第129話 保存食を作ろう 5
セランとウィンディーネが張り切って魚をきれいに洗っているのを確認し、ロトムとクオンがせっせと切った果実を並べていたので一言声を掛けてから広場の外周を目指して歩き出した。
うん、順調だな。子供たちの期待に応えられるか心配だったけど、なんとか采配出来たな。さて、でも最後は……。ちゃんと干場は設置出来ているかな?
保存食を自分たちも作りたい!とキラキラした目で言われ、どんな作業をやって貰うか昨夜は寝る前にずっと考えていたのだ。それが思ったよりも子供たちのやる気が凄くて、ありがたいしうれしいし、でちょっと感激でうるうるしかけてしまった。
「おーい、どうだー?作業は進んでいるかな?」
『あ、イツキ!ど、どうかな?こんな感じで、大丈夫そう、かな?』
ライの姿が見えたので声を掛けると、俺の姿を見て飛んで来て俺の周囲をくるくる回り、案内するようにパタパタと飛んで行く。
近づいて行くと、広場の外周に植えて、まだ苗から少しだけ育っただけの若木の果樹の奥、森との境目の木と木の間に、俺の肩くらいの高さに蔦が並行して何本か張られていた。
「おお、凄いじゃないか!ここなら陽射しも入るし、きちんと平行になっているよ」
木の間隔が適度に開き、木の枝が密集していない場所をきちんと選んでいた。
『干場、ってイツキが言ってたから、陽射しが入る方がいいのかな、って思って』
「うんうん、ライ。ありがとうな!」
肩にとまったライの頭と嘴の下をそっと撫でると、うれしそうに『ピュイッ』と鳴いた。
「この蔦に、大き目な魚を縛って吊るすんだ。ああ、でも、ジャーキーも干したいから、編み状にしてしまおうかな」
ライが監修したのか、平行にきっりと蔦が三本平行に張ってあったので、そこに縦に蔦を結び、網にしようと考える。
マジックバッグから丁度いい長さの蔦を取り出し、三本の蔦に交互に絡ませて結ぶ。それを両側の木の枝近くに結んだ。
『それを、ずっとやれば、いいの?』
「お、ライ。そうだな。ただこの幅だとお肉が落ちちゃうから、横に間に蔦を、そうだなあと五本ずつ追加して、その後縦に交互に蔦を結べば、細かい網になるだろう?」
見本になるように今縦に結んだ蔦の五分の一の場所に長い蔦を結び、もう一方の蔦へ歩いて行き、ピンと張って結ぶ。
『わかった!じゃあ、後は僕達でがんばる!』
「お、ライ達で出来そうか?ロープの上でバランスとりながら結ぶのは大変じゃないか?」
『ニャウッ!』
『ネロは小さいけど、器用で、蔦を結ぶの上手なんだ。だから出来る、よ!』
さすがにこの作業は俺がやらないと、とと思ったのだが、ネロが木から蔦の上へと飛び降り、スタスタと歩き出した。
ネロは真っ黒なケット・シーの子供で、まだ小さく少し育った子猫程の大きさなのだが。
「おお、凄いな、ネロ!ライも、じゃあ、無理しないで頼むな。シュウ、それにシルフも危なくないように見張っていてくれな!」
『うん、僕、頑張るよ!』
『みぎゃっ!』
ネロの頭そっと撫で、ライと木の上にいたシュウに声を掛けると、改めて蔦を足して作業を少しの間見守り、問題がなさそうだったので肉を切りに戻ったのだった。
その後は問題なく各自休憩を取りながら作業が進み、ロトムやクオンが頑張って切ってくれた果実は木の板の上に大量に並び、俺の切った肉は桶のソミュール液の中にキレイに並べられた。
そして魚はセランとウィンディーネがきれいに洗った後、ソミュール液に二時間程漬け込み、その後ライ達が頑張って網にしてくれた蔦の上へ並べて干された。
「皆お疲れ様!これでとりあえず保存食の作業は終わりだよ。ありがとうな、皆のお陰で大量に作ることが出来たよ!」
夕暮れ近くになった頃、全ての作業が終わり、疲れた様子だがやり切った笑顔を浮かべた子供たちの前でお礼を告げた。
