第18話

豪華な王座に座っている初老の男が側に仕える男に声をかける。

「宰相よ、勇者たちの成長具合はどのようになっている?」


「はっ!今は神聖騎士との訓練を終えて、モンスター討伐の訓練に移っております。モンスターにある程度の強さが必要なため、訓練をするのにエルフェノス王国のセイウットのギルドに向かっています。」


「そうか。早く使い物になるようにしろ。そして魔族を駆逐し、人族が至高の存在だと世界に知らしめるのだ。」


「御意。」


「ところで勇者達の出自については隠し果せておるか?」


「はい。勇者達にはもちろん、召喚の儀式に関係したもの達にも厳重に守らせております。」


「勇者は異世界などではなくウルスート神聖国から出なければならん。たとえ辺境の出自ということにしたとしても国から現れたことが大事なのだ。」


「勇者達には元の世界に戻る事の条件に、異世界の秘密を話さなさいように口止めしております。口が裂けても言うことはありません。」


「ならばよい。」


ウルスート神聖国

唯一神 女神ウルスエートを崇める国であり、女神の信仰により世界の平和を祈る国である。







「よし!アキーエ頼む!」

マルコイは襲いかかる熊型のモンスターキラーベアの振り下ろされる腕を盾で逸らした後、キラーベアの足を剣で斬りつける。

そしてマルコイの合図を受けたアキーエはすぐに魔法を撃ち込む。

「炎球!」

アキーエの魔法がキラーベアの顔に着弾する。すると物凄い勢いで炎がキラーベアを包み込む。

絶命はしないものの、かなりのダメージを受けたキラーベアにマルコイがトドメを刺しに向かうが、キラーベアが最後の足掻きでその爪を振るおうとする。

しかしその前にミミウのシールドバッシュがキラーベアに直撃する。

するとキラーベアの身体があまりの衝撃でズレる。

そして少し下がったキラーベアの首を正確にマルコイの剣が撫でる。

しばらくしてキラーベアの頭が身体から落ちていく。


「よし。Dランクでも上位のキラーベアも問題なく討伐できたな。」


「そうね。でも相変わらずマルコイの【剣闘士】は凄いわね。」


「そうだな。俺もここまで強くなれるとは思ってなかったよ。でもアキーエの炎球もミミウのシールドバッシュもえげつないな。」


2人とも着実に強くなっている。

しかしそれ以上に自分が強くなっている事を実感する。


マルコイ達は【剣闘士】を発現してから、いくつかのDランク依頼を達成していた。


マルコイの【剣闘士】は盾を扱う腕力の補正以外に剣士としてのレベルも上がっていた。

そして常時発現スキルのためか、身体能力も格段に上がっている。


このキラーベア討伐を達成したらDランクへの昇格試験である。


マルコイは自信をもって試験に臨める事に興奮を覚えていた。


ギルドに戻り受付にいるおっさ‥バーントの座っている場所に進んでいく。


「おうマルコイ。お前らついにキラーベアも討伐したのか?」


「ああ。なんで美女じゃなくておっさんなんだよ‥じゃなくてバーントさん。」


「それもう間違いじゃなくねっ?全部言ってね?」


「キラーベアも特に問題なかったよ。でもこれで討伐依頼の条件の突破したし昇格試験を受ける事ができるんだろ?」


「そうだな。後は試験官の都合もあるが数日中には試験が行われる。明日の朝ギルドに来てくれ。その時には日程が決まってると思うから。」


「わかった。ありがとう、なんで美女じゃくておっさんなんだよ‥バーントさん。」


「それいつまでやんのっ!」


「まあいい。ところでマルコイ。もう少ししたらウルスート神聖国から勇者様御一行がセイウットにくるらしいぞ。お前は何かいろいろと絡まれたり絡んだりするから、ちょっかい出すなよ。国賓扱いらしいから、国家間問題になるからな。」


「へ〜勇者が来るんだ?」


1年ほど前にウルスート神聖国でスキル【勇者】を発現した人が現れたのはマルコイも知っていた。


「確か勇者の他にもスキル【賢者】と【聖騎士】、【聖女】も同時期くらいに発現したんだよな?出来過ぎだよな。魔王でも現れるのかね?」


「噂では魔族の動きが怪しいから本当に魔王が現れたんじゃないかって言われてるぞ。そうでなきゃそれだけのスキルが急に発現した理由にならないだろうからな。」


「そっか。魔王も勇者も俺には関係ないけど、本当に魔王が現れたんなら、勇者様には頑張って欲しいけど、一目見たら満足だから関わらないようにするよ。」


「そう願うよ。いくらギルドが中立とはいえ、わざわざ国同士の揉め事の種を作りたくないからな。」


「わかった。じゃあまた明日。」


そのままギルドを出る。

するとミミウが嬉しそうに俺の前に出る。


「それじゃ今日はもうお休みですか?だったら皆んなで王都の屋台巡りしませんかっ!」


「お?そうだな。せっかくだしミミウのお勧めの店でも教えてもらおうかな。」


ミミウは依頼がない時は王都内の屋台に足を運び、いろんな店の食べ物や飲み物を食べ歩いていた。


アキーエは時々付き合っていたが、俺は【鑑定】で模倣スキルを選ぶのにギルドに行ったり、本が置いてあるところでスキルを調べたりして付き合うことがなかった。


「じゃあ皆んなで屋台巡りだ!」


3人は王都の屋台広場に出発した。

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