第936話

突然魔王の叫び声が城の中に響き渡った。


「がっ!があぁぁ!な、何をした貴様ら!こ、この衝動は‥!」


「何をしたですって?貴方が我々の提案を断ったからこうなったんでしょう。この場であればスキル【魔王】の衝動は抑えられる、そうお伝えしましたよね?もちろんそれは私のスキルがあってこそです。交渉が失敗したのであればスキルを使用してスキル【魔王】を抑えておく必要はありませんからね。思う存分、勇者と殺し合いをしてください。」


先程アムピオンがスキルを使用した後に、何か止まっていたものが動き出したような感じがした。


おそらくそれで魔王のスキルの暴走を止めていたんじゃないだろうか?


自分たちの思う通りにいかないと思った女王たちがスキルを解放してスキル【魔王】を通常通り発動させたってわけか。


もし交渉がうまくいかなかった時用の保険みたいなものか‥


ここまで勇者と近づいた状態でスキル【魔王】が発動してしまえば、魔王も抗うことは出来ないようだな‥


「く、くそが‥‥我が番よ、逃げろ‥スキル【魔王】に取り込まれたら、俺は自身の制御が出来なくなる。そうなれば近くにいるお前も手にかけてしまうやもしれん。タルタルよ、我が番を護るのだ!」


何言ってんのコイツ‥


アキーエはお前のじゃないぞ!


アキーエは俺のなん‥


「何勝手な事言ってんのよ!私は別にあんたの物じゃないわ!それに魔王も女王もうちのマルコイが倒すんだから、逃げる必要なんてないわ!」


お、おおう。


魔王倒すのは勇者の仕事なんですけど‥


まあここなら誰も見てないし、俺が多少暴れても問題ないかな。


それに俺のアキーエさんの要望だしな。


「だそうだ。うちのアキーエさんの希望だからな。悪いが全員相手させてもらうぞ。アキーエ!天井に向けて魔法を放て!開戦の合図だ!」


「わかったわ!」


アキーエの魔法が城の天井を派手にぶっ壊す。


一発の魔法で天井は瓦礫と化して降り注ぐ。


「ちっ、どういう理由かわからないけど、勇者と一緒に行動しているだけはあるわね‥魔王だけに任せるのも少々酷のようだわ。悪いけど、私達も参戦させてもらうことにするわ。」


女王の発言と同時に城の扉からエルフ兵が現れる。


「我がエルフの屈強な兵達よ!奴らは我がエルフ国に仇なす者達だ!討伐せよ!」


「「はっ!」」


エルフたちが一斉に精霊を纏う。


なるほど、ここにいる兵は選りすぐりの兵って事か‥


「正人、卓、あやめ、恵!交渉決裂だ。悪いが、ひと暴れするぞ!」


「何言ってんのマルコイさん。マルコイさんと一緒にいる時点でこうなるってわかってたじゃん。まあアキーエさんもいるから余裕っしょ!」


「何か難しい話してたけど、結局こうなるのよね。」


うるさいな、あやめ。


俺は悪くないぞ‥‥多分。


「マルコイ様の敵は殲滅するべし!」


お、おう。


頑張れ、恵。


ほどほどにな‥


「ひゃっはー!今こそマルコイ様の魔道具の力を見せる時!愚者どもよ、かかってくるがいい!」


うん。

とりあえずみんな頑張れ。


「原初の炎よ、大地を焦土と化し命を刈り取れ『豪炎烈陣』!」


アキーエの前に炎の壁が現れる。


炎は波のようにうねりながら、エルフ兵に向かって襲いかかる。


「『水の大精霊よ、顕現し世界を水に浸せ』!」


女王の精霊術によりエルフ兵の前に巨大な水の精霊が現れる。


精霊が腕を振り上げると大量の水が発生し、アキーエの放った炎とぶつかる。


「くっ!人族のくせになんて威力なの‥」


若干アキーエの魔法が優勢ではあるが、魔法の相性からか水が炎を飲み込み、大量の水蒸気を発生させる。


魔法の余波によって城の壁が壊され、水蒸気は外に抜け出ていく。


「ここじゃ狭い。みんないったん外に出るぞ。」


各々外に飛び出す。


水蒸気が邪魔で相手が見えにくい‥


まあそれは相手も同じ事だと思‥


その時黒い影が一閃する。


影は俺とアキーエを無視して、でかい頭に向かう。


「正人!気をつけろ!」


恐ろしいスピードで駆ける影は正人に向かって剣を繰り出す。


「死ね!」


影と化した魔王の剣が正人を襲う。


まずい!

恵の魔道具よりも早く剣が正人に届く!


魔王の剣が正人を斬り裂いたと思った瞬間に爆発が起きる。


爆発音と共に何故か2人の人影が爆風で飛ばされている。


あれは‥


正人と‥‥

ラケッツさん!


「勇者を簡単に倒せると思うなよぉ‥‥」


そんな事をいいながら飛んでいくラケッツさん。


「マルコイ殿!楽しい事は自分たちも混ぜてください!」


ナイスタイミングだ。


さて総力戦といくか!







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