第393話 俺の反省&学習と豪華お食事会様
「いいですか、そういう本に頼らずともあなたは周りに……」
夕方、お風呂後の自由時間が終わりカフェジゼリィ=アゼリィに全員が集まる。
水着魔女ラビコが普通に俺のエロ本探訪記を皆に面白おかしくご報告。
軽くロゼリィにお説教を喰らい、俺色々と反省。
まず中途半端に一人の時間を作ったのがいけなかった。
日の高い昼間、皆がお風呂に入っている間のちょっとした時間に動いたのが敗因。
やはり聖地に赴くのに正しい聖なる時間は夜。
皆が寝静まったときがベスト。
暗闇に紛れ、音もなく聖地に入り、選び放題のパラダイスだが迷いを捨て短時間で決断。運命の一冊を右手で引き抜き対価を払う。
これだな。
今度隠密騎士リーガルに暗闇に紛れる極意を聞き、黒い服を買っておこう。
しかしリーガルには今回悪いことをした。
普段からあいつがサーズ姫様のお尻をこっそり見ていることがとっくにバレている、とラビコに言われて白目剥いていたな。
自業自得ではあるが、バレていないと思っていたことがとっくにバレていたショックは結構でかいだろう。
つか結局王都のエロ本屋がどこにあるのかすら分からず仕舞い。
この辺だよと、ピンクのホテルのとこで止まってモメていたらラビコに見つかって御用になったし。
まぁホテルの周辺にあるって分かっただけでも一歩前進か。
あいつの犠牲は無駄にはしない。
今度再チャレンジだな。
「先生ー! お迎えに来ましたー!」
お説教後、カフェの店長であるシュレド、ローズ=ハイドランジェ側の社員兼パティシエであるナルアージュさんに集まってもらい今後の対策会議。
今までの簡単な売上や人気メニューの推移データを見せてもらい、今後の季節限定メニューやお客様への還元キャンペーンなどを話し合っていたら、仕事上がりっぽい騎士ハイラが笑顔でカフェに現れた。
「お、おおハイラ。そうか、もう今日のお勤めは終わったのか。お疲れ様だな」
気付いたら時刻は十九時過ぎ。
王都の街に明かりが灯り、飲食店としてはお城勤務を終えた人達が多く来てくれる、お昼に次ぐ混雑タイム。
俺、ロゼリィ、ラビコ、シュレドにナルアージュさんで話し合い、お店には今日初めて来たクロにも外からの印象などを聞き意見をまとめた。アプティは俺の後ろで紅茶にアップルパイセットを無表情ながら嬉しそうに食べていたな。
短時間お風呂でちょっと機嫌の悪かった愛犬ベスも、シュレド特製の犬用メニューで機嫌を直してくれたっぽい。
まぁ混雑する時間だし、これ以上はシュレドにナルアージュさんというメイン料理人を拘束出来ないか。丁度いい、このぐらいにしておこう。
基本この二人は優秀だから、全部任せて何の問題もないしな。
スタッフさんに案内され、会議の場であった三階の来客用個室に来たハイラの頭を撫でる。
「ああーこれですこれです……これが私の夢見る愛する先生との新婚生活の一端なんですぅ。やっぱりいつでも会える距離に先生がいてくれるのは安心感が違います! そして愛する二人はこのままお互いを求め合うように……むぎゅ」
急に興奮しだしたハイラが俺に抱きついてきたが、ラビコがそれを引き剥がす。
「何の用だハイラ~。夕飯でも食べに来たのか~?」
「うう、ラビコ様が意外にも腕力が強いですぅ……あ、そのお夕飯のお話含めなのですが……」
ハイラが肩掛けカバンから何やら質の良い紙を取り出し渡してくる。
「そういやこの後ソルートンに帰るのか王都に泊まるのか決めていなかったな」
カメラを手に入れたデゼルケーノからの帰り道、魔法の国の王族であるクロの処遇をどうするかサーズ姫様に相談しに王都に降りたが、なぜかクロが俺の側にいることになった。
俺のもう一つの目的、王都でエロ本を買うミッションは失敗。
