第63話襲撃(2)

「クリスッ!」




 アレクシスは、クリスティーナが視界から消えていくのをどうすることもできないまま、ただ叫んだ。


 目の前の敵など、もう視界に入らなかった。


 マルクの首を反対に返して、崖に向かう。


 馬から飛び降り、崖下を覗くも、白い水飛沫をあげて流れる激流が見えるだけだ。




「くそっ」




 アレクシスは悪態をつくがそれも一瞬、顔をあげて、激流をにらみすえる。瞳の中で、決意の炎が燃え上がる。迷わず足を踏みしめた。地面を蹴り上げ、崖下へと身を踊らせた。




「アレクシス殿下っ!?」




 シルヴェストが仰天する。しかし、驚きに気をとられている場合ではない。


 今は戦時中だ。


 シルヴェストはきっと睨み据えると、目の前の敵めがけて、剣をふりおろした。




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