第79話

宿に戻ろうと帰路についた。

宿の近くまで来た時に、宿の前に誰が立っているのが見えた。


その人物は此方に気づくと走り寄ってくる。

走り方からして女性のようだが、残念ながら首都で俺に用事があるような女性の知り合いはいない‥

残念ながら‥


「マルコイさん!」


名前を呼ばれた事に驚き、こちらに近づいてくる女性を観察すると見覚えのある女の子だった。


確かドラゴン討伐の時に助けたDランクパーティの女の子だった。

確かナーシスといったかな。


「確かナーシスだったよね?どうしたんだ。俺に何か用かい?」


「名前覚えててくれたんですね。ありがとうございます!以前助けていただいたお礼をしたいってお伝えしてたんですけど、なかなかお会いできなくて‥。今日もお邪魔したんですけど、そろそろ帰ってくるんじゃないかと思って待っていました。」


おう。わざわざ律儀な子だな。

オレンジのポニーテールの毛先を揺らしながら近くに寄ってくる。


「よかったらお時間があれば明日にでもお礼させてもらえませんか?」


「いいって。そんな大した事してないんだから。感謝の気持ちは十分もらったからさ。」


ナーシスは顔を近づけて来て


「それじゃ私の気持ちが収まりません。私あの時死ぬって、ここで終わりなんだって思ったんです。でもマルコイさんのお陰で死なずにすんで、まだ先に進めるんだって。本当に感謝してるんです。」


少し目が涙目になっている。

そこまで言ってくれるなら何か受け取るのもやぶさかではないな。


「ただ私Dランク冒険者なんで、そこまで蓄えがなくて‥。それで友達がやってるお店があるからそこで何かお礼の品を買わせてもらっていいですか?」


「構わないよ。ありがとう。そしたら明日の昼くらいでいいかな?」


「はい大丈夫です。それじゃまた明日お願いします!」


ナーシスは頭を下げるとそのまま自分の宿に戻って行った。


「可愛い子じゃない。よかったわね、おモテになって。」


「そうだな。あれくらい素直だと好感持てるな。アキーエも見習わないと‥あぎっ!」


「ふんっ。余計なお世話よ。」


知ってるかい?

【格闘士】の蹴りって歩けなくなるんだぜ。

宿の前でしばらくもんどり打って自分の部屋に戻った‥

ちなみにミミウはしばらく側にいてくれたが、ご飯の匂いがしたら宿に戻っていきました‥




翌日の昼前に待ち合わせ場所のギルドに向かうと、すでにナーシスが待っていた。

グリーンのワンピースにオレンジの髪の毛が映えていてとても可愛らしい。


「あ!マルコイさん。こっちです〜。」


ナーシスは手を振りながら近づいてくる。


「待たせたか?」


「いえ私も今来たところです。それじゃさっそく行きましょう。」


先を歩くナーシスについていく。


しばらく歩くと雑貨屋?みたいなお店の前でナーシスが立ち止まる。


「ここが友達がやってるお店です。友達は錬金術士なんで色々取り扱ってるんですよ。」


なに?錬金術士だって?

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