隠密リーガルが心にちょっと傷を負い、俺は無傷という結果に。
お城の前に作ったカフェの状況も何の問題もなし。
あまりにカフェジゼリィ=アゼリィの居心地がよかったので、夜の便の魔晶列車で帰るのか、王都に一泊して朝の便で帰るのかすら決めていなかった。
「ま~王都の記念日で街中混雑しているし、もうこの時間は安い宿泊施設は満員だろうし~。いつものお城に泊めてもらうのが一番じゃないかな~。さすがにみんな疲れているしね~」
ハイラが持ってきたのは、お城で開かれる聖なる祭典のお食事会のお誘いの手紙。
なんとサーズ姫様のお姉さま、現国王であられるフォウティア=ペルセフォス様から直々のお誘い。
これは断れないだろう。
お食事後はいつものお部屋を空けてありますので、どうぞお城にお泊り下さいとありがたいお言葉をいただけたので、それに甘えようかと。
ラビコも言っているが、もう超高額のホテルしか空いていないだろうし、デゼルケーノからの数日に渡る魔晶列車の移動で疲れもたまっている。
そろそろちゃんとしたベッドで寝たいところだな。
「うわぁ、子供のころ見た絵本の世界みたいです。本当に私みたいな宿屋の娘がいていいのか、不安になりますね……」
招待されたのはお城のホール。
本当に大きな部屋で、吹き抜けで二階もある規模。
国中の著名な方や権力者が招待されているようで、会場は豪華に着飾った人でいっぱいだ。
ロゼリィが言うように、絵に描いたような上流階級様の豪華絢爛な世界。生粋の庶民である俺には入り込みにくいな。
さすがにドレスコードがあるらしく、お城からスーツっぽい服を借りたぞ。
女性陣もきらびやかなドレス姿。
「あ、あまり見ないで下さい……恥ずかしいです」
ロゼリィはお美人様なうえスタイルバツグンなので、こういう豪華な服着たら高貴な血筋の人に見えるな。胸元の大きく開いた白いドレスがとても似合うなぁ。ちょっと恥ずかしそうにしている感じが最高。ああ、写真撮りてぇ。
もちろん前かがみで胸を強調したポーズな。
「……頭が重いです、マスター」
アプティもさすがにバニーから着替えてもらい黒のドレス姿。アプティは背が高いので、何を着ても似合う。着付けの人に気に入られたらしく髪型をいじられ、いつものロングストレートではなくポニーテールのように結われている。
造花とか金とか宝石が散りばめられた髪留めなどをあしらわれ、見た目は無表情な黒の女王様。蝶のような仮面つけて、鞭を持つと最高かも。
「ああ、動きにくいったらないな。股がスースーするしよぉ。なぁキング、さっさと飯食って部屋行こうぜ、なーなー」
クロは正真正銘お姫様なのだが、ヤンキーが着飾ったようになっているな……。黒地に金の花やらツタの模様が入ったドレスなのだが、俺のイメージは日本の派手なスカジャンきたヤンキー。
サーズ姫様が一応フォウティア様にクロのことを伝えたのでこの二人はクロの正体を知っているのだが、他の人にはあまりバレたくないらしく、クロが俺の背中にビッタリくっついている。
お待ちかね、俺の見た目は──どう見ても背伸びした学生。
鏡に映る我が姿は、高校の入学式のときのそれ。体と服が馴染んでいない感じ。ただの黒いスーツっぽい服なのだが、それすら着こなせないのか、俺は。
ああ、ベスは控室で待機してもらっている。吼えられても困るしな。
ハイラは騎士なのでさすがに外向けのこの会には参加出来ず、制服で場内を警備中。
不思議と俺の周りだけをぐるぐる回っているが、衛星か何かなのか。
「あっはは~社長似合ってないな~いつものオレンジの服のイメージが強すぎて違和感バリバリ~。ま、私の横にいれば不審がられないから大丈夫さ~あっはは~」
ラビコが俺の腕に絡み笑うが、いつものロングコートに水着ではなく、紫の豪華なウエディングドレスみたいな恰好。
