第140話 第三者視点9
「お嬢様! 下がって下さい!」
御者席から飛び降りたハンスがアンリエットを庇うように剣を構え前に出る。相手はクリフトファー含め5人だ。
アンリエットは言われた通り後ろに下がったが、いくらハンスが手練れとはいえ、5対1では分が悪過ぎる。
「出来れば手荒な真似はしたくないんだ。大人しくアンリエットを渡して貰えないかな?」
「黙れ! この狂人め! 貴様なんぞに大事な大事なお嬢様を渡してなるものか!」
「やれやれ...仕方ない。お前達、やってしまえ」
男達の包囲の輪が狭まって来た。今にも一触即発という時だった。
「ヒヒヒーン!」
嘶きと共に一頭の馬が凄い勢いで走って来て、男達とアンリエット達の間に割って入って来た。
「な、なんだ一体!?」
「な、何者だ!?」
「ど、どっからやって来た!?」
「あ、新手か!?」
一瞬で場がパニック状態になる。
「お嬢! 無事!?」
「アラン!?」
馬から飛び降りるようにして降りて来たのはアランだった。
「遅くなってゴメン! 白馬に乗った王子様! ただいま参上!」
「いや、馬は全然白くないし、アンタは王子様でもないし」
「その冷静な突っ込みはやっぱお嬢ならではだね!」
そんな軽口を叩けるくらいには余裕が出て来たアンリエットではあったが、依然状況は芳しいとは言えない。
アランが加わったところでそれでもまだ5対2だ。多勢に無勢なのは変わりない。
「クソッ! 次から次へと忌々しい! おい、お前達! なにをやってる! さっさと始末しないか!」
クリフトファーは苛立ちながら、ますます狂気に支配されたような目を三角にさせて男達に命じた。
今度こそ鍔迫り合いが始まる。その刹那だった。
「ちょっと待った~!」
またしても馬が凄い勢いで走って来る。しかも今度は二頭だ。
「エリザベート!?」
そして馬上から叫んでいるのはエリザベートだ。ワンピースのスカート部分が肌蹴けるのも構わず馬に跨がっている。
やがてアランと同じように男達とアンリエット達との間に割って入ったと思ったら、今度は文字通り馬から飛び降りたエリザベートは、
「こんのバカ兄がぁ~!」
「えっ!? エリザベート!? ぐぽっ!」
あまりにも唐突な展開に、しばし呆気に取られていたクリフトファーの側に寄って顔面を思いっきり殴り飛ばした。
クリフトファーは5mくらい後ろに吹っ飛んで行った。
「だ、旦那!?」
「だ、大丈夫ですか!?」
男達が慌ててクリフトファーに駆け寄る。その間にアンリエット達は態勢を立て直した。
もう一頭の馬には隠密衆が二人乗りしていたので、これを合わせると人数の上では4対5だ。純粋に戦える人数という意味で。クリフトファーは完全にノビてしまっているようだし。これでアンリエット達が優位に立った。
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