第12話一方その頃のリッツオール家
リッツオール家書斎
グランが書斎で書類を整理していると扉からノックがした。
コンコンッ…「入れ。」
入って来たのは使用人のメイドだった。
「失礼致します。旦那様、レイル坊ちゃまがお部屋にいらっしゃいません。」
「なに?まったく……どこに行ったのだっ?
この忙しい時に世話を焼かせおって!
スチュワート!レイルを探して連れて帰るんだ!
見つけ次第部屋に居ておけと伝えろ!」
「承知しました…」
(さて、坊ちゃんはどこに行ったんでしょうかね?
街で聞き込みでもしましょうか。)
いつの間にかグランの脇に居たスチュワートが会釈し、部屋を出て行った。
数刻後、聞き込みを終えたスチュワートは顔を青くしながら急いでグランの居る書斎に向かっていた。
コンコン、「旦那様!失礼します!」
「スチュワートか。…で?レイルを部屋に連れ帰ったのか?」
「い、いえ、それが…街の住民達に聞いて周ったのですが、レイル坊ちゃまはどうもグランシェルトの森に入って行かれたようです…」
それを聞いたグランはグランシェルトの魔境に1人入ったレイルを探そうかと思ったがヤメた。
(今頃探しても既に生きてはいまいだろう…
それに、魔術も碌に使えない者が我が家から居なくなったとて、さして問題もあるまい。)
「……レイル坊ちゃまを捜索なされますか?」
「よい、このまま捨ておけ…。
いや、、そうだな、
自殺したとあっては些か外聞が悪い。
レイルは森へ赴き、事故死したという事をそれとなく噂を流しておけ。」
「……はい、委細承知しました。失礼します。」
グランは椅子にもたれ掛け一息つく
(ふぅ、全く面倒な事をしてくれるものだ…
だがまぁ、これで欠陥品が我が家から居なくなったのだ。それはそれで喜ばしい事だな。)
そしてまた書類整理を始め、将来の事を考え自分の未来が明るいものだと信じながら領主の仕事をこなして行く。
その時にはレイルの事など既に頭の片隅にもなかった。
レイルが失踪した2週間後
リンドブルム公爵家
そこには多種多様の花が咲いている庭園があった。
その中央部にあるカフェテラスにナナリーが居た。
カチャッ…
「ふぅ…紅茶が美味しい…
今日も良い天気ですわ!
でも残念です…
早くレイルに逢いに行きたいのにお父様ったら全然許可してくれないのですもの!」
ナナリーは今まで普通に会っていたレイルに会えなくなった寂しさに我慢が爆発寸前だった。
「……よしっ!決めましたわ!
お父様に突撃直談判で
お忍びでレイルに会いに行けるよう説得しますわ!」
そして意気揚々とダグラスを説得しようと部屋に向かう途中、使用人の休憩室から話し声が聞こえて来た。
「ねぇ、聞いた?」
「なにがー?」
「ナナリー様の元婚約者、あの子死んだらしいわよ?」
「えっ!?うそっ?なんで?あの落ちこぼれの子でしょ?」
「そうそう!……なんでもグランシェルトの森で事故に遭ったみたいよ?
それで見つけた時にはもうダメだったって噂よ」
「可哀想な話ねー。せめて女神様の元へ行けるよう祈りましょう」
(……う、うそ、嘘よっ!レイルが死ぬ筈ありませんわ!何かの間違い!そう!きっと間違いですわ!
タチの悪い噂話ですわ!!)
「……お父様に確かめないと!」
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