落ちこぼれと呼ばれた天才少年の現代転移！10年後、異世界に戻ってきたので自由気ままに成り上がります

第21話ー完全記憶

一瞬でレイルは惹き込まれた。

まるで大自然を連想させる様な優しく、それでいて荘厳華麗な演武だった。

剣術から始まり刀術、槍術、体術と

龍弦から繰り出される技の数々はどれも一言では表せられない程に洗練され、大気を震わせ切り裂かんとする程の鋭さだった。

自分の息を呑む音が聞こえた。

余りにも美しい演武だった。

（……すごい。

僕も弦爺の見ている世界を見てみたい！

諦めず頑張ったら弦爺に近づけるかな…？）

そんな事を思っていると、

「どうじゃ？レイルや。

今の演武は摩利支天流の基本の型じゃ。

今日はこの演武を模倣して貰うでの。

…準備はいいかの？」

（基本の型と言っても摩利支天の原点…

すなわち、これを極めなければ奥義に至る過程すら苦労するでの、、、頑張るのじゃぞ！）

「はい！頑張りますっ！

……すぅーっ、…はぁーっ………」

（……ん？レイルの眼が若干光っておる？）

レイルは深呼吸し、ソッと眼を閉じる。

そして、その瞳に焼き付いた技を、

龍弦が行った演武の手順、繰り出される角度、癖を正確にトレースして行く。

演武だけではない。

魔術の文献も初級術式から神級術式、果ては古代術式までも、、、

今までレイル自身が必要だと思った事は全て一語一句記憶し覚えているのだ。

　　　　　「完全記憶能力」

これが母ミザリーやナナリーに規格外と言われる

レイルのみに許された力の根源だった。

「………すぅー、、、行きます。」

最初、

レイルにとってどの武器が1番相性が良いか

調べる為にこの演武を見せた。

そしてそれは間違いでは無かった。

適性があったのは1番キレや速さのある刀と体術と分かったからだ。

しかし龍弦は違和感に気付き始める…

「おかしい…」と。

レイルの眼の反応速度や空間把握能力があれば

演武を模倣するのは容易いと思っていた。

思ってはいたが、

何がとてつも無い事を見落としている感覚に陥った。

そしてレイルの演武を一挙手一投足見逃すまいと

全神経を尖らせ見ていると気付いた……

いや、気付いてしまった。

………まるで自分自身が演武しているかの様な

錯覚をしてしまう程の技の正確さを…

他の者では絶対に気づかない様な自身の癖を…

あの小さな身体で体現して見せているのだ。

もちろん技のキレや威力などは雲泥の差だが、

それを差し引いても異常だった。

（…よもや、、、よもや、これほどとはな…

儂にこれ程の才能の塊に巡り合わせてくれた神さんには感謝しかないわい…）

龍弦が感動している間にレイルの演武が終わった。

「弦爺！どうかな？！上手く出来てたかな？

僕、緊張してしまって…

僕にはどの武器が相性良かったですかっ？」

「…ほっほ。

そこまで緊張せんでも良かったんじゃぞ？。

初めてなのに上手に出来ておったわい！

この弦爺もびっくりじゃ！

そうじゃの…レイルの適正は刀と体術じゃの！

まずはこの二つの型と闘気を習得する為に瞑想から

始めるとするかのぅ。」

「はい！よろしくお願いします！」

こうしてレイルの修行が始まるのだった。