第24話

とりあえず勇者御一行の件は頭の隅に追いやってCランク依頼を達成する為に王都の外へ出る。


今回の討伐依頼はCランクでも下位になる、オークの討伐だ。


普段は単独でいるらしいが、発見したのは3体の群れだった。

流石に討伐は難しいと考えて引き返そうとしたが、運悪く見つかってしまい強制的に戦闘となった。


逃げの一手ではあったが、隙を作るためにアキーエが魔法を放つ。


「炎壁!」


3匹の真ん中にいたオークの足元から火柱が噴き上がる。

真ん中のオークはモロに魔法を喰らい炭化している。

突然の火柱に驚いているオークの側頭部に、ミミウのウォーハンマーが炸裂する。

ミミウがオークを倒した事を確認したアキーエが炎壁を強制的に終了させる。

急に壁が消えた事に驚いたオークだったが、目の前のアキーエを見て下卑た顔で近づこうとする。

その頭部をミミウがウォーハンマーで狙うが直前にオークは気づき腕で頭を庇う。

ウォーハンマーは腕に当たり、辛くも絶命を免れたオークの頭部に火球が着弾する。

悶えるオークの頭部を今度こそミミウのウォーハンマーが破裂させる。


ものの数十秒でオーク3匹は息絶えていた。


え?なにそれコワイ‥‥

下位とはいえCランクのモンスターの群れだったのだ。

俺はいくらギルドの資料で見ていたとはいえ、初見のモンスターだったし、事前の作戦会議で群と出会ったら撤退としていたのだが‥

「えっと‥群れと当たったら撤退だったよね?」


「え?3匹くらい問題ないでしょ?5〜6匹くらいならまでなら余裕持って戦えると思ってたわよ。確かにマルコイが言っていたように10匹くらい群れでいたら撤退した方がいいとは思ってたけど?」

アキーエが何言ってるのって顔をしてミミウも頷いている。

え?なにそれコワイ‥‥


言葉って難しいよね。


結果的に2人で3匹程度なら問題なかった事から、Cクラス下位のオークの強さはキラーベアよりも弱いくらいだった。恐らくキラーベアがCランクに上がったのは正解だったと思う。


とりあえずCランクの手応えを感じられたので、今日は帰る事にした。





「マルコイさん前方に人がいますぅ。」


いつものようにミミウが【遠視】で索敵をしていると、そう言ってきた。


不吉な予感がした俺はミミウに詳しく教えてもらう事にした。


「4人組ですぅ。男の人が2人で女の人が2人みたいてすぅ。」



予感的中。人数的に見て勇者御一行と思われる。


「はぁ〜、横道に逸れて遠回りで帰っても、あの様子見ると何度も来そうだよな。」


「そうね。いずれ会わなくちゃいけないみたいだから諦めたら?」


「他人事だと思って‥」


「何言ってんのよ。パーティだから運命共同体よ。どうせわたしたちにも降りかかってくるんだろうから。」


「あれが勇者御一行じゃなくて女の子2人だけならいいんだけどなぁ。」


そう呟いた途端にアキーエからローキックが入った‥

腰の入った素晴らしいローキックだったが、腿に決まったので正確にはローキックではないような‥

足が痺れて動けない‥

今日はここで野宿かもしれない‥


「ほら?どうするの?」


野宿を検討させた張本人が問いかけてきた。


「いや、今日は野宿かと‥」


「は?あのひとたちどうするのって聞いてるんだけど?」


「あ、そうだった。とりあえず話を聞かないと何度も来そうだからな。話だけでも聞いとくか。」


このまま近づかないわけにもいかないので、仕方なく勇者御一行の方に歩いて行く。


「あ!正人。あの人だよ。」


「おう、わかった。後は任せとけ。」


こちらに気づいたのか、勇者がゆっくりとこちらに歩いてくる。


「ちーっす!ちょいとそこの人さ。少し話してもいいかな。」


イラっ。


「俺は勇者やってる正人ってゆーんだけどよ。ツレから気になる話を聞いてよ〜。ちょっとばっかし話を聞かせてほしいみたいな感じでよ〜。」


イラっ。


「なんかさ〜、あんた鑑定?みたいなの持ってんだろ?調べてくれたら勇者だってわかるからよ〜。」


イラっ。



「えっと、すいませんけど一昨日きやがれ。」

いかん、つい心の声がダダ漏れになってしまった‥


「は?一昨日ってもうすぎてんじゃんよ?なにそれウケる。」


やばい。話の通じない人だ。

勇者御一行は真面目な顔しているが、うちのアキーエさんは今の会話だけで、顔つきがかなり厳しい事になってます。


「いや、なんでもない。話って何ですか?」


「いや、あやめに聞いたんだけど、もしかしてあんたに俺達の秘密がバレたっぽいって聞いたからよ〜。それを確かめようって思ったりしてさ〜。」


「秘密って言われても何のことやら?」


「嘘つきなさいよ。あなた確かに私達を見て異世界って言ったでしょ!」

いつの間にか近くに来ていたあやめが食ってかかってきた。


「ああ、その事か。別に他言する気はないから気にしなくていいぞ。」


「だそうだぜ、あやめ。」


「そんなの簡単に信じられるわけないじゃない。」


異世界の知識って言葉からして別の世界って意味なんだろうけど、そんなに重要な事なのか?別の世界の知識があるのは便利なのかわからないし、たいして気にしてなかったが‥

勇者御一行にしてみると重要なことだったみたいだ。


「わかってるの正人?私達が異世界から来たってバレたら元の世界に帰れなくなるんだよ!」

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