第23話 スモークランド連合国


 俺は、港の地下にあるディーン達の基地に通された。

 そこは外観は港の漁師が資材置き場に使う様な簡素な建物の様だった。

 しかし、地下は広く複数の武装した男たちがいた。


「大魔道士リッキーリードらしき、人物を連れてきた」


「リッキーリード様だと!?

 そんな事がある筈がない!」


 その場は、どよめきに包まれた。

 そんな中、奥にいた老人が俺に向かって歩いて来た。

 彼は白髪の長い髪で顔には無数のシワが刻まれていたが、眼光は鋭く、真っ直ぐに俺を見つめていた。


「この御方はリッキーリード様に間違いない」


 周囲は再び、どよめきに包まれた。

 ディーンは目を見開いてこっちを見ていたが無言で黙っていた。 


「貴方は俺を知っているのか?」


「お会いするのは初めてで御座います。

 私はヴィクターと申します。

 祖父より、もしリッキーリード様が戻られた時は

 お仕えする様に申しつけられております」


「祖父?

 お名前は何と?」


「ジェームズ……。

 ジェームズ・ロウでございます」


「ジェームズか!

 ストラス人の王ジェームズ・ロウか!」


「私は祖父から幼少の頃より、

 貴方の事を聞かされて育ちました。

 グランデ帝国の属国と化していた、

 我々の土地と名誉を取り戻して頂いた恩を

 リッキーリード様にお返ししなければならないと」 


 ヴィクターは一枚の肖像画を取り出し、俺に見せてくれた。

 それは間違いなく俺の肖像画だった。

 今まで見た中で一番まともなリッキーリード像だった。


「それで、ヴィクターさん達はなぜこんなに所に?」

 

「我々と我等が同胞の国家を取り戻し、

 リッキーリード様に頂いた民族独立の誇りを取り戻す為です」


「なる程な……。

 今のこの国の状況を見て少しは分かるよ」


 一部、俺の知っている情報も交えつつヴィクターが現状を説明してくれた。


 現在のドロナック王国がある地には本来北方にドロナック人、そして西にカダム人、東のラディ人の3つの民族が国を治めていた。

 それぞれ民族が違っており、その東対岸に浮かぶスモークランド島にはストラス人が住んでいた。

 しかし、ドロナック王国が力により西側のカダムに侵攻を開始し、カダムの民を根絶やしにし、カダム王家滅亡させる。

 領土を拡大を続けるドロナックは東側のラディに侵攻し、圧倒的な戦力差で故郷の土地を追われたラディ人は王家民衆共に難民としてスモークランド島に追いやられた。

 スモークランド島のストラス人はラディ人とは近縁の民族である事もあり、ドロナック王国から故郷を取り戻す迄の間、この民族をスモークランド島に住まわせその間、スモークランド連合王国となってドロナック王国に対抗しているのだった。


 それまで北方の弱小国家に過ぎなかったドロナックが何故、隣国を次々と倒し現在の領土に迄、拡大出来た事は俺からしたら謎でしかない。


「ドロナック王国は実質ラグレスタ大陸東端を制圧しました。

 そして、次は西の大国、神聖ノーツ帝国に迄手をかけようとしております」


「俺には何故か分からないんだが。

 俺のいない間に一体ドロナックに何が起こったんだ?」


「始まりは今より約10年前、

 ドロナック王【アンガス】をはじめとする、

 ドロナック王室に異変が起こったものと思われます」


「異変?どう言う事だ?」


「恐らくあの人外の力は禁忌に触れたと思われます。

 悪魔との契約術式を用いたものかと……」


「悪魔との契約術式?

 古代悪魔か?

 まさかシュラム王国のアシュハール王の術式か?」


「さすがはリッキー様。

 我々もその可能性があると踏んでおります。

 しかし、不可解なのは、かつて魔術に疎かった北方のドロナックに

 古代契約術式を解読出来る程の術者がいた事が不思議でなりません」


「やはりか……。

 元ゴードンの魔術師ダミアンだ。

 恐らく奴が解読した。

 奴は以前、古代シュラムの術式を俺に使った」


「何と……?

 ということはダミアンと言う魔術師はまだドロナックに?」


「いや。

 ダミアンはサイレントアマンダで俺が殺した。

 

 それに奴は知っていたはずだ。

 悪魔と契約したものは力を得るが、その代償として

 悪魔に徐々に精神も肉体も乗っ取られ、いずれ支配される。

 奴が欲しかったのは古代シュラムの魔術だけだ。

 大方、術式解読を餌にドロナック王国に遺跡発掘をさせたのだろう」


「そうでしたか…。

 それでは、今のドロナック王は正気を失っていたのか……」


「ああ。

 ただし、もう10年だろ?

 正気を失っている処ではない。

 この国は今、化け物が統治している!」



「我々は近く、ラディの軍と合流した後、

 ドロナックへ国土開放戦を仕掛ける予定となっておりました。

 しかしまさか、このタイミングでリッキー様が現れた事は奇跡としか思えません。

 今しかありません!

 ここで皆と共に我々は戦う所存でございます!」


◇◇◇◇


その時、クリスとメイはディナーショーのステージで踊り子をやっていた。


「あのメイさん。

 これはいつまで続けるんですか?」


「情報収集よ、クリスちゃん。

 リッキーちゃんの情報を得られるまで

 私達はトップダンサーとして振る舞うのよ!」


「半分ぐらいメイさんの

 趣味が入っている様に感じますよ…」


 クリスはダンスが少し上手くなった。






        To Be Continued…



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