第526話

「わ、忘れてないぞぉ‥」


「いや絶対忘れてるじゃん!もう頭の片隅にもないじゃん!」


そ、そんな事ないぞ。

失礼なやつだな。


「そんな事はどうでもいい!今から賢者の治療を始める!」


「誤魔化してんじゃん。」


うるさい正人。

あんまりしつこいと、あとで実験台にするからな。


「ここで出来るのは応急処置的な物だ。俺が全力を出せないからな。」


流石に木の身体では高威力のエンチャントには耐えれないと思うからな。

それにグルンデルさんも見てる。

あまり派手な事をして、目をつけられると困る。


今までのタルタル教信者は、フーラさんのように宗教について明るい人ではなかった。

しかしグルンデルさんは女神ウルスエート教の枢機卿までなった人だ。


どんな方法で崇め奉られるかわかったもんじゃない。


う〜ん‥

しかしフーラさんの行動力にグルンデルさんの知識と経験が加わったら、タルタル教がもっと大きくなってしまうのではないだろうか‥


思いきって、ここでグルンデルさんを手伝わないというのも一つの手ではないだろうか‥‥‥いかんいかん。


俺は布袋の中に『スペース』を作り出し、そこから魔力供給の小手を取り出す。


しかしエンチャント:光を見られるのもよくない気がするよな‥


どうにか方法がないものだろうか‥‥


あっ!


そうだった、目の前に勇者がいるんだった。


俺の光属性と勇者の光属性が同じなのかはわからない。


正人から模倣したスキル【勇者】のおかげで使えるようになったから、一緒だとは思う。

しかし俺の光属性はリルに効いたという実績がある。

だから使うなら俺の光属性だろうな。


しかし俺の光属性でやるとしたら、その前に念のため一芝居打っておく必要があるな。


「正人。これから治療するのにお前の光属性の力が必要になる。それをこの小手に流し込むんだ。」


「ああ!わかった!親友の為だ、まっかせとけじゃん!」


お前は真剣なのかふざけているのかどっちなんだ?


そのうち頭に装着する光属性を放つ魔道具なんかを作って頭につけてやろうか。

あっ!

こいつ元々光属性だから通じないんじゃね?

恐るべしは勇者のおバカだ。


正人が魔力供給の小手に魔力を流す。

魔力供給の小手はその光属性の魔力を消化して、通常の魔力として小手に蓄えている。


俺の目には正人が頑張って魔力供給の小手に魔力を流し込んで溜めてもらっているように見える。


だが、他の人から見ると正人の眩い光属性の魔力を小手が吸収して、その光を放っているように見える。


グルンデルさんとか「おお〜!さすが女神ウルスエートが使わした御使様だな。」とか言ってるし。


やっぱり俺が使うとまずい事になってたかもしれないな‥


ある程度魔力を流し込んでもらったところで、小手を受け取り、自分の腕に装着する。


エンチャント:光を使うには、この身体が耐えれないかもしれないというのもあるが、魔力が圧倒的に足りない。


魔力供給の小手を『影法師』に装着する事で、通常のエンチャント:光を何とか使える程度だろうな。


俺は魔力供給の小手から魔力を身体に流し、エンチャントを全て発動させる。


身体が悲鳴をあげているな。

もしかしたらどこか壊れるかもしれない。


そしてエンチャント:光を発動させる。

俺の身体が光に包まれる。


そして俺は賢者に近づき‥


賢者の頭を、鷲掴みにする。


リルの時は両手だったけど、今は小手を片手しかしてないから片手で賢者の頭を掴む。


そのままミシミシと音を立てる賢者の頭をそのまま、宙に持ち上げる。


「うぼぼぼぼ‥」


おお、賢者にも反応があったようだ。


「な、なあ、あやめ。あれって絶対アイアン◯ローじゃね?」


「う、うんアイアンク◯ローだね‥」


「卓の身体‥ビタンビタンって陸に上がった魚みたいになってるっぽいけど、大丈夫なんだよな‥?」


「い、今まで反応がなかった事を考えると、大丈夫なんじゃないかな‥」


「そうだよな‥」

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