第36話 

「この間はすまなかったね」

「いえ、出過ぎたことをしたんではないかと思ってました」

「そんなことはない、あのタイミングで動けてよかった」

「そういってもらえれると嬉しいですね」

「いや、恥ずかしいことなんだが本当にギリギリのタイミングだったんだ」

「え?」

「被害にあっていた女性社員が裏で署名を集めていてね…集まり次第集団訴訟も考えていたそうだ」

「そ、それは…ヤバかったですね」

「ああ、自分の見る目のなさを痛感するよ…支社を調べると仕事はできるが女癖が悪かったから本社にと思ったらしい」

「うわぁ…」


社長からお誘いを受けて食事にきてこの間のセクハラの件をきいていた。やっぱり女性の行動力というか決断してからの強さってすごい。


「新しい部長が何度となくやめるようにはいっていたそうなんだがね」

「そうなんですね」

「ああ、部長もまだ若いがシングルマザーでね、なかなかの苦労をしているんだよ」

「そうなんですね」

「失礼します、遅れてしまってごめんなさいね?」

「立花さんこんばんわ」

「いえいえ、今日はお誘いいただいてありがとうございます、翔子さんもお久しぶりです」


奥さんと翔子さんがきてその話題はそこまでになって、奥さんがやっている習い事や翔子さんの学校の話題がメインになっていった。


「そういえばご存じ?」

「なにをですか?」

「前にあなたに翔子が助けてもらった駅周辺のことよ?」

「なにかあったんですか?」

「またあの不良たちが集まりだしたみたいなの」

「え?そうなんですか!?」

「ええ、けど前とは少し違うようなのよ」

「ちがう?」

「そうなんです!この間、急に声をかけられて前にあったことを謝罪されたんです」

「へ?」

「これからは地元を守るっておっしゃって何かあればいつでもいってきてほしいって」

「ほぉ~…更生したんですねぇ」

「それはわからないんですが、一度バラバラになってから他からの勢力が攻めてきて自分の地元が荒らされたのがショックでで地元は自分たちが守らなきゃと思ったようです」

「はぁ~…立派な考えですね」

「ええ、実際そのあとからは学校帰りにしつこいナンパなどもありませんし女の子が夕方歩いていても安全にはなっているっぽいです」

「そうですか、よかったですね」

「はい♪」

「ふふふふふ、そうね」


奥さんがなんか含みのある笑顔で俺をみてるんだけど思い当たる節が…ん?もしかして前に助けたときに行ったこと守ってくれてるのかな?そうだとしたらなんだかんだ言っていい子だったんだなぁ、あのイケメン。


「どうしたんですか?」

「いえ、なんでもないです」


その後も色々話しをして食事を堪能した、帰り際社長が人事部の見直しも考慮して動き出していると教えてくれ課長のほうは後任が定まるまで社長が直轄で管理するらしい。


「ふひぃ~………」

「タチバナ様本日のノルマ達成です」

「はい…はぁはぁはぁ」

「大丈夫ですか?」

「やっぱり自分で生き物の命を奪うって緊張してしまいますね」

「そうですね、お慣れになるようなことではございませんし」

「そうですよね……」


最初の討伐から毎日、午後から夕方まで魔物を狩りに森にきていた。最初のころは4人できていたけど昨日からモネちゃんとルイちゃんアンリさんが日替わりで一人ずつついてきてくれることになった、テトはフィーネさんとアリスさんの元に残りたそうにしていたから置いてきた。


「タチバナは?」

「ご入浴中にございます」

「そう、それでどうだったの?」

「正直に言わせていただければ恐ろしいほどのポテンシャルと強さをお持ちですが…」

「含みのあるいいかたねぇ、いいわよ言っちゃって」

「はい…お優しすぎるのではないかと…」

「それが邪魔してるんでしょ?」

「はい、それと本当におつらそうにしておられるので見ているこちらも…」

「わかります、あんなに眉間にしわをお寄せになり申し訳なさそうになさっていると…酷なことをと思ってしまいます」

「そう、それでもやってもらわなきゃならないのよ…タチバナ自身の為にね」

「はい、フィーネ様がおっしゃっておられるのであれば必須なことなのだと理解はしております」


モネとルイが少し苦々しい顔で一応の理解をしめすのをフィーネは少し気まずそうな顔でみていた。


「んー…」

「あれ?カリン先生どうしたんですか?こんな時間にこっちにいるのは珍しいですね」

「おかえりだったんですね、えっと少々調べ物を、大事な書物はこちらに持ってきているんで」

「そうなんですね」

「はい」

「ん?なにかお困りごとですか?」

「え?ええ、実は薬を作りたいんですが材料がいくつか足りないのでどうしようかと、同じ効力で違う薬がないかなぁと」

「材料は売っていないんですか?」

「そこまで使用頻度がたかくないので滅多にないんですよね」

「ああ、ニッチな感じなんですね…」

「はい、近場に自生はしているんですが、少々めんどうで危険な場所ですしどうしようかなと」

「なるほど」

「ギルドが停止しているので依頼も出せませんからねぇ」

「ああ…って、俺がとりに行けばいいんじゃないですか!」

「えぇ!?危ないですよ!」

「とりあえず、アリスさんに相談して俺でも行けそうなら行きますよ!」

「い、いいんですか?では、依頼料の話もアリスに」

「そんなのいりませんって!カリン先生にはいつもどんだけ世話になってると思ってるんですか!」

「え!?そ、そんなことは」

「そんなことありますって!薬草とかの取り方も親切にわかりやすく教えてもらったし、俺とテトの怪我だってなおしてもらってるんですから」

「それは当然のことを」

「だったら俺もこれが当然のことですよ!ザイードさんのこととかも無理言ってるんですからやらせてください!」


強引に押し切ってアリスさんのもとに行くとアリスさんの他にフィーネさんとモネルイちゃんもいた。


「というわけで採取にいこうとおもうんですが!」

「タチバナ様おひとつお伺いしてもよろしいでしょうか」

「なんです?」

「カリンは何をほしいのですか?」

「え?…そ、それは…なんか珍しいものです…」

「……カリン」

「そういえば……タチバナさんの勢いにおされて肝心な何をほしいのか伝えてませんでした…」

「なにがほしいの?」

「月雫草です」

「タチバナ様それをご存じで?」

「いいえ、全く知りません」


あとで図鑑でしらべてみるか……。


「タチバナ様、月雫草は月光と夜露で花開くといわれているもので条件が難しく、かつ標高が高い岩場にしか生息していません」

「ほぉ、じゃあキャンプですかね?」

「…………」

「アリス様、私どもがご一緒しますので…」

「私も行きます!」

「はぁ~…カリン、二人もタチバナ様をよろしくお願いしますね」

「任せてください」

「「はい!」」


あれ?アリスさん立ち眩みでもおこしたのかな?まぁ、許可もおりたし探しに行こう。


「じゃぁ、さっそく行きましょう!」

「タ、タチバナ様…さすがに色々準備というものもございますのですぐにとは…」

「ああ、そうですよねって何を準備したらいいんですかね?」

「…こちらで準備いたしますのでご安心ください」

「ありがとうございます」


月夜のキャンプかぁ、いつかアリスさんともいってみたいなぁ。


「…………」

「ひぃ!?な、なにか!?」

「いえ、なんでもございません」


寒気がしたのであたりを見渡したらアリスさんと目が合った…なんでかな、ふるえが!


「タチバナ様…大丈夫ですか?」

「え?なにがですか?」

「にゃぁ~」

「ん?揺れすぎかな?ごめんね、ちょっと道が悪いんだよ」


頭に飛び乗ってきたテトを右手で優しくなでながら3人を乗せた荷車を押しながら目的地を目指していた。


「いやぁ、馬車が通れないなんて思いませんでしたね!」

「重くなかったですか?」

「全然ですよ!それよりもこのペースでいって今日中に目的地につくのかな?」

「そうですね、日が落ちる前にはつけるかと思います」

「おぉ!じゃあ、ご飯を食べたらいきましょう」


馬車で森まで来たけど道が狭くて通れないので馬車でけん引していた荷車を俺が牽いていくことにした、あれ?この味……。


「アリスさんの味がする」

「はい、タチバナ様のサンドイッチはアリスさんがお作りになられたものです」

「おぉ!さすがアリスさん!なんだかんだでやさしい!!」


これだよなぁ!これ!もう俺の心をつかんで離さないよあの人は!


「やはりアリスが一番のライバルですね」

「にゃっ!」

「タチバナ様!魔物の気配です!」

「え!?」


立ち上がったモネちゃんとルイちゃんがみているほうにテトが威嚇をしているあいだいグローブをはめた。


「鳥!?」

「ヘルコンドルです!」

「急降下してくるのでお気をつけください!」

「うっそぉ!」

「早く倒さないと仲間が!…あぁぁぁ」


上空をクルクルと円を描いて飛んでいたと思ったら急降下して爪でおそってくる!しかも近くに来たらめっちゃでっかいし!すれ違いざまに合った目がマジで超こわい!!


「にゃ!にゃ!」

「あ!テトを!!くっそぉ!おまえらぁ!!」


テトばかり襲い始めやがった!!もう頭に来たぞ!ここにはが豊富なんだぞ!


「くらえ!おらぁぁぁぁ!!」

「なっ!」

「すごい!」

「俺のテトを狙いやがってぇぇ!!しぃぃぃぃねぇぇぇぇぇ!!!」

「にゃっ!!??」


石を拾ってなげて数羽は落ちたけどまだ10羽以上いやがったから急降下してきたタイミングで石を投げて顔に当たって石が貫通した鳥が地面に落ちる前に踏み台して飛び上がり持っていた石を片っ端から飛んでいる鳥に投げ当たって落ちてきたのを踏み台にどんどん高く上がって同じ高さになったところで驚いた鳥がくちばしで突いてこうようとしたのでくちばしを捕まえて首を追って振り回して次々と叩き落してやったぜ!


「どうだ!こらぁ!あっ……」


思ったよりも高く上がっていたのか気づいたときには勢いよく落下し始めた。


「ひぃぃぃぃ!!し、しぬぅぅぅぅぅ!!!」

「タチバナさんっ!」

「うひぃぃぃぃ!!!!ん゛んんんん……」


なんとか着地したけど勢いをころせず自分の膝があごにあたって足はしびれて顎はいたかったけど俺いきてるっ!


「38羽も……」

「は、羽は高級品なので……とりあえず帰ったらフィーネ様とナタリー様にご相談いたしましょう」

「もう!無茶しないでくださいね!」

「すみません…テトを狙われてつい……」


口を切ってしまったのを治療しながらぷんすか怒るカリン先生だったけど顔が近くて緊張しながらその日はそこで野宿することになりました……。

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