第31話 ギルバート視点5
「ううん、いいの。私に魅力が無いのがいけないのだから。ギルバートが他の娘に目移りしちゃうのも当然だわ。私さえ身を引けば...ヨヨヨ...」
な、なんでアンリエットが泣いてるんだ!? ここで泣くのはキャロラインのはずなのに! これじゃあ僕達の方が悪者みたいじゃあないか!
「そんなこと無いわ! あなたはとっても魅力的よ! 自信を持ちなさい! ギルバート! アンタって人は! こんな健気なアンリエットを泣かすだなんて! 恥を知りなさい! 大体、その女は誰よ!? 私はそんなどこの馬の骨か分からないような女に招待状を送った覚えは無いわよ!」
「あぐぅ...そ、それは...」
エリザベートの怒りが止まらない。これはマズい...なんとか誤魔化さないと...
「目障りだわ! とっとと出て行きなさい! それとも放り出されたい!?」
くっ! これはダメだ! いったん退却しないと! エリザベートなら本当に放り出しかねない!
僕達は這う這うの体で逃げ出すしかなかった...
◇◇◇
「ちょっとギルバート! どういうことよ!? シナリオと違うじゃあないの!」
「そんなこと言われても僕だって分からないよ!」
「どうすんのよ!? これじゃあ上手く行かないかも知れないわよ!?」
「五月蝿いな! 分かってるよ! 少し黙っててくれ!」
僕とキャロラインは帰りの馬車の中で言い合いをしていた。
全くもう! どうしたらいいのか聞きたいのは僕の方だ! キャロラインだって少し考えてくれたらいいのに!
僕はイラ付いて八つ当たり気味にそう考えていた。
「とにかく! 一度態勢を立て直す! それまで大人しくしていてくれ!」
「分かったわよ...」
渋々と言った感じで引き下がったキャロラインにまたイラッとした。
◇◇◇
次の日から僕は仮病で家督教育を休んだ。とてもじゃあないがアンリエットの顔をマトモに見られなかったからだ。
そんな不誠実な僕に対しても、アンリエットはお見舞いの花を贈ってくれる。その健気さにほんのちょっとだけ胸が痛んだ。
だが、花束を受け取った侍女が花を見ながら微妙な表情を浮かべていたのは何故だろうか?
次の手を考えながら家の中で悶々としていたところに、キャロラインから連絡があったのは翌日のことだった。
「アンリエットからお茶会の招待状が!?」
「えぇ、なんでいきなり私宛に来たのか分からないわ」
「確かにそうだね...」
アンリエットは何を考えているんだ?
分からないことだらけだが、これはシナリオを元に戻すチャンスだとも思った。
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