第9話  アマンダの森




 今、俺とクリスはクロスローズから北にある農村サイレントアマンダ村に向かっている。

 結局、トレイシーからの頼みは姉のマザー・メイに自分の手紙を渡してくれとの事だけだった。


 内容は『自分は大丈夫だから姉さんたちは、気にせず孤児院を守る事だけに集中して頑張って。後、この子達は少し危なっかしいから、行く当てが決まるまで、姉さんの所で面倒を見てあげてくれ』だそうだ。

 何だかんだで、トレイシーは子供が2人だけで旅をしていて、いきなりトラブルに巻き込まれていたのを見て放っておけなかっただけなのだろう。

  かなり強引やり方ではあったが、結局は俺たちの事を心配してくれていたんだな……人は見た目によらない事がよく分かった。

 トレイシーにも、孤児院のマザー・メイと同じような子供を思う心があるのだろう。

 俺は少し、トレイシーの言うマザー・メイという人物にも興味がでてきた。

 クリスも同意見の様だ。


 話は変わるが、最近クロスローズの防具服屋に行った際に、クリスの服を新調した。

 今まで、クリスはレオポルドファミリーの雑用係りの時の男か女かも、わからないような服を着ていた。

 しかし、さすが夜の世界観が強いクロスローズだ!

 何と言うかすごく派手だ…。

 クリスは店に進められた衣装を特に嫌がることも無く着てくれた。


「師匠、この服どうですか?似合ってますか?」


「うん、多少目のやり場に困るが

 すごく似合ってるよ」


「ありがとうございます師匠!

 最初は冒険には向かないんじゃないかって思ってたんですが、思いの他、動きやすくて気に入ってたんですよ!」


「そういえば、聞いてなかったけどクリスは歳はいくつなんだ?」


「僕は17歳なんですよ。

 よく子供っぽい言われますけどね…」


 確かに、最初に見た時から12歳くらいだと思っていた。

 しかし、クリスの魔力量と老化の関係を考えるなら不思議ではない。

 これも大魔道士バーガンディの理論通りだ。

 

「気にするなクリス。

 俺なんかこの見た目で243歳だ」


「え!師匠そんな歳だったんですか?」


「そりゃ俺は昔話に出てくる人物だぞ」


「確かに、言われてみればそうですよね……」


「そんな事よりクリス。

 そろそろ森の中に入るぞ

 魔物のへの警戒を怠るなよ」


「はい師匠!」


 それから俺たちはサイレントアマンダに近くの森の中に馬車を走らせていた。

 先ほどから小さい魔物が何度か出てくるが、クリスが警戒用の魔力放出を行っている為、多少威嚇するモノはいるが基本的には襲ってはこない。

 でも正直、結構怖い事は確かだ。


 それから森の中をしばらく進むと道にひと際大きな足跡があった。

 これは【グリフィン】だ。

 鷲の頭と翼、獅子の身体を持った大型の魔物だ。

 少しまずい事になった……

 どうやら、グリフィンの縄張りが近くにあるようだ。


「クリス……

 ちょっと厄介な魔物が出るかもしれない。

 注意しておけ」


「師匠!危ない!」


 そいつは、藪の中からいきなり飛び出してきだ!


 かなり大型のメスのグリフィンだ!

 クリスが即座に火炎魔法で応戦する。


「クリス!奴らはデカい割に素早い!

 魔力切れを起こさないように

 無駄打ちしないで

 落ち着いて的確に狙うんだ!」


「はい!わかりました師匠!」


 何とか、グリフィンの猛攻を防ぎながら

 クリスの魔法がグリフィンの羽をかすめた。

 その衝撃でグリフィンが体制を崩した! 


 いけるぞ!勝てる!

 その時、後ろからもう一匹オスのグリフィンが飛び出してきた!


 更にデカイ!


 クリスは完全に挟まれた。

 クリスは魔力量はすごいが戦闘に関してはまだ初心者だ。 

 クリスは徐々に押され始めてきた。


 更に目を疑う光景が飛び込んできた!


 奴らの背後から更に、3体のグリフィンが襲い掛かってきた!

 そして、そのうちの1匹が俺に飛びかかってきた!


 マジかよ!

 マズイ!

 俺死んだ?

 俺は諦めて、目を閉じた。


 ……。


 あれ?



 次の瞬間俺に飛びかかってきたグリフィンの頭が吹っ飛んでいた!


 砂埃とともに、その背後に更なる大きな影があった!


 マジかよ……

 次はどんな化け物が出てくるっていうんだ?


 砂埃の中から現れたその影は

 身の丈2メートルを超える身体に

 金髪のツインテール、ピンクの口紅、花柄のワンピースを着た、樫の木より太い両腕を持つ青髭のオネエだった。


 あ、最近こういう人見たことある…。


 更に、5人の屈強なオネエ達が飛び出してきた!


「何、この森。

 お化け屋敷か……?」


「愛の戦士!

 マザーメイ・シスターズ参上!」


 彼らは何と素手で、瞬く間にグリフィンの群れを一蹴した!


 グリフィン達は肉塊となって、辺りに離散した。


「見たか!

 これがアマンダ修道院の

 神への信仰の力よ!」


 いや……

 僕は多分、筋肉の力だと思います。


 一番大きいツインテールの巨漢が俺たちに振り返った。


「私は、マザー・メイ。

 こんな子供が護衛もつけずに

 森を旅するなんて感心しないわね」


「あなたがマザーメイ!?

 実は俺たちあなたに会いに来たんです」


「??

 貴方達、私を知ってるの?

 初めて見る顔だけど」


 俺は張り詰めた緊張が抜けて気を失った。


 愛の戦士マザー・メイとの出会いであった。




        To Be Continued…




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