第861話
さて【技能眼】で見たスキルを模倣する前に、俺にはやるべきことがある。
そう。
アキーエたちを熱い目で見てる奴らをぶっ飛ばす事だ‥
ガチムチおっさんドワーフ包囲網を抜け出し、アキーエたちの所に向かう。
おそらくこの国の貴族の息子たちだろう。
この国を救った英雄と接点が持てればラッキー、そしてあわよくば嫁になんて思ってるんじゃないだろうか?
いや、俺の仲間はみんな綺麗だったり可愛かったりするから、そう思ってるに決まっている!
うん。
殲滅だな。
「しかしアキーエさんはそんなにお強いのにこんなにお綺麗だなんて、周りの人達が放っておかないでしょう?」
そんな事をアキーエに向かって言い放っているやつに近寄っていく。
「そんな事ないですよ。それに今はそれどころじゃないですから。」
アキーエが笑顔で返事をしているので、それで気をよくしたのか男は更に突っ込んで質問をする。
「それなら今は特定の異性はいらっしゃらないと言う事ですか?なんと勿体無い、世界の損失ですよ!私でよろしければ立候補させてもらえませんか?こう見えて私は伯爵家の者なんです。アキーエさんが満足できる暮らしを提供できると思いますよ。」
貴様が暮らしを提供する未来はない‥
この王城にある庭の肥やしになってもらおう。
「まだこれから復興の手続きをしないといけませんし、すぐにと言うわけじゃないのですが‥ヒィッ!」
ほう。
俺の殺気に気づくとはなかなかやるではないか‥
安心するがいい。
派手にいけるように身体に木偶爆弾をくくりつけて空に飛ばしてやろう。
「ちょっとマルコイ。そんなに殺気駄々漏れでどうしたのよ。みんな怖がってるじゃない。何か嫌な事でもあったの?」
むぅ。
なるほど、殺気に気付いたわけでなく駄々漏れだったわけか。
「止めるなアキーエ。男には決着をつけねばならぬ事があるのだ。」
「何を訳のわからない事を言ってるのよまったく。」
「マ、マルコイさん‥よ、よかった。貴方のような英雄と話す事ができるなんて。ずっと先の代まで自慢できます。」
先程までアキーエと話していた男が恐る恐る話しかけてきた。
安心するがいい。
そんな未来は貴様にはこない。
必殺!
息の根この場で止めてやるアキーエオレノヨメ拳っ!
「もうふざけないの。」
俺の拳が唸る前に、アキーエのツッコミが後頭部に迫る。
俺はその手を受け止めて、アキーエを見つめる。
「俺の大事なメンバーを口説かれて、黙ってられるか。」
「あ、そ、そう言う事なの‥」
俺の手が痺れて感覚がなくなっている。
「ああ。だからちょっと一言いってやろうと思ってな。」
アキーエがもじもじしている。
今がチャンスだ。
死ぬがいい!必殺‥
「もうヤキモチね。恥ずかしい!」
そう言ってアキーエは俺の肩を叩こうとする。
再度防ごうと思ったが、腕に感覚がなく動く気配がない。
あ、これヤバいやつだ。
肩‥いや全身をエンチャント:護る者で強化しないと恐らくじいちゃんに会えるやつだ。
肩に衝撃が走る。
俺はそのまま勢いを殺せずに錐揉みするように回転して王城の壁に突き刺さった。
「でも嬉しいわ‥あれ?マルコイ?‥‥マルコイ知りませんか?」
アキーエは先程まで話していた男性に問いかける。
「ひっ!す、すみません!た、多分あちらにお飛びになったと思います。は、はやすぎて見えませんでしたけど。あ!ぼ、ぼく挨拶しないといけない人がいました!申し訳ありません、失礼します!」
男は脱兎のように逃げ出していった。
ふっ。
計算と少し違ってしまったが、結果的にはアキーエにたかる虫たちを駆除できたようだな‥
このツッコミをいなせなければ、アキーエの横に立つ資格はない。
俺は壁に埋まり、壁画のようになったまま笑みを浮かべた。
ふむ。
一悶着あったが、あれから男性たちはパーティメンバーに近寄らず遠巻きに見ている。
俺が身体を張って、うちのメンバーにちょっかいかけたらこうなるぞって言うの教えてやったからな。
そんな俺の元にまたガチムチのおっさんたちが近寄ってこようとしている。
おそらく先程のツッコミで死ななかったのを、何かの魔道具だと思っているのかもしれない。
「マルコイさん。」
俺がガチムチたちをどう処理しようかと迷っているとキリーエが声をかけてきた。
「どうしたキリーエ?」
「なんもあらへんけど気になることがあって。」
「ん?気になること?」
「そや。王様と話してた時に国の話してたやろ?」
国の話?
あ、王様になれとかふざけた話のやつね。
「ああ。王様がふざけてこの国の王様になれとか言ってきたやつか。全くとんでもない冗談だよな。」
「ほんまにふざけた話や。マルコイさんが王様になるんやったら、キリエル村を独立させて国にするんやからね。」
いや、それも初めて聞きましたけど‥
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