ストーリー128~131

ストーリー128:ガットの宇宙船


登場人物

マット、シェルナ、ガット、ルイス、ラムル



 アリントス邸ドックへ入って来たガットとラムル。


 照明に包まれ宇宙船が佇んでいた。


 ガット「父さんから譲り受けた宇宙船ふね、ハンジャです。名前は僕がつけたんですけど……。」

ラムル「凄い形。初めて見る形の船だわ。バンズにも見せてあげたかったー。」

ガット「博士。あ、ロワートさん。父さんがその方の技術を真似て設計したそうです。バンズさんなら、見れば構造が分かるかも知れませんよ。」

ラムル「なんだかゴツくて重そうね。」

ガット「いえ、見た目より遥かに軽いです。前面、側面の鎧の様な装甲板は軽い材質のパーツの組み合わせです。軽いですが、物凄く硬い板です。」

ラムル「ガット……?その材質……まさかダイムでは⁉︎」

ガット「ラムルさん。知ってるんですか?」

ラムル「今皆んなでそれを調べている途中。……なぁんだ、皆んなも連れてくればよかった。」

ガット「ハンジャの前面と側面がダイム金属の装甲板です。」

ラムル「なるほど、考えたわね。板を重ねて装甲としてるのね。」

ガット「作り出すのが難しいって父さんが言ってました。僕も、話を聞く範囲では、ダイム金属は板を作るのが他へ使いやすい方法かなと感じてます。」

ラムル「板を鋳造したのね。最善の方法かも……。これはあとで皆んなに報告しなきゃ。」

ガット「船体重量が軽くなるので推進機関も1機で十分。」


 2人はハンジャの周りを歩きながら話している。


 ガット「でも今は材料が無く、父さんの怪我も有って全く作ってませんけど。」

ラムル「へー貨物室のスペースも広く取れそうね。」

ガット「はい、ハンジャでフローター2機は収まりますよ。」


 そこへシェルナとルイスが入って来た。


 ルイス「ラムル?飲み物も頂かずにいつまでここに居るつもり?」

ガット「あ、ルイスさん。すみません、ハンジャの説明をしながら見ていたので……。」

シェルナ「マットの物をガットが受け継いだ宇宙船ふね、ハンジャです。名前はガットがつけたんです。」

ルイス「ハンジャ……。凄い装甲板。ラムルが見惚れているのも分かるわ。私もこんな形の船は初めてだもの。」


 ラムル「母上―。」駆け寄って来たラムル。


 ラムル「鎧の様な装甲の全てがダイム金属の板だって。」

ルイス「まぁ。思わぬところで物凄い発見ね。」

ラムル「皆んながビックリするわ。これはバンズにも見てもらわなきゃ。このハンジャはマットさんの設計で作ったんですってよ。」

ルイス「ロワート博士やマットだったら信頼できるわ。私もケイドで経験してるから。」

ガット「ノアーナ最速宇宙船。見てみたかったですね。……でも、もしかしたらハンジャもケイドに近い速度で飛べますよ。……あいにく……僕は操縦は下手なのでスピードは出せませんが……。」

ラムル「……ま、まさか母上?……若い頃の血が騒いでません?」

ルイス「素敵な船を見られただけで満足よラムル。さ、帰りが遅くなるからこの辺で失礼しましょう。」

ラムル「はい。」


 アリントス邸庭先、フローター前。


 シェルナ「お気を付けてルイスさん、ラムル。また来てくださいね。ガットはバンズさんに見せたがっている様なので、その時はご一緒で。」

ルイス「ええ、その時はラムルが一緒に来ると思います。今日はありがとうございました。」


 フローターに入る2人の画。


 上昇し飛び去る画。


 ラムル「母上。ダイム金属を作るのが難しいのは乗り越えられそう。板にしたパーツを使えば鋳造も楽になる。ガットに頼めば鋳造の金型の画像も送ってもらえそう。」

ルイス「凄い船だったわねー。多分軍の船も同じ様に使ってるんだわ。……ところでラムル、ちゃんとベルト閉めてるの?」

ラムル「あ、忘れ……きゃぁ〜〜〜。」


 ディゾルプ。




ストーリー129:土産話とバンズの用事


登場人物

ガルシア、ルイス、ラムル、バンズ、ポートル



 ガルシア邸リビング。


 ラムルが土産話の真っ最中。


 ラムル「……そのハンジャって船が、ほぼダイム金属で包まれてる感じだったわ。しかも推進機関1機で十分飛ぶって言ってた。」

バンズ「今度はアタイも見てみたいー。」

ラムル「でしょー?バンズも連れてくればって思ったもの。」

ガルシア「ダイム金属の製造の難しさを設計で乗り越えたって訳ね。それは素晴らしいアイディアよね。」


 ラムルは小声でバンズに聞いた。


 ラムル小声「バンズ?母のマニュアル操縦、どうだった?」

バンズ小声「感激した。さすがノアーナ1って感じ。」

ルイス「2人共?……何か言ったかしら?」


 Fade-out。


 別角度からの画面に転換。


 ポートル「通信中継ポイントの話は済んだけど、今度はバンズが、少しドックに戻りたいって。」

ガルシア「中継ポイントに出発するのは連絡しながらどうにでもなるわ。だから明日朝、一旦解散にする?」

バンズ「ガルシアさん、別に直ぐ解散しなくてもいいです。……それぞれの船にはそれぞれのAnnからデータを移せば済むし。あまり時間は必要じゃないから。……だから、ちょっと用が有るのでアタイだけ一旦戻ろうかと思って。」

ガルシア「そうね。ポートルが毎晩バーベキュー出来る材料持参してるし。……じゃ、」

ポートル「じゃ今晩の支度支度―。」

ガルシア「皆んな、そうしましょ。」


 こうしてこの晩はお馴染み(?)のバーベキューに。


 面々は舌鼓を打ちつつ楽しく過ごした。


 Fade-out。



ストーリー130:バンズ決心する時!


登場人物

バンズ、ピコ、ラムル、ジャン、ポートル、ガルシア、回想のロワート



 一旦ドックへ戻ると言って、シューロンに戻って来たバンズ。


 バンズのドック内メインルームから奥のマーデクトの方へ歩く画。


 バンズ「ピコ、モニターテーブルの前で待機しててね。」

ピコ「了解、バン。」


 今、バンズのドックにはマーデクトが駐機している。


 バンズ独り言off「やっぱり……じいちゃん、……今が良いと思う。だから、見せてもらうね。」


 バンズはドックの角へ歩み寄る。


 大きめのボルトが4ヶ所、床の板を止めて封印している様にも見えている。そのボルトを外し始めたバンズ。


 外されたボルトと板が壁の方に投げられる画。


 壁の制御盤に有る1ヶ所、パネルのみで四角い角の1つが消える又はONの表現の画。


 次の角に歩きながら、

バンズ独り言off「じいちゃんが、何を残してくれたか楽しみだよ。役に立つものであれば満足!」


 回想……。


 バンズが高等学術部に上がる前の事。


 ロワートとバンズがシートに座って向き合っている。


 ロワート博士「バンズ。お前が必要と感じた時にここを開きなさい。……いいね、必要になったらだ。それまでここには一切触れるな。……開くのは、当然わしがあの世へ行ってからの事だ。それだけは守ってくれ。」


 回想終わり……。


 再び、外されたボルトと板が壁の方に投げられる画。


 4すみのボルトと板を外し終えたバンズ。壁に有る制御盤の1つに歩いて行く。


 パネルのみの制御盤、起動可能の表示の画。


 パネルに触れるバンズの手。


 開いたパネルの中にボタンが付いている。


 それを押すバンズの手。一瞬、躊躇とまどうがボタンを押した。


 ドーム型の天井(屋根)が開く。

屋根と1階の床の周囲にガードの柵が上がる。


 外からの光がドックに注いでいる画。


 直ぐに4ヶ所の板を外した部分がせり上がっている画。


 マーデクトはそのまま床ごと上がって行く。外の光が眩しい。


 やがて4ヶ所のゴツい柱はマーデクトが乗った床を押し上げると、地下から別の床が上がって来た。1ヶ所の角にはエレベーターも見える。驚きのバンズの表情UP。


 バンズoff「これは⁉︎船?……作りかけの船だ。」


 画面は骨組みの下半分まで外装が出来上がっている宇宙船の画。


 宇宙船の足回り近くには、幾つもの大きいボックスと、沢山の丸められた紙が有った。柵を乗り越えて近寄るバンズ。


 バンズが紙の1つを手にする画。


 バンズoff「これは設計図。……じいちゃんが設計した図面だ。」


 他の紙も広げて確認するバンズ。


 紙の1枚にはロワート博士の文字だけ書かれた物が有った。


 図面だけよけて他へ寄せる画。


 文字だけの紙を見るバンズの画に。


 ロワートoff「バンズ。お前がこれを見る時、多分作りかけの船だろう。仕事の合間の精一杯の作業、許してくれ。……ここを見たということは、壁も見たかな?……残りの外装や内装パーツ、推進機関が入っている。……船の側のボックスにも使うパーツを詰めてある。……1番小さなボックスはむやみに開けない事。それは今後の為の材料、ザクラート50%の塊だ。箱の中に説明を書き残してある。まずはダイム金属の精製方法を調べなさい。ザクラートは必要分だけ削って使う事、無駄にするな。……内装のシートやモニターテーブルは自分の好きに組み立てなさい。接合は通常と変わりなくやれば良い。……設計図通りに組み上げて試験航行を済ませたら、その設計図は処分する事。……メカニックはな、設計図をいつまでも持っていても意味が無い。いつまでも過去の設計を参考にするな!……それを超える設計図で作り上げる事が物作りの理想なんだ。分かったね。」


 マット=アリントスに言った言葉が、最後の締めくくりに書かれていた。


 バンズoff「作り甲斐が有りそうな船。……じいちゃんは船を持ってなかったけど、アタイには船に乗れって事⁉︎……ちょっとアタイには手に余る船かもね。……こりゃーアタイはエンジャーには戻らずにこのまま始めるとするかー。」


 バンズ「ピコー!ここへ来て。」

ドックに入ってくるピコ。


 ピコ「ここは?バンのドックですか?……マーデクトはどこへ?」


 ドックの様子が変わって動揺を隠せないピコ。

バンズ「マーデクトは……屋上。(指差す仕草)……ここは元々地下にあった床だよピコ。」

ピコ「2階層が上下する構造でしたか。マーデクトは上に。ではここの作りかけのモノは?」

バンズ「これはアタイの船にする。名前は……まだ無い。ピコには変形して手伝ってもらわなきゃならないみたい。」

ピコ「作業指示を待ちます。バン。」

バンズ「まぁまぁ、そう急がなくていいよ。作業は明日から始めるから。まずはガルシアさんのところへ連絡して。」

ピコ「了解、バン。」


 ガルシア邸へ連絡の頃には既にバーベキューの真っ最中。


 Ann達はリビングで待機モードだったが……。


 ピコの中での優先順なのかジャンに通信を向けた。


 ジャンがピコからの通信を受信、庭先へ出て来たジャン。


 ジャン「ラムル様、バンズ様からの通信です。」

ラムル「バンズから?繋いでジャン。」

バンズoff「あぁラムル。中継作戦の日程は決まった?」

ラムル「まだだけど、どうして?」

バンズoff「アタイはこのままドック待機で構わない?外に移動が出来なくなったー。」

ラムル「バンズと母上でシューロンってのは変更無しでいいでしょ?移動出来ないってどうしたの?」

バンズoff「じいちゃんから言われてた事を実行するタイミングが来たから……。説明がややこしくなるんだけど、ドックが2階建だった。今、マーデクトは屋上に有るよ。」

ポートル「何なに⁉︎マーデクトが屋上って?」

バンズoff「だからマーデクトの乗った床が今は屋上。それでアタイは今、1階のドックでやる事が出来た訳。……お腹すいちゃった?ポートル?」

ポートル「食べてる最中だから平気(ボソッと)。」

ラムル「二階建でマーデクトは今は屋上……?」

ガルシア「バンズのドックって地下も有ったって事でしょ?ドックごとエレベーターが上がった感じよね?」


 ラムルは、ブロントが部屋に来て話してくれた事を思い出した。


 ストーリー106の一部回想……。


 ブロント「……友達のバンズは知っているかどうか知らんが、あのドックは2階層になっていてな。でも、とうとうロワートが亡くなるまで下の方には入らせてもらえなかった。あそこはまだ残っているのだろうか……。彼の全てがそのままになっているかも知れん。博士はそれを伝えられたのだろうか……。」


 別回想……。


 ラムル「バンズに話してあげたいわ。」

ブロント「いやドックの話は、それとなく彼女から話してもらうのがいいんじゃないか?知っていたらだがね……。」


 回想終わり……。


 ラムル「分かったわバンズ。そっちに行けば分かるって事ね。」

バンズoff「そーそー。来れば分かる。作戦開始前に皆んなでここに来るといいと思う。ビックリするから。じゃお楽しみにー。」


 バンズの通信が切れると、


 ポートル「ややこしい話だけど、今はお腹空かないからっ!」


 ジャンはそそくさ(?)とリビングに戻っていった。


 ラムル「父上が話してくれた事を思い出したの。博士のドックの下にはまだ入らせてもらった事が無いって。」

ルイス「ブロントが?それは博士が何か大切な物を隠していたとかかしら?」

ポートル「マーデクトの乗った床ごと上に上がって、下にあったスペースが1階に上がったって事よね?」

ルイス「床ごと上がって来たならそれなりの大きさの物?」

ラムル「メカニックだった博士が地下で何か作ってたって考えるのが納得いく話だわ。バンズの話すテンションの高さを考えても、それとなくうなづけるでしょ?」

ポートル「じゃ、明日は皆んなで見に行っちゃう?」

ラムル「バンズのところはマーデクトが有るから、カーラントで行ったら着陸出来ないってばー。」

ガルシア「中継作戦の事も考えて、2度手間にならない様動きましょうか。」


 ディゾルプ。



ストーリー131:ドック見学へ


登場人物

ガルシア、ルイス、ラムル、ポートル、フライ、(ジャン、カウル、ジック、ピク、ソディナ台詞無し)、バンズ(声のみ)


 翌朝のリビング。

ガルシア邸に残っているピクは給仕が済んで他のAnn達と待機モード。

そして面々は…。


 ガルシア「私はフローターでバンズのドックに向かう。ソディナ、ポートル、フライ、ピクね。ルイス達はカーラントで家まで戻ってからフローターでバンズのドック……。」

ポートル「あ、ガルシアさん。カーラントはそのまま向かってOKです。今マーデクトを家のドックに戻しますから。」

ラムル「あ、そっか。マーデクトは遠隔操縦で飛べるんだったわね。」

ポートル「うんうん。今日はここに呼ぶんじゃなくてドックに戻すだけ。フライ?ピコに連絡して。」

フライ「了解、ポートル様。……はい。繋がります、どうぞ。」


 ポートル「バンズ?聞こえる?」

バンズoff「今作業中―。どしたの?」

ポートル「マーデクトを家に戻すから、そこにカーラント着陸で構わない?」

バンズoff「アタイは構わないんだけど、エレベーターの操作盤探さなきゃならない。しょうがないなぁ、操作盤探し優先するから、カーラントで来ていいよ。ラムル?側にいる?」


 マーデクト遠隔操作の端末を取り出し操作するポートルの画。


 ラムル「カーラントに位置登録しなきゃ、でしょ?」

バンズoff「Ann達が知ってるだろうからお願い。……あ、カーラントならマニュアルで飛んできちゃう?ルイスさんなら直ぐに到着出来そうだよー。」

ラムル「バンズ!母上がその気になるじゃない。ダメよ。オートで向かうわ。ガルシアさんはフローター。」

バンズoff「あ、こっちは今マーデクトが動いたよ。……じゃ、カーラントは着陸許可しとく。フローターは庭先に着陸で。それでは気を付けてー。」


 バンズと通信が切れると、


 ルイス「別に私が操縦でも構わないわよ?ラムル。」

ラムル「(汗)……。任せます、母上。……」


 ガルシア「マーデクトは無人でも飛ぶのねー。すごーい。便利なのねー。」

ラムル「なんか、ガルシアさん、最近ポートルと被るんですが……。」

ガルシア「そぉ?似てきたって事?」

ルイス「ガルシアは昔から影響受けやすいのよっ。」

ガルシア「じゃあ、ルイス達をカーラントまで送ったら、私達はフローターで先に出るわ。ピクをお願い出来る?。」

ラムル「はい。それじゃあカーラントに私、母上、ピク、ジャン、カウル、ジックで向かいます。」

ガルシア「バンズのドック見学が済んだら、また中継作戦の話を煮詰めましょう。……ルイス、ラムル、行きましょうか。」


 ガルシアのフローターが上昇飛び去る画。

ディゾルプ。


 ガルシア「じゃあルイス。向こうで会いましょ。」


 カーラントの横から上昇飛んでいくフローターの画。


 ルイス「さてラムル、私達も行きましょうか。」

ラムル「ジャン、カウル、ジック、ピク。入って。カウルとピクは壁に寄って待機ね。」


 カーラントのハッチから中に入る面々の画。


 ガルシア邸庭先でポートルとソディナ、フライが待っている所に着陸の画。


 変わって画面はガルシアのフローターが飛び去る画に。


 後部シートの2人の画に変わり、


 ガルシア「さて、カーラントが追い越すのは直ぐね。」

ポートル「私、バンズのドック見学が楽しみー。」

ガルシア「博士が隠してた物って何かしらね?ブロントも入れなかったスペース……。」


 ポートル「あーっ。カーラント!……やっぱフローターよりは早いわ。ちょっとこっちは到着遅れますね。……あ?……ガルシアさん?」

ガルシア「ソディナ、交代よ。ポートル、ソディナにベルト締めてあげて。」


 コクピットのソディナと操縦を交代したガルシア。


 ガルシア「さぁー!行くわよ!」

ポートル「きゃ〜〜〜!ガルシアさーん。」


 マニュアル操縦でカーラントを追うフローターの画。


 ディゾルプ。

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