疲れたけどうれしそうな子供たちが、わーっと歓声を上げて飛び跳ねる。
『あれ、でもイツキ。あのお肉はあのままなの?』
「クオン、あれはあのまま明日まで漬けて置いておいて、後で燻製、ええと干してから煙でいぶすんだ。後の作業は明日午後からかな」
『じゃあ、明日もまた手伝うの!』
「皆が昼寝している間に俺がやるつもりだったけど、手伝ってくれるのか?」
そう言うと、クオンだけじゃなく、他の子供たちもキラキラした瞳でやるーーっ!と言ってくれて、思わずほろりと涙がこぼれそうになったよ……。
結局今夜は雨も降らなさそうだし、ということで子供たちを見送った後にシルフやスプライト達に干場の見張りを頼み、そのままにして翌日も作業を皆と一緒にすることにした。
翌日は作業が少ないことからいつも通りに昼まで泉で水遊びをし、家へ戻って昼食、昼寝の後に保存食作りを再開した。
果物はそのまま干し、魚を一度マジックバッグへしまい、昼食後に塩抜きしておいたジャーキーを蔦で編んでおいた網の上に子供たちと一緒に並べ、シルフに頼んでライ達が作ってくれた干場の上に干した。
その翌日は干場の下の草をスプライト達に移動してもらい、地面の上に石で簡単な竈を作って香りのいい木を細かくロトム達に風でカットして貰い、チップにして燃やした。
煙はちょっとずるいがシルフに頼んで風で囲って貰うことで壁にしたぞ!燻製小屋を建てるにも早々に燻製することもないし、今回は量が多いから鍋では間に合わなかったからな!
その後はまた干して、とこうして無事に保存食は出来上がり、子供たちと一緒に味見をしたが皆で美味しい!と満足そうだった。
これからも干し果実は皆で定期的に作ろうか、という話になったのだが。
『こ、これは……酒と合わせて食べるとたまらんっ!こ、これを、これをもっと、もっと作って貰えないか!俺達に出来ることは何でもするからっ!』
後日おすそ分けしたドワーフ達がジャーキーにはまり、押しかけて来てこう訴えかけられ、結局後日燻製小屋が建てられることになったのは、まあ、子供たちが楽しそうだからいいかな。
『んー、イツキ、今度は何を作っているの?』
「ああ、お守りだよ。オズがもうそろそろだってアーシュに言われたからな。食料や服は皆の協力で十分用意出来たからな」
『おまもり』『とはなんだ?イツキ』
昼寝をしている子供たちの近くでチクチクと珍しく針で縫物をしていると、早めに起きたクオンとロトムが覗き込んで来た。
「これは、健康でいてくれますように。無事で過ごせますように、と願いを込めて、家を出て行く家族に持たせる物なんだよ。本当は神様を祭った神社ってところで神様にお祈りして作るんだけどな。この世界では神様は祭っていないから、明日世界樹へ行った時に、世界樹と精霊達にオズの無事を祈ろうと思っているんだ」
願いを込めて日本語で「お守り」と下手くそだが刺繍を入れ、お守り袋として縫い上げる。中には許しを貰えたら、二枚目に頂いた世界樹の葉を入れるつもりだ。
この世界に来てから、この世界の創造神をアーシュや他の神獣達が語ることはなかったし、かと言ってアーシュ達神獣達を祭るのもまた違うように感じたのだ。
アーシュ達からしたら世界樹なのかもしれないが、願うなら世界樹と、そして自然と共にある精霊達な気がしたのだ。
ああ、もうこれで、オズの準備は終わり、かな……。俺には願うことしか出来ないけど。
近づいて来る別れを思い、子供たちに見守られながら、一針、一針と縫って行ったのだった。
*****
やっと保存食が出来上がり、です!
次回は今週は予定が色々あるので、書き上げたら更新になるかと思います。
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