第5話ーナナリーside
リッツオール伯爵家から騎士団が出て行く。
その騎士団に囲まれている1つの豪華な馬車の中にリンドブルム公爵家ナナリー・ツー・リンドブルムが居た。
「お父様?わたくしまだレイルといっぱいお話したい事がありましたのに!来てすぐ帰るなんて酷すぎますわっ!」
馬車の中にはナナリーに向かい合って白髪の筋骨隆々の男が居た。
リンドブルム公爵家当主ダグラス・ツー・リンドブルムである。
ダグラスは困った顔で
「すまぬな、ナナリーよ。これでも中々に忙しいのだ。」
いつもは威厳たっぷりのダグラスも娘のナナリーには甘々だった。
ナナリーはぷぃっと顔を窓に向きながら
「もうっ!良いですわ!
…それでお父様?今日はリッツオール伯爵とどんなお話をしましたの?」
「うむ。それなのだがな……」
ダグラスは言いづらそうに
「レイルが魔術を使えないと分かったのでな、伯爵に婚約を破棄して来たのだ…」
それを聞いたナナリーは目を見開きダグラスを睨めつけた。
「なっ、なんですって!?お父様!なぜわたくしに相談もせず勝手にそんな事を決めるんですの!?」
ナナリーは急な婚約破棄に怒りで我を忘れていた。
「ナ、ナナリー!落ち着くのだっ!魔術の使えんレイルは公爵家に婿に出来んのだ!わかってくれ。」
「いいえ!わかりたくもありません!お父様はいつもいつも勝手過ぎます!それで何回お母様を怒らせてると思ってるんですか!」
あまりの形相にダグラスも
「す、すまぬ…」とタジタジになるのだった。
そしてナナリーを落ち着かせようと
「か、代わりと言ってはなんだが、新しく婚約者候補を見つけたぞっ!レイルの兄2人ロイドとエルだ。あと2人は今のところ素質も実力も申し分ない!どうだ!?ナナリー?」
その様子を見てナナリーは呆れた顔でレイルの事を話し出す。
「お父様…わたくしはレイルが大好きなのです。
お父様から紹介された時はただ銀髪がキラキラと輝く可愛い少年だなぁとだけ思いました。
ただそれだけでした。
しかし、お話をしているうちになんて心が優しい穏やかな方なのだろうと、そして気付けばレイルに惹かれていたのです。」
ここでナナリーは「ふぅ…」と顔赤らめながら一息つき、ある事をダグラスに伝える。
「レイルが初級魔術しか使えないのはわたくしは知っておりました。
本人から聞かされておりましたから。
ですがそんな事問題ではありませんわ。
レイルは……あの方は天才なのです。
それもとびきりの…ですわ。
周りに居る方々は魔力だけしか取り柄がない落ちこぼれと思っているのですが。
本人にもその自覚は全くありませんけど。」
とナナリーはまるで英雄を見るようにレイルを想うのだった。
そしてダグラスもレイルが魔力だけしかないと思っている1人だった。
「ですので、わたくしの婚約者はレイルしかおりません!他の方は興味もありません!お姉様に紹介なさったら如何ですか?」
これにはダグラスもたまらず
「し、しかしだな、姉のメリッサはだなぁ…
王妃の護衛騎士団長なのだ。
俺が勝手に決めたら王妃とメリッサに怒られる…
というか、殺される…」
ダグラスは顔を真っ青にさせながら言う。
ナナリーはクスクスと笑いながら
「あら、お父様もちゃんとわかっておられるではありませんか。」
ダグラスは恥ずかしそうにゴホンッと1つ咳払いをし、ナナリーに
「まぁ、ナナリーの言うようにレイルが天才ならば結果が示してくれるだろう。幸いまだ時間はあるしな。」
ナナリーが顔をコテン?と傾げて
「どういうことですの?」
「いやなに、伯爵と息子2人にはナナリーが皇立魔術学院を卒業する時までにナナリーに相応しい男になっておくようにと言っておいたのだ。それまではただの婚約者候補の1人だ。ナナリーの卒業まであと10年あるのだ。レイルなら何とか出来るのであろう?無理ならそれまでの男だと言う事だ。」
「わかりました……。仕方ありませんわね。
お父様?公爵に二言はありませんわよね?レイルが相応しい男になれば認めてくださいまし!」
とレイルに期待と信頼を寄せていたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます