ストーリー81~84

ストーリー81:ルイス、我慢の限界


登場人物

ルイス、ガルシア



 ラムル達が水の惑星ほし(地球)を出発した位の時節。


 ルイスは心配をしながら過ごしていたわけだが、居ても立っても居られなくなったのか、ガルシアと連絡を取り、ラムルのフローターに乗ってエンジャー=ガルのガルシアのもとへ向かっていた。


 ルイス独り言off「ガルシアに会って話でもしないと、ラムルが気になり過ぎて胸が張り裂けそうよ。ブロントには黙って出掛けたけど、フローターが無いのが分かれば出掛けたと思うでしょ。」


 コクピットのルイスの向こう、外の景色が流れる画。


 エンジャー近くになってガルシアから通信が入った。


 (パネルのモニターの画で可。)

ガルシアoff「ルイスー?ガルシアよ。IDのセットしたわ。オートでここまで来れるから。待ってるわよ。」

ルイスoff「ガルシア。急にごめんなさいね。もうエンジャーに入ったわ。まもなく行くから待ってて。」


 画面はガルシア邸に駐機するフローターから出て来るルイスの画。


 画面がガルシア邸ドアの外で待つガルシアに映る。


 手前からフレームinしてくるルイス。


 ルイス「ガルシアー。また来ちゃったわー。」


 手を振って返すガルシアの画。


 画面変わってリビングに入って来る2人。


 ガルシア「まぁ座ってー。」

ルイス「もー家に1人では居ても立っても居られなくなってさ……。ブロントにも話さず出てきちゃったわ。」

ガルシア「ラムルと話したりしてないの?この間の調べ物の話とか。……あれは話すと長くなるわよー。」

ルイス「色々調べてたのね。でもその話は後でいいわ。いずれまたラムルと話せるでしょ。今日はそうじゃ無いのよガルシア。あなたにしか話せない……だから来たの。あなたに会ってじゃなきゃゆっくり話せないからと思って。」


 ガルシアは飲み物(紅茶のようだ)をトレーに乗せ持ってきた。


 ガルシア「落ち着いてよルイス。ここではリラックス出来るでしょ。それに、あなたがここへ来たなら、私にも話が有るけど?……どっちを先にする?」

 カップを手にしたガルシア。ルイスにも勧める。


 ルイス「はぁー。ありがとう。」

ルイスもカップを手にして、

ルイス「私から話させて。もう胸が張り裂けそうな気持ちよ。」


 ディゾルプ。



ストーリー82:母の心配


登場人物

ルイス、ガルシア、ミクラット内部に格納中のジック、同ソディナ



 ディゾルプから。


 ガルシア邸リビング。やっとルイスの不安が伝えられた。


 ルイス「水の惑星ほし、遠い所に有る惑星。ラムルはそこへ行くと言って、友人達と出掛けたの……。ここから探知出来ない遠い所よ。ラムルとは無茶しないでって約束して送ったけど、万が一何か有ったらどうしようガルシア。」

ガルシア「私には何やら掴み所が無いよ。何故ラムルは急にそんな遠くまで出掛けなきゃならなくなったのよ。」

ルイス「ラムルはRJ計画を実行するって言って、惑星ほし探しを始めたわ。ラムルは、あの子達3人は、偶然水の惑星ほしを見つけてしまった。水の惑星ほしは、若い頃にブロントがRJを実行した場所。ラムルはブロントから、多くの水を湛えた青き惑星ほしって聞かされていて、興味が有ったのね。惑星ほしの姿が見たいって言い出したのが事の発端。水の惑星ほしの衛星軌道まで見に行ってしまった。ノアーナに戻って色々調べてブロントに伝えた。ブロントはラムルの無茶な行動を心配してか宇宙船ふねをロックしてしまって……。友人3人と計画したんでしょう、ポートルの宇宙船ふねをカスタマイズして準備してたのね……。」

ガルシア「ここに来た時には水の惑星ほしの事は話してないけど……。やるわね。かなりの行動派じゃない。」

ルイス「呑気な事言わないでよ。確かめたいって何の事かさっぱりだし上陸までしたらどんな危険に遭遇するか……。あーガルシア。どうすればいいの?このまま戻って来なかったら……ああラムル……。」

