第465話 水の国オーズレイク 1 到着王都オーズレイク様
「……それで、これから向かうのは水の国オーズレイクというところなんだな」
「はい師匠、花の国の王都フルフローラからですと、特急の魔晶列車で西に向かうこと八時間。国土のほとんどが湖、池、沼で占められた国となります」
俺の問いに商売人アンリーナが答えてくれたが、なるほど、花の国フルフローラの西隣にあるのが水の国オーズレイクになるのか。
特急の魔晶列車で八時間、各駅停車の普通の魔晶列車だと二倍の十六時間かかる、と。
午前十時発だから、夜十八時には着くのかな。
ああ、さっきまでのエロ寸劇騒動のことは忘れてくれ。
なにせ話が一つも進んでいないんでな。
アンリーナに首筋舐められてちょっとエロい声を出していたロゼリィは自分の状況に気が付き、真っ赤な顔でロイヤル部屋備え付けのベッドに潜り込み布団かぶって出てこない。
ちょいエロラブロマンスの主催者兼男優役だったアンリーナは、特に恥ずかしがることもなく平然と水の国オーズレイクの説明を始めた。
さすが世界的企業の娘さん、そのメンタルの強さは半端ねぇっすな。
「小さな街はたくさんあるのですが、今回はイベントが開かれる水の国の王都であるオーズレイクに向かいます」
水の国の王都か。
一体どんなところなんだろうか、ワクワクするぜ。
「王都オーズレイク。一言で表現するならば、湖に浮かぶ都市、でしょうか。まぁ今向かっているわけですし、言葉で聞くよりも実際見たほうが早いですわね」
湖に浮かぶ都市! それはすごい興味がある。
なんとも実に異世界じゃないか。
そういやだいぶ前、初めてペルセフォス王都に行こうとしたときにどこかの駅でそういう写真見たな。
「オーズレイクはよく霧が発生してさ~湖が雲海で覆われたみたくなることもあるんだよね~。そうなるとたま~に地面と湖の境目が分からなくなって湖に落っこちる人が出てきてさ~。霧が濃いもんだから救助も困難で~間に合わなくて亡くなる人もいるから気を付けてね~。あと~姿は見えないのに声だけが聞こえてくる現象とかの怖~いことも~あっはは~」
俺がちょっとこれぞ異世界、と冒険心と妄想を膨らませていたら、水着魔女ラビコがニヤニヤ笑いながら恐ろしいことを言う。
こいつ……人がせっかく楽しい想像をしていたってのに……しかし思い返してみたら、ラビコってよくこうやって脅してくるよな。
フルフローラのときも死の国フルフローラの話をしてきたし。
やっかいなのは、ラビコの言う恐ろしい話は本当なことが多いこと。
ラビコは十年近く世界を巡ったそうだから、その目で見て、その体で体験したことを言うんだよなぁ……。とりあえず霧の日は気をつけよう。
姿は見えないのに聞こえてくる声って、マジで恐ろしいんですけど。あれか、湖のほうに誘ってくるとか……あー怖ぇ……。
つか、こうやってまんまと怖がるからラビコが面白がって毎回やってくるのでは。
列車は西へと進んでいき、花の国フルフローラを越え水の国オーズレイクに入る。
確かにこの辺りから景色が一変し、見える範囲ほとんどが水面。
大きな湖だったり沼だったりの間を縫うように列車は走っていく。たまに建物が見えてきたりするので人は住んでいるんだろうが、規模は小さめ。
セレスティアやペルセフォスに並ぶ大国と言うわりには栄えている感じが全くしないんだが。
「なんか……ケルシィに近い雰囲気を感じるんだが……」
「ん~? ああ、オーズレイクは住める場所が限られているからね~。基本王都周辺しか大きな街はないかな~。そして王都は別世界ってぐらいの規模と人口だね~」
以前行ったお酒の国ケルシィ。
そこはかなり寂れた雰囲気で、栄えている感じはしなかった。ここも同じ空気を感じたのだが、ラビコ曰くさすがに王都は違うのか。
ま、行きゃあ分かるか。
「王都には世界一と言われる大きなドッグがあって~小さな漁船から巨大な軍艦まで作っているのさ~。水の国オーズレイクの世界最強を誇る海軍はマジで半端ないよ~あっはは~」
世界最強の海軍! それはすげぇ、男の俺にはたまらんロマンを感じるワードだ。
「我が自慢の船、グラナロトソナスⅡ号も今から向かうオーズレイクにある会社に作ってもらいましたわ」
アンリーナが俺達も乗り慣れた紅く塗装された船、グラナロトソナスⅡ号の写真を見せてくる。
なるほど、アンリーナのあの大型高速魔晶船はオーズレイク製なのか。
「さあ皆さん見えてきましたわ! あの地こそ私と師匠の愛を確実のものとするイベントが開かれる、水の国の王都オーズレイク!」
アンリーナが列車前方を指し、興奮気味に言う。内容は全員スルーした。
花の国の王都フルフローラを出て八時間後の夜十八時過ぎ、俺達は水の国オーズレイクに到着。
その王都であるオーズレイクは、湖に浮かぶような立地の実に異世界っぽい……ってあれ? 普通に陸地にある街じゃねぇか。
俺の目がおかしいのか、普通のよくある栄えた街って感じに見える。
大きなお店やマンションみたいな巨大な住居が密集して立ち並び、向こうの景色が見えないぐらい。これは人口多そうだぞ。確かに雰囲気はペルセフォス並に活気がある。
その……湖、どこ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます