顔で立っていた…。


「な…なんで母さんが…こんなところに…」

「ふふふ…ここは生あるものと無き者が交わう場所…あなたにずっと会いたくて…」

「そ、そうなのか…」

「ええ!一人にさせてごめんなさいね…つらい思いを随分したでしょう?」


母さんが涙ながらに俺をいたわってくれている…。


「あんた…誰だ?」

「え?なにをいっているの?私はあなたの!ダイスケのじゃない!」

「…はぁ~…俺の母親は二人でいるときには自分のことを名前で呼ばせていたんだ…偽物か…どうりでテトが威嚇するわけだ」

「何を言っているの!あなたが変なことを言うからわかるように!」

「お前…俺の母さんが死んだときのこと知らないだろ?」

「え?自分のことだものもちろん知っているわ!…私はあなたの幸せをねがって最後にやさしく…」

「そうか、まぁそうだよな…でも優しくなんてしてねぇよ!あの人は!」

「え?」

「あの人が言った言葉は…負けるな…たった一言だったんだ!」

「そんな母親いるわけないじゃない!」

「いたんだよ!それが俺の大好きだった母さんだ!」

「ま、まさか…そんな…」

「人の思い出を荒らしやがって…お前はぜったいゆるさねぇからなっ!」

「ちっ!かわった魂だとおもって目を付けたのに…まぁいい…私は幽体だ…お前の…いいや、この世の攻撃は効かないよ!キャッハッハッハッハ!」

「はぁ~…お前馬鹿だろ…」

「失礼だね!馬鹿はおまえだろ!どうやって許さないんだい!いってみな!」

「俺には無理でも俺にはテトがいてくれる」

「はぁ?なんだいそりゃ!」

「テト…たのめるか…」

「なぁ~」

「はっ!そんな子猫になにが…ちょっ!ま、まさかこの感じ…おまえ猫じゃ…ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」

「ガァッ!」

「…母さんが残してくれた手紙には…好きな人と一緒になれた…好きな人との間に俺が生まれてくれた…16歳まで一緒に暮らせた…成人式も結婚式も孫の顔さえみれないと思うと死にたくないって気持ちが少しはあるし心残りでもある…けど概ねいい人生だった!俺が寿命を全うするまでまったく会う気はないから化けてでてくるとか夢にでてくるのはあてにしないで強く元気に幸せに生きろって書いてたんだよ…」


テトに食われた変な女の幽霊だったな…けど久しぶりに母さんを思い出したわ…。


「にゃぁ~」

「大丈夫だよありがとうテト…さぁ!安藤さんをさがそう!」


そのあともテトの後に続いてあちこち歩きまわった。


「はぁはぁはぁ…」

「にゃ!」

「いた!まだ息をしてる!!安藤さん!…だめだ意識がもどらない!テト急いで戻ろう!」


俺は安藤さんを抱きかかえテトに案内してもらって元きた場所に戻り安藤さんに1本ロープをつないでから背負ってそのロープを引いたりゆすったりして上にしらせてから安藤さんを背負ってロープをのぼりはじめた。


「さすが…きづいてくれたんだ…ふぅ!あとすこし!」

「にゃぁ!」

「ああ!ありがとぉぉぉ!!!」

「タチバナ様!」

「アニー!!!!」


テトの励ましで一気に登り切ってカミューさんに安藤さんをみせた。


「タチバナ様おつかれさまでした」

「ありがとうございます!それより安藤さん目を覚まさないんですよ!」

「これは!とりあえず応急処置をします!!」

「すげぇ…」


カミューさんが両手をかざすと淡い光を放ってだんだん安藤さんの呼吸が落ち着いてきた。


「ふぅ~…こ、これで街まで行けば…」

「カミュー洞窟をでるまでふんばれますか?」

「はい…」

「タチバナ様はアニーを、カミュー肩につかまってください」

「ありがとうございます」


この前のフィーネさんみたいにカミューさんも顔が血の気が引いたみたいに真っ白になってフラフラしている…急いで街に戻りたいけど…無理させれない…ああ…もう!


「すみません!うごかないでくださいね!」

「え!?きゃ!」

「タチバナ様!?」

「これで出口まで急ぎましょう!」

「わかりました」


ああ!と叫び右腕に座らせるようにアニーを抱きかかえ左腕でカミューを急に抱えて歩き出しました、たぶん急いだほうがいいと判断したんだと思いますが…まぁ今はしかたありません。


「モネちゃん!ルイちゃん!二人を横にするスペースつくってくれる?」

「かしこまりました」


洞窟を出ると荷物を運ぶために用意していた荷車に二人を寝かせ曳き始めました、相変わらず出鱈目なパワーです。


「んー!!!3人とも乗ってください!」

「え?」

「わかりました、モネ、ルイ急いで乗ってください」

「は、はい!」

「テト案内よろしくね!」

「にゃぁ!」


私たちが乗るとテトはタチバナ様の頭の上にとびのりました。


「一気に行くぞぉぉぉぉ!うぉぉぉぉぉぉ!!!」

「「!!!!!!」」


驚くほどのスピードです……これは帰ってからカードでLVを調べたほうがいいようですね…。


「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

「にゃっ!」

「いたっ!?あっ!」


気合を入れすぎて街に入って家を通り過ぎるところでした…この方は…。


「はぁはぁはぁ…」

「タチバナ様おつかれさまでした」

「は、はい!はぁはぁはぁ…」

「カミューはその子をつれてカリンの元へ、2人はタチバナ様に」


滝のような汗をおかきになり疲労困憊となるのも無理ありません…一息で走り切る距離ではありませんでした…。


「もう戻ってきたの!?」

「はい、それよりカリンを呼んできてください」

「え、ええ…わかったわ」


出迎えてくれたナタリーがアニーをみて少々焦ったように走り去りました、問題はカリンで治せるかどうかです……。


「カリン先輩!どうですか!?」

「これは…私では治せません…」

「そんな!」

「フィーネの案件です」

「!!!!!!」

「フィーネどうなんですか?」

「そうね、一言で言うと体は大丈夫よ、せいぜい打撲程度でしょ?」

「はい、それはカミューのヒールでなんとかなっていました」

「じゃあなんで!?」

「魂を削られたのよ」

「え!?」

「簡単に言うと魂の一部を喰われたみたいね、それは生命力に直結しているのよ」

「なんとかなりませんか!」

「それはなるわよ?」

「フィーネ先輩!お願いします!助けてください!」

「報酬次第ね」

「こんな時に!」

「嫌ならいいわ」

「くっ!」

「カミュー、フィーネの力はかなりリスキーなのよ?相手にも自分にもね」

「……………」

「人の命と自分の命を背負わせてあなたは何も背負わないの?」

「!!!!!!」


ナタリーの冷たい視線で放たれた一言にカミューがショックを受けていますがナタリーの言う通りなのとフィーネの力はそれ以外も自身への負担が多いのですよ。


「どうするの?ちなみに……今回は媒介もつかわなきゃならないからもう一人、命を懸けてもらわなきゃならないんだけど」

「え…」

「ちなみに…一応聞かせてもらうけど…その相手って誰なの?」


察しているナタリーの殺気が爆発的に上がるのを感じたモネとルイそれにカリンまでフィーネに冷たい目をむけています…そんなことができるのはあの方しかいないことを全員理解しているということ…そしてあの方は必ず申し出をうけてしまうこともしっているからでしょう…。


「言わなくてもわかるでしょ?」

「ダメよ許可できないわ!」

「ナタリー様のおっしゃるとおりです」

「この豚は自らの軽率な判断でこうなったんです!ご自身とそれをお止めになれなかった担当のミスのしりぬぐいでタチバナ様を危険な目にあわせることはできません!」

「………フィーネ先輩…条件はなんでしょうか…」

「カミュー、あなたの力の一部とこの子のスキルとポイントのすべてよ」

「!!!!!」

「どうするの?」

「お、お願いします…フィーネ先輩」

「わかったわ、アリス頼めるわね?」

「わかりました」

「アリス!ダメよ!」

「ナタリー、ここで私たちが見捨ててはきっとあの方はもう二度と私たちと行動を共にすることがなくなってしまいます」

「そ、それは…」


打算や金品など欲ではなくお気持ちで動く方だと理解しているからこそ…お伝えしなければならないのです…。


「というわけですがどうなさいますか?」

「そんなの助けるにきまってるじゃないですか!」

「わかりました、では参りましょう」


タチバナ様をお連れしてあらためてフィーネから説明をうけることになりました。


「簡単に言うとカミューの力をタチバナをとおしてブーストしたものを私が強制的にこの子に流すのよ、その時に邪魔になるからスキルやポイントをリセットさせてもらうわ」

「先輩…そのためにあんな条件を…ありがとうございます」

「べつにいいわ、それよりカミュー、あなたこの子を救うために自分の力の一部を失う覚悟はあるのね?」

「はい!なんでもします!」

「そう…よかったわ…私を前にいったこと…わすれないでね?」

「はい」

「よくわからないけど俺はどうしたらいいんですか?」

「タチバナはカミューから力をもらいうけてくれるだけでいいわ」

「ど、どうやってですか?俺そんなのやったことがないんですけど…」

「力の受け渡しなら1度やったじゃない」

「え?」

「ま、まさか!」

「ちょっとフィーネ!」

「私にあなたの力をわけてくれたでしょ?」

「え!?ま、まさか…」

「あの…先輩どういう?」

「そうよ、さぁ長引かせるとこの子がどんどん弱るわ、タチバナさっさとカミューにブチューっとやって、ああ、ちなみに私が力をぬきとってあげるから二人は私がOKするまで口づけをしているだけでいいわ」

「ええええええ!?」

「やっぱりぃぃぃ!!む、無理ですって!!!」


フィーネは何を考えているのかわかりませんが…力の譲渡をするまえにタチバナ様が死んでしまうかもしれません。

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