ガルシア「ルイス、落ち着いて。あなたの若い頃を思い出してみたら?……あなたのお母さん、どんなに心配していたでしょうね。でも、いつもあなたを見て性格まで分かっていて……。当然信じていたと思うわ。ラムルのことは信じて待っていたら?必ず戻ってくるわよ。友人やAnn達も一緒でしょ?心配ないわルイス。」


 ルイスは、若い頃の自分を思い起こし、自分の母親を思い起こし、気持ちが少し落ち着いたようだ。


 ルイスは大きくため息をついたが十分リラックス出来たようだ。


 ルイス「ガルシア。ここへ来て、あなたの顔を見て、話が出来てホッとした。……もう大丈夫。落ち着いたわ。」

ガルシア「さ、もう一杯いかが?飲み終わったら今後は私の話をしましょ。」


 ルイスとガルシアは、若い頃のルイスの母親の話が出た事で、当時の話をしながら追加のお茶を楽しんだ。


 カップを乗せたトレーを戻してきたガルシア、リビングに入るなり


 ガルシア「じゃあ私の話にしますか。」


 ドックに向かう廊下を歩く2人。


 ルイス「ラムルから聞いて驚いたわ。あなたからは何も知らされなかったじゃない?」

ガルシア「だってあの時は急すぎたよ。いきなりケイドとジックを解体するだなんて……。」


 メインルームに照明が点く。そして奥のミクラットにも……。


 ガルシア「ルイス、ミクラットに入りましょ。話は中でよ。」


 ルイスは緊張からか、ついついガルシアの腕につかまってしまう。


 ミクラットの開いたハッチから入る2人

 ルイスはまだガルシアの腕を掴んでいる。


 ミクラット内メインルーム。


 ガルシア「ルイス、いつまで掴まってるつもり?どお?久しぶりに入って。」

ルイス「ええ。懐かしい。今の事のように蘇ってくる。あなたとここで過ごした時間もたくさん有ったわ。」

ガルシア「ちょっと待ってて、ミクラットの主電源入れてくる。ルイス、声かけたらここの電源入れて。」


 サイドにある主電源を入れていくガルシアの画。


 ガルシア「いいわ、ルイス。」


 ルイスがメインルームの中央の電源を入れる画に。


 ルイスに寄るガルシア、別のスイッチを入れる。(ラムル達の前でも見せたもの)


 中央では塊がせり上がる。ハッとするルイスの表情up。


 ケーブルやハーネスに繋がれたソディナだ。


 ルイス「そ、ソディナね。久しぶり……。」

ガルシア「……シャットダウンしたまま。話せないよルイス。」

ルイス「そうね……ちょっと残念だけど、仕方ないわね。」

ガルシア「さ、奥へ行くよ。」


 ガルシアはルイスの肩に手を添えて促した。


 ラムル達とのシーンで歩いた廊下。


 1番奥の扉を開けるガルシア。


 中へ入るルイスの後ろ姿。照明が点くと、

ガルシア「推進機関の真ん中。」

歩いていく。


 そしてボックスの扉を開けるガルシア、さぁ、と手だけの仕草。


 ルイスはゆっくり近づき、ジックの頬(?)に手を添えた。


 ルイス「……ジック。……久しぶりね。……良かった、ここに居て。」

ルイスはしゃがみ込んでしまう。


 ルイスの肩に手を掛けるガルシア、

ガルシア「ジックも……シャットダウンしている。話せない。」


 立ち上がるルイス、ボックスの扉は開いたまま。


 ガルシア「ジックは昔のままだよルイス。あなたがあるじのままここに居る。」


 ルイスはガルシアの腰に手を掛けて、2人廊下を歩いて行く。


 2人、メインルームのシートに座る。


 ガルシアは中央の大きなモニターテーブルの主電源を入れた。


 ディゾルプ。



ストーリー83:ガルシアの気遣い


登場人物

ルイス、ガルシア、ソディナ、ジック



 ソディナを乗せたケースの塊にも電源が入る画。


 次には推進機関室のジックにも電源供給されている画。


 ガルシア「さてっ、と。ソディナ?起きた?私よ、ガルシアよ。」

ソディナ「こんにちは。ガルシア様……。少しお待ちください。時間調整が済んでいません。……。」

ガルシア小声「ジックにも電源供給されてるはず。ソディナと同じ行動するわよ。」

 タイムラグで調整に時間が掛かっているのを2人は微笑みながら眺めていた。


 ソディナ「お待たせしました。」


 シートの2人に生体分析の様子のソディナ。


 ソディナ「ガルシア様。お久しぶりです。ずいぶん時間が経過していましたので……。」

ルイス「ソディナ?こんにちは。」

ソディナ「ルイス様。またお会いできて光栄です。」

ガルシア「ちょっとそのまま待機してて。……さ、ルイス。急いでジックのところへも行きましょ。」


 ジックのボックス。さっきガルシアは扉を閉めずに出て来ている。

ガルシア「ルイス、話せるよ。……さぁ。」

ラムル「え、ええ。……ジック、ジック起きてる?」


 ジックに電源供給されてるのは見ても分かるが返事がない。


 ガルシア「ルイス、昔と変わらないルイスでいいんだよ。」


 ジックの見た目、生体分析中の画。ルイス、ガルシアを確認した。


 ルイス「時間調整が出来ていない⁉︎時間経過が理解出来ていないのかもガルシア。」しゃがみ込んでしまうルイス。


 ガルシアはメインルームのソディナに向かって大声で、

ガルシア「おーい、ソディナ。いたずらはその変にしなさい。ジックと何か企んだだろ?分かってるぞ!」

ジック「ルイス様、大変ご無沙汰しておりました。再会できて嬉しいです。」

ルイス「はっ。ジックーぅ。あなたね、ジックなのね。」

ジック「もちろんです。生体分析の確認もしました。ソディナが時間調整に手間が掛かっている芝居をして驚かせたらと提案がありまして……。」

ルイス「それで黙ってたのね!ガルシアも分かってたわけ?」

ガルシア「ルイス、この子達は昔と変わらないよ。時々いたずらを仕掛けてきたでしょ?忘れたの?……それにね、今はソディナとジックは常に一体なの。メインルームで私達とソディナが再会したのはジックも既に知っているのよ。」

ルイス「そうだったんだ。それでジックはいたずらを仕掛けた……と。……ジック!ここへ来なさい!」

ジック「ルイス様。今は動けません。いたずらは反省します。」

ルイス「そっか。今はミクラットの機関……。」

ガルシア「機関じゃない。名操縦士ジックは、推進機関から操作系統まで全てをコントロールしているのよ。一部分みたいな言い方はジックに失礼ね。」

ルイス「ごめん、ジック。ハグしたい気持ちよ。話が出来るだけで幸せなのに、ジックにいたずらまで仕掛けられるんですもの。こんなに感激した気持ちはないわ。」


 ガルシア、寄ってきて、

ガルシア「ジック、また会う時まで少し寝てていいからね。」


 ボックスの扉を閉じるガルシア。2人はメインルームへ。


 ルイス「ねぇソディナ?あなたとジックでよくもいたずらしてくれたわね!……今度会う時はハグして迎えてあげるから!」

ガルシア「ソディナ、また会う時まで休んでいいからね。」


 ソディナのケースが収納される画。


 ガルシアはモニター画面を操作し始める。


 ガルシア「水の惑星ほしってのはどの方向?座標は聞いて無いの?ブロントと話した事は無い?」

ルイス「何も……。はっ、ブロントが言うには、航行しやすいって話してたわ。障害が何も無かったって。」

ガルシア「ソディナ、ノアーナの周囲のマップを出して。」


 ノアーナや衛星リターナのマップが出る。


 ガルシア「ここの恒星系まで映して。」

ルイス「まさかラムル達の船を探すの⁉︎」

ガルシア「違う。探せないからマップを見てるのよ。……ソディナ、ここの恒星系の隣の恒星系まで出る?他に障害物の無いルート。ジックに探させて。」


 ソディナとジックのマップの2画面になる。


 ルイス「ジックも調べてるのね?」

ガルシア「ジックのあるじはルイスのまま。だから指示はソディナを介してるの。」

ルイス「カスタマイズが必要ね。」


 2画面のモニターから1画面に変わった。


 ガルシア「ルートらしき空間が見つかった。……ソディナ、入力して有るIDで最新のを出して。」


 バンズのドック、バンズの船(まだ登場していない)、ポートルの船。IDと持ち主、フローターか船かの種類が表示された。


 ガルシア「これね、ポートルの船、マーデクト。ソディナ、見つかった広い空間に送信準備。」


 ルイスは固唾を飲んで見守る。


 ガルシア「よし、OK。……こちらはノアーナ星エンジャーのガルシア=オフェイル。マーデクト応答願います。……お願いソディナ、10秒毎に送信を続けてみて。」


 ルイスに向き直ると、

ガルシア「ルイス、これで応答無しなら戻るのを待つしかないわ。私にはこれが限界よ。」

ルイス「ありがとう。なんだか荷が降りて身体が軽くなった気分。感謝するわ。これからはジックにも会いに来たいわ。」

ガルシア「マーデクトが探知してくれれば良いんだけど……。しばらくここに居ましょ。お茶でも持ってくるわね。」


 ミクラットのハッチを出るガルシアの画でfade-out。




ストーリー84:大統領令


登場人物

グラン、連邦国大統領offのみ、ニュースキャスター



 連邦軍総督室。グランのデスク正面の画。

デスクサイドの頑丈なボックスがある。連邦国大統領直通ホットラインになっている。


 グラン「大統領、グラン=ジョリーです。軍の最高機密機関、機密部門、それに関する施設建設の許可をたまわりたくお電話致しました。」


 電話口から大統領の応答。

大統領off「グラン君、急な話だが用件の理由はなんだね。議会に通すにはそれなりの準備が必要だぞ。」

グラン「早急に。議決の結果迄待てないのです。お願いします。」

大統領off「何を急いでいる。理由を述べたまえ。」

グラン「昨今の反逆軍の無差別攻撃と、要人暗殺の為。連邦国の主要人物もいずれ狙われます。対抗策を早急に取り上げなければならないのです。」

大統領off「君が議会に出れば十分賛成を得られるだろう。君らしい手続きではないな。」

グラン「申し上げた通り、機密機関として、少人数による構成で活動します。最高機密に置きたいからこそ、ここを使って大統領にお願いしているんです。お願いします。大統領令としての発効を……。」

大統領off「私達のセキュリティにまで脅かす事態なのかね?反逆軍には船舶も航空機もないはずだが……。」

グラン「ただのテロリストに収まっているとは考えにくい。時間を与えてしまえば元の勢力に拡大するでしょう。軍は連邦国の主要人物の命も守らなければならない。お願いします大統領。」

大統領off「ニュースに取り上げられていいのかね?機密機関設立許可、反逆軍には筒抜け、機密もなにも無くなるだろう。」

グラン「そこは抜かりなく。設備全てを機密機関として発足するのですから。」

大統領off「自信の程は、その後見せてもらおう。議会に反発されるのは私だぞ。それを忘れないでくれ給えよ。」

グラン「ありがとうございます。感謝の念に耐えません。また報告をお待ちください。」


 ホットラインを切るグラン。


 グラン独り言off「大統領がニュース発表後直ぐ取り掛かろう。」


 3大陸の主要都市部の空中TVモニターから緊急速報が流れる。


 ニュースキャスター「大統領邸宅より緊急速報が発令されました。われわれマスコミへのホットラインでの大統領の音声でお伝えします。……大統領は、連邦国は、連邦軍に対し、最高機密機関の設立と、その関連施設建設を承認しました。大統領令への署名の状況をお伝えします……。」

 キャスターの画面から、大統領令への署名をする大統領の画に変わる。


 ニュースを総督室で見ていたグラン、辞令を書き上げ、秘書官を呼ぶ。

グラン「入ってきてくれ。」


 デスクの前に立つ秘書官。


 グラン「この辞令を局内の要所に掲載してくれ。……あ、それから、ここに本人を呼んでくれないか。」

秘書官「かしこまりました。」


 出て行く秘書官。Fade-out。

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