第723話

えっと‥


あ、確かに謝るって言ってましたね。


でも、何もそんなに雰囲気出さなくてもいいじゃないですか‥


男って単純だから勘違いしちゃうでしょ!


「べ、別に構わないぞ。今から行くか?」


「うん。心の準備はできてるから。」


俺は違う心の準備しちゃいましたよ!


「わかった。それじゃあ王様のところに行こうか。」


アキーエと一緒に王様のいる場所に向かう。


王様も気にしなくていいと言ってたんだけどな。

多分あのおっさん将軍がいなければ、すんなり終わってたと思うし、俺が少し恥ずかしい思いをしなくてもよかったのに。


何か思い出したら余計に恥ずかしくなってきた‥

許すまじヨエク‥


王様は正人たちと談笑しているようだった。


「そうなんっすよぉ!んで、マルコイさんに助けられたって感じなんすよ。やっぱマルコイさん最強?みたいな。」


おい正人。

その人王様だぞ。

わかって話してるのか‥?


「いや〜、やっぱ王様はすげーっすね!マルコイさんの凄さがわかるなんて、パないっすよ!」


あ、知ってた。

そうだった、正人は誰が相手でも正人だった。


しかしトールルズの王様は本当に良い人だな。

正人の内容があるのかどうかわからないような話をニコニコしながら聞いている。


「マルコイマジサイキョーみたいな。」



調子に乗りすぎだ‥


「おい。お前ら王様相手に失礼だろ。」


「あーっ!生マルコイさんだ。」


誰が生だ誰が。


「はっはっは。いいんだよ。勇者殿の話は面白い。それに私の方から聞かせてほしいといったんだよ。」


まったく甘やかしすぎだ王様‥


「すみません、王様。別件ではありますが、少しお時間をいただいてよろしいでしょうか。」


「ええ構いませんよ。それにマルコイ殿ももう少しくだけた感じでよろしいですよ。」


「はは。善処します。」


「はっはっは。ところでどのようなご用件ですかな?」


「はい。実は私の仲間のアキーエが王様に伝えたい事があると。」


「ふむ、アキーエ殿。どうされましたかな?」


「はい‥じ、実はこの街の城壁を壊したのはわたしなんです!申し訳ありませんでした!」


アキーエの謝罪を受けた王様は、顎の髭を触りながらアキーエを見ている。


これでアキーエを責めるようなら顎髭一本ずつ抜いていくけど、この王様なら‥


「そうでしたか‥ところでアキーエ殿。貴公は城壁を壊そうと攻撃されたのですか?」


「ま、まさかっ!そんな事するわけありません!敵を倒そうと思って急いで移動するために魔法を使ったんですけど、止まれなくて‥」


「それはすごい。でもすみません、プリカを護るために貴公に危ない真似をさせましたね。怪我をされなくてよかった。本当にありがとう。ところで今の話の中で、貴公が謝るところがありましたか?」


「そ、それは‥でもわたしが不注意で壊してしまったんです。本当に申し訳ありません。」


「アキーエさん‥」


王様の顔に笑顔が浮かぶ。

年齢を重ねていることで王様の顔には皺があるが、その皺のほとんどが笑い皺のようだ。

とても優しい顔をしている。


「アキーエさん。貴方は優しい人ですね。戦っている時に壁が壊れてしまった。ほとんどの人は自分に被害が及ばないようにその事を黙っているでしょう。それにもしそれがわかってしまった時はとり繕おうとする。でも貴方はそんな事は一切せずに自分に非があると言ってきた。もしかしたら貴方の中で言ってしまって楽になりたいという気持ちもあるのかもしれません。それだとしてもちゃんと謝りたい、パーティに迷惑をかけたくないといった気持ちが伝わりました。わかりましたアキーエさん。貴方を許します。」


アキーエはホッとした表情で王様を見ている。


そっか‥

結構思い詰めてたんだな‥

気づいてやれなくて申し訳ないな。


獣王様は俺たちを必要としてくれている。

それに応えたくて獣人国に籍を置いている。


でもこの王様と一緒なら、この国を護りたいと少し思ってしまったよ。




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