こいつがこんな着飾ったとこ見るの初めてじゃないか? ああ、はっきり言って超綺麗。無垢な少年の顔が真っ赤になるぐらいの、な。
髪もきちんと整え豪華な髪飾りで彩り、なんだかいい香りもする。女性であるロゼリィが見惚れているぐらい、いつもとは違うラビコ。
「あれれ~社長の顔が真っ赤だぞ~? これは水着より効果あるのかな~あっはは~」
語り調子はいつものラビコなのだが、綺麗にドレスアップしたその姿は普通に目が奪われる。水着より布面積は多いはずなのに、なんでだろうか。
そのラビコが登場した途端会場に歓声が溢れ、注目が集まる。
「おお、ラビコ様がドレスを……!」
「お美しい……長生きはするものだ」
「きっとお見せしたいお方がいるのでしょう。なんと羨ましい」
周りの人も驚いているし、やっぱラビコが着飾るのは珍しいんだろうな。お世辞抜きでマジで綺麗だぞ、ラビコ。
「ほう、ついにそのドレスを着たのかラビィコール」
そこにサーズ姫様がニヤと笑いながら登場。
これまた豪華な青と白のペルセフォスカラーのドレス。うーん、お美しい。
「昔こういう場で着てもらおうとわざわざ特注で作ったのだが、こちらの言うことも聞かずいつも水着で現れて困っていたが……いや嬉しいよラビィコール。だがそれはとある決意の現れだろうか」
サーズ姫様がラビコの前に歩み出てチラと俺を見る。
「ふ~んだ。今まではこれを着る必要を感じなかったからね~。でも今は状況が変わったかな~。利用出来る物は全部利用してでも欲しい物が出来てさ~、絶対に負けたくない相手も動き出しているし~」
ラビコがサーズ姫様を笑顔で睨みつける。怖いぞ……。
なるほど、どうりでレンタルの割に随分ラビコの体にフィットしているなぁと思ったら、過去に特注で作ったものだったのか。そりゃあ専門の人が綺麗に見えるように作っているんだ、俺だって目を奪われるってもんだ。
いやまぁ元のラビコが美人さんってのもあるがね。
「はは、いいぞ。それについては私も同意見だ。どんな手を使ってでも欲しい物がある。私も選ばれるのをおとなしく待つ女ではなくてな。こちらも全力で行かせてもらうぞ。そうだな、どうだろうお互いの健闘を祈ってスタートぐらいは平和的に握手など」
サーズ姫様が負けじと嫌な笑顔でラビコに握手を求める。
この二人、絶対仲良いよな。
「ぶっふ~ここで握手か~面白いな~それでこそ変態姫だね~」
二人が結構強めに握手しあい、謎の健闘を祈り合う……いや睨み合う。なんだか知らんが、その二人に挟まれた俺はどうすればいいんですかね。
「こんばんわ。おや、お取り込み中ですか? サーズ、その戦いは後になさい。ラビィコール様とお仲間の皆様、ペルセフォスの聖なる祭典、楽しんでいって下さいね」
そこに豪華な衣装を着た国王フォウティア様が登場。
さすがに現国王でありお姉様、妹であられるサーズ姫様を一瞥で牽制し、いい笑顔を俺に向けてくる。
俺が慌てて頭を下げると、フォウティア様がテーブルに並んでいる豪華な料理を指す。
「ふふ、カフェジゼリィ=アゼリィさんには及ばないかもしれませんが、うちの料理長があなたのお店に感銘を受けて独学で勉強中なんです。よろしければアドバイスお願いしますね」
マジか。お城の料理長クラスもカフェジゼリィ=アゼリィに来ていたのかよ。
しかし国王フォウティア様、サーズ姫様に国王と同権力を持つ大魔法使いラビコに囲まれている状況は冷静に考えてすごいな、俺。
非公式だが、後ろには魔法の国セレスティアのお姫様クロもいるしな。
周りから向けられる、アイツ誰視線が熱い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます