第34話 ギルバート視点8

「そ、それはその...あ、アンリエットがお茶会でキャロラインに冷たくしたからで...」


 僕は必死でかなり苦しい言い訳をした。


「話にならないな。アンリエットからして見れば浮気相手に当たる女なんだぞ? そんな女に優しくする理由の方が見付からないよ」


 だがクリフトファー様に難なく論破された。


「あぐ...」


「アンリエット、行こうか。こんな不誠実な男なんか放っておけば良い」


 そう言ってクリフトファー様はアンリエットの手を取って歩き出した。アンリエットは辛そうな顔で俯きながら黙って従っていた。


 僕はそんな二人を歯噛みしながら見送るしかなかった。やがてイライラしながら後ろを振り返って、


「キャロライン! 僕達も行こう!...ってキャロライン!? おい、キャロライン!? どこ行った!?」


 僕は焦った。


 さっきまで側にいたはずのキャロラインの姿がどこにも無い。その後、僕は会場中を探し回ったが、キャロラインを見付けることは出来なかった。


 僕は楽しそうに談笑するアンリエット達を尻目に、一人寂しく会場を後にするしかなかった。



◇◇◇



 次の日、僕はキャロラインの家に行った。


「キャロライン! どういうことだ!? なぜ昨夜は僕に黙って帰ったんだ!? 僕がどれだけ心配したと思ってる!?」


「ご、ごめんなさい...急に体調が悪くなってしまって...あなたに伝えようと思ったんだけど、あのように取り込み中だったから遠慮したのよ...でもせめて誰かに伝言を頼むべきだったわ...本当にごめんなさい...」


 そう言ってキャロラインは辛そうに顔を伏せた。


「そうだったのか...いや僕の方こそ君の異変に気付いてやれなくて申し訳なかった。今はもう大丈夫なのかい?」


「えぇ、お陰様で一晩休んだらすっかり元気になったわ」


「それは良かった。でも無理はしないようにね?」


「えぇ、ありがとう。それとあの後、大丈夫だった?」


「あ、あぁ、まぁね...問題ないよ...」


 本当は針の筵だったんだけど、無理にでも強がっておくことにする。


「そう、良かったわ。心配だったのよ」


「ま、まぁ色々とシナリオ通りに行ってない部分はあるけど、そろそろグランドフィナーレだからね。一気に挽回してみせるから心配しないで!」


「えぇ、期待しているわ」


 やっと笑顔になったキャロラインに安堵する。やっぱりキャロラインには笑顔が良く似合う。この笑顔を絶やさないようにしないとな!


 そうして僕の愚行は最終局面に向かって行く。


 その先に待ち受ける破滅という名のゴールに向かって一直線に...




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