第583話

「それでマルコイ‥終わってない問題とはなんだ?」


人払いまでして大袈裟な‥と言いたいところだけど、今回については王様が正解かな。


だって、なんと言っても勇者と魔族がいるもんね。


「えっとですね‥」


「ちょ、ちょっと待った!」


王様が椅子から立ち上がり急に静止をかけてきた。


はい?


「すまぬマルコイ。心の準備がいるでな。ところでお主が他国に出向いたのは、仲間の為であったよな。」


「はい。そうですね。」


「そこで何があったかまではわからぬが、ロンギル共和国にとって害となろう商会を潰した。まあここまではよかろう。まさか潰してしまうとは思わなかったが‥そして何故かその際にドラゴンと戦ったらしいが‥これは本当か?」


「はい。そうですね。」


「ほ、ほほう。そうか、しかもドラゴンは三頭ほどおったそうだが‥」


「はい。そうですね。」


「う、うむ。ワシもここまでは知っておる。そしてそのドラゴンの素材をこの場で出してもらい、それをもってお主を竜殺しとして褒美を授けるつもりだったのだが‥」


「はい?そうですね?」


「えっとな‥問題解決しとるよな?」


「いいえ。そうじゃないですね。」


「何故じゃ!これで終わりでいいではないか!お主の事だ、何か爆弾でも持っておるのだろう?宰相よ!話が違うではないか!」


「うーむ、そうですな。ちょっと予想していたより上をいっていると思っていましたが、まだ何かあったようですな。はっはっは!」


「ちょっ!お前笑い事ではないであろうが!」


王様が所望されているのは爆弾か‥


木偶爆弾が『スペース』の中に入ってたよな‥


俺は『スペース』から爆弾を取り出す。




「おい‥マルコイ、お主今何をした?」


「はい?爆弾を持ってるだろうとお聞きになりましたので、ちょうど持っていましたから出したところです。」


「何で爆弾なんぞ持っておるのだ!いや、それよりもどこから出したのだ!?」


あ、そうだった。

【時空魔法】もそうだけど、【空間魔法】も獣人国を出てから得たんだったな。


「えっと‥スキルです。」


「スキルです、ではないわ!そんなスキル初めて見たわっ!」


「そうですね、その辺も報告したいと思ってるんですけど‥」


「王よ、このままだと収拾がつきませぬ。一旦マルコイの話を聞いてからにしてはどうですか?」


「う、うむ。そうじゃな。それとエッケンよ。胃痛に効くポーションがあったであろう?それを用意しておけ。」


「承知いたしました。」


失礼だな。

話を聞く前からポーションを用意するなんて。


「あ、それなら持ってきておりますよ。どうぞお使いください。」


ちゃんとキリーエに言って事前に準備してたから大丈夫なのに。



「何でお主が用意しておるのだまったく!して終わっていない問題とはなんだ?ワシならどうにか出来ると思って話しておるのだろう。お主がワシとの約束を守り、獣人国に戻ってきた。ならばワシもお主の望みを聞かねばなるまい。」


王様はやれやれといった感じで椅子に座り直す。

その顔には暖かい表情を浮かべている。


そうなんだよな。

こんな人だから、また獣人国に戻ろうと思ったんだった。


「了承はしたが、その前に一応ポーションをもらっておくぞ。」


「王よ、そこが残念です。」


「何をぬかす!ワシとて身体は大事じゃ!」


「はいはい。」


相変わらずの関係だな。

エッケンさんがいるから、王様も好きに出来るんだろうな。


「そうですね‥どこから話したらいいのか‥。ロンギル共和国での話は先程王様が話した通りです。ただ、相手の商会を何故潰したかと言うと商会長が魔族に属した者だったからです。」


「な、なんだとっ!ロンギル共和国の中枢に入り込もうとしていた商会が魔族の手の者だっただと!?」


「はい。正確には人族で魔族側に属した者ではありましたが‥それと今回魔王復活の情報は各国に回っていましたが、実はその影にもう1人の魔王がいるようです。」

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