第67話 第三者視点8
クリフトファーはロバートの住むアパートからどうやって帰って来たか覚えてなかった。
気が付いたら自分の家に帰っていた。門衛が怪訝な顔をして出迎えた。ロバートにぶん殴られて頬を腫らしたクリフトファーの顔を見たからだろう。それでも余計な口を利くことなく黙って通した。
「あぁ、お兄様! やっと帰って来た! って、その顔一体どうしたの!?」
屋敷に入るとエリザベートが待っていた。クリフトファーの顔を見て目を丸くしている。
「...なんでもない...」
クリフトファーは説明する気力もなかった。今はただただゆっくり休みたかった。
「ま、まぁいいわ。言いたくないなら聞かないであげる。それよりお兄様にお客様が来ているのよ。モリシャン侯爵が客間でずっと待っているわ」
今一番会いたくない人物の名を告げられ、クリフトファーは露骨に舌打ちした。だが会わない訳にもいくまい。
「...分かった...」
クリフトファーは疲れた足を引き摺りながら客間に向かった。そんな兄の姿を見送ったエリザベートは、恐らくアンリエットの身になにかあったのだろうと推測し、急いで出掛ける支度をした。
◇◇◇
「おい、セバスチャン。お前はいったん屋敷に戻れ。家の者が心配するだろうから上手く言いくるめておいてくれ」
「し、しかし、お嬢様のお側を離れる訳には...」
自分が付いていかなかったせいで、アンリエットはこんな酷い目に遭ってしまった。自分が側に付いていれば...そのことをセバスチャンはずっと後悔しているのだ。
「お前が付いていたって何の役にも立たんだろう? それならアンリエット付きの侍女でも連れて来い。ついでに着替えもな」
そう言われてはセバスチャンも渋々納得するしかなかった。
「...分かりました...アンリエットお嬢様をお願い致します...」
セバスチャンは急いで馬車を走らせた。
◇◇◇
客間に入るとモリシャン侯爵が土下座せんばかりの勢いで頭を下げた。
「クリフトファー様、この度は誠に申し訳ありませんでした...」
「...申し訳ないだと!? 貴様はそんな謝罪だけで済ませようとでもするつもりか!? ふざけるな! 貴様があの狂女をしっかり管理しなかったせいでアンリエットは死に掛けたんだぞ! 分かってるのか!?」
クリフトファーの怒りが爆発した。
「どれだけあの狂女を絞め殺してやろうと思ったことか! 死者を裁く法律があれば殺人未遂で訴えてやる所だ!」
スカーレットを死んだことにしようと提案したのはモリシャン侯爵の方だ。自分達の外聞ばかりを気にした結果がこの様だ。
烈火の如く怒るクリフトファーを前に、モリシャン侯爵はひたすら身を縮めるだけだった。
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