第119話 第三者視点2

 パトリックはようやく良さそうな三人組を見付けた。


 どう見ても堅気とは思えない連中だった。


「おい、お前達」


「あん!? 誰だぁてめえ!?」


「なんだぁ!? お貴族様じゃねぇのか?」


「こんな掃き溜めに一体全体なんの用があんだよ!?」


 パトリックは不快感を滲ませながらもグッと堪える。ここでヤツらの機嫌を損ねる訳にはいかないからだ。


「ちょっとしたアルバイトをする気はないか?」


「アルバイト!?」


「どんなことだよ?」


「やべえことやらせるつもりじゃねぇだろうな!?」


「一組のカップルを襲って貰いたい。それも男の方を」


「カップルの男の方!?」


「女の方はどうすんだよ!?」


「女には一切手を出すな。お前達が男の方をコテンパンに伸した後、俺が颯爽と現れて女を助け出すっていう段取りなんだからな」


「あぁ、そういうことか。理解したぜ」


「こういうのなんてったっけ? 吊り天井効果?」


「それを言うなら吊り橋効果だ...」


 パトリックは呆れたように呟いた。


「あぁ、それそれ!」


「あんたは女にとっては正義のヒーローになるって訳だな?」


「さすがはお貴族様だぜ! ゲスいこと考えやがる!」


 お前らにだけは言われたくない! パトリックは心の中だけでそう叫んでいた。


「それでどうする? ヤるかヤらないのか? 金は弾むぞ?」


「ヤるに決まってんだろ! なぁ、お前ら?」


「おぉ! ヤらいでか!」


「面白そうじゃねぇか!」


「良し。じゃあ契約成立だな。お前達の連絡先を教えろ。ターゲットがやって来たらすぐ知らせるから」


「おう!」


 パトリックには確信があった。アンリエットはあの男を避けていると。だからあんな風に行き違いになるように出掛けているのだと。


 とすれば、きっとまた明日もアンリエットは町中にやって来るはずだ。従者一人だけを連れて。


 そこを狙う。パトリックは暗く嗤いながら明日を待った。



◇◇◇



 翌日、男は昨日と同じ時間にホテルを出て行った。また花屋に寄ってからアンリエットの屋敷に向かうのだろう。


 それを見届けたパトリックは、雇った破落戸共のねぐらに急いで向かった。


「おい、お前達! 仕事の時間だ! さっさと起きろ!」


 こんな連中が早寝早起きな訳がない。案の定まだ寝ていた。だからパトリックは叩き起こした。


「ふわぁ~...なんだよ...こんな朝早くからかよ...」


「今何時だぁ~?」


「ね、眠い~zzz...」


「ゴチャゴチャ文句言うな! こっちは金払ってんだぞ!」


 パトリックは連中の尻を蹴り飛ばし、急ぎ出掛ける支度をさせた。


 昨日と同じなら、そろそろアンリエットがやって来る頃だからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る