第927話

「パねぇかどうかは置いておいて、とりあえずやってみようではないか正人君。」


「それでも続行しようとするなんて‥やっぱパネェっす!」


ええいうるさい。

やると決めたらやるのが男なんだよ。


「俺が顔から光属性の魔力を流す。正人は頭を両手で挟んで魔力を流してくれ。」


「逃げられないようにするなんて‥やっぱパネェ‥」


うるさいな。

頭刈るぞ。


あ、刈ってもすぐ生えてくるのか‥


もしかして今更だけど、この魔道具ってガッツォさんに渡したほうがよかったんじゃないだろうか‥?


「流すぞ正人!」


俺と正人は同時に段ボールに光属性の魔力を流す。


「うぼぼぼぼあべべべべべうごごここご!」


おお、今までにないくらいの反応だ。


だ、大丈夫だよな‥コレ?


「おべごっ、あぶらっ、かたぶらっ!」


鼻とか耳とか口とかいろんなところから煙が出て来た‥


ちょ、ちょっとやめてみようかな‥


段ボールの顔から手を離す。

正人も同じように頭から手を離す。


段ボールは地面に転がったままビクンビクンとしている。


しばらく待っていると、段ボールが意識を取り戻した。


「うっ‥俺は‥な、なんだ‥頭が軽い‥モヤが取れたような感じがする‥」


「よかった。なんとか成功したみたいだな。もう少しで危ないところだった‥」


「もう少しで廃人だったっすね。マジパネェ!」


う、うるさい正人。


「むっ、お前は‥俺にいったい何をした?」


「何って‥頭いじられてたみたいだから、光属性でお前の頭にアタックしてみた?」


「ぬ、ぬぁーにぃ!ひ、人族が‥」


ん?

俺たちが光属性の魔力を使えた事が気になったのか?


「ひ、人族が俺の頭に触ったと言うのか!ひぃ、ひぃぃー!」


ぬっ?


「ひぃ!ひ、人族が触った‥人族の病気がうつったぁ!」


「なっ!お前失礼だな!俺は別に病気なんて持ってないぞ!」


「ひ、人族は色んな所に行くし、普通食べないような物まで食べるだろ‥そのせいで決して治すことが出来ない不治の病を持っていると聞いているぞ!」


「そんなはずないだろう!」


な、なんて失礼なやつだ!


これだから長年引き篭もってた奴らは‥

嘘の情報に踊らされやがって。


「と、とにかくそれ以上近寄るな!そ、それにお前を見ていると何故か頭痛と吐き気がしてくる‥それに悪寒と震えと涙と鼻水が出てくる!よ、寄るな!頼むから寄らなでください!」


涙と鼻水が凄いな‥


リルが何故かこちらの方にテクテクと歩いて来た。


そして段ボールの肩をポンポンとしている。


リルに頭をポンポンされて何故か泣き出す段ボール‥


え?

何、俺そんなに悪い事しましたかね‥?


「う、うっ‥ありがとう。貴方は人族なのに、エルフの気持ちがわかる良い人だ‥」


人族に触られてますけど?

あとその人、人族じゃなくて魔族なんですけど?


「おい!エルフの同志たちよ!剣を収めるんだ。俺はこの人族たちと話をしてみることにする!」


段ボールが周りのエルフたちに声をかける。


数人のエルフが顔を見合わせているが、その後ろから数人のエルフが歩み出て来た。

他のエルフよりも少し豪華な鎧をきているところを見ると部隊長とかかな?


豪華さで言えば、段ボールの方が上だな。

まあ段ボールは燃えるけど‥


「レイノネン公爵‥人族如きと話をするなど‥残念ながら今この時点で、あなたはこの軍を率いる権限は無くなりました。全軍!人族を討ち滅ぼし、レイノネン殿を捕えるのだ!」


おいおい。

穏やかじゃないな。


「なっ!お前たちのどういうつもりだ!」


ただ俺たちと話をすると判断しただけで、軍の指揮権がなくなるのか?


しかしこいつらも懲りないやつらだな。


まだお前たちの力で俺たちを倒す事ができると思っているのか?


エルフたちが前衛と後衛に分かれ、前衛は精霊術を剣に纏わせ、後衛は遠距離から精霊魔法を放ってくる。


前衛のエルフにはリルやアレカンドロの脳筋ズと草むらの中から見事に復活したラケッツさんや正人が当たる。


後衛から魔法で攻撃してきたエルフに対しては、恵が防御してガッツォさんの魔道具での攻撃やアキーエさんの魔法、あやめが空から攻撃している。


あっという間にエルフたちの陣形は崩れて、あとは仲間たちに蹂躙される形となった。


100を優に超えるエルフたちはその殆どが負傷して動けなくなっている。


おそらく死者もいるはずだが、こちらを殺すつもりできたのだ。

自業自得だ。


しかし思っていたよりも人数が少ない。


「マルコイ。逃げたエルフだけど、キリーエの部下たちが追跡して逃亡先の場所を探してるわ。もう少ししたら報告があると思うけど、どうするか決めておいてね。」


なぬ?


逃げたエルフがいるのか?


てっきりあれだけの事を言ったから、全員で突っ込んでくると思ったのに‥


しかしみんな知ってて逃したみたいな感じでしたね。


魔道具の具合を見学してたから、すっかり見逃しておりました‥


この後か‥


とりあえず段ボールと話をしてから、今後を決めるとするかな。







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