第362話 火の国エキサイトツアー7 王都のカフェは大好評と進路は南へ様


 翌早朝七時とお昼に停車後、列車はスピードを上げ、王都ペルセフォスへ向かう。



 朝食は車内販売所の小さくて味の無いパン。


 それをバニー娘アプティが宿ジゼリィ=アゼリィから持ってきた美味しい紅茶で流し込んだ。


 お昼は駅の売店で買った、よく分からないカラフルな豆を煮たやつの詰め合わせ。夕飯も列車パン。



 うむ、三食とも紅茶が美味い。アプティ、よくぞ紅茶の葉を持ってきてくれた。





「ペルセフォスが見えたよ~。カフェジゼリィ=アゼリィのシュレドは元気かね~」


 水着魔女ラビコが窓から見える王都の駅を指し、以前作った支店を担当している料理人シュレドの心配をする。



 フォレステイを出て二十四時間後の夜二十二時、列車は王都ペルセフォスへ。



 数分停車後、列車は進路を西から南に変え、広大な森を迂回しながら進んでいくことになる。確か暗示の森だっけか。


 地図を見ると、線路は森の中を通ることなく、絶対近付かないように作られている。なので本当に森の膨らみ通り、大げさだろってぐらい遠回りのルート。


 なんか色んな噂がある森らしいから、余計な問題起こさない安全ルートとったらこうなったって感じだろうか。


 

「毎週報告書が届いているが、元気そうだぞ、シュレド」


 王都のカフェジゼリィ=アゼリィからは毎週簡易報告書と、毎月頭に一ヶ月売り上げ報告書が手紙で届いている。


 シュレドは相変わらず字が下手で解読に困ることもあるが、アンリーナがサポートで呼んでくれたナルアージュさんは字が上手く、報告も丁寧かつ簡潔で助かっている。


 毎週シュレドかナルアージュさん、どちらの書いた報告書が届くかでこちらの会計処理の負担が変わるほど。まぁ、シュレドは料理スキルにステータス極振りマンだからなぁ。



「売り上げ推移を見ているが、びっくりするぐらいの売り上げを出しているからなぁ。人口の差もあるだろうけど、ソルートンより王都のカフェのほうが儲けが数倍でかい」


「うっは~そんなすごいんだ~。これならさらに支店増やしてもよさそうだね~あっはは~」


 さらなる支店ねぇ。


 さすがにイケメンボイス兄さん、シュレドクラスの極上料理人はそうそう見つからなそうなんだが。


 そうだなぁ質は落ちるかもしれんが神の料理人兄弟クラスの、才能による個人の職人芸ではなく、メニューを減らしマニュアル化したどこであろうと誰が作っても同じ味になるチェーン店展開なら出来そうだが。


 なんにせよ、先の話だ。



 王都のカフェは本当に大成功で、毎日カーニバルみたいな忙しさだそう。一応こちら側、本店の指示として、儲けは半端ないからとにかく社員さんかアルバイトさんを多量に雇って乗り切れ、と返信しておいた。


 ローズ=ハイドランジェのアンリーナ側からも、ナルアージュさん以外の人員の支援を追加で頂いている。



 アンリーナのお父様が相当乗り気らしく、資金や設備に人員支援の申し出を頂いているが、マジでローズ=ハイドランジェ側も相当の売り上げを出しているんだと。


 店内で販売している化粧品系はもちろん、ローズ=ハイドランジェの本業である魔晶石を継続して買いたいという会社やお客様が殺到したとか。


 今までも充分知名度はあったそうだが、カフェジゼリィ=アゼリィでの商品展開で一気に名が知れ渡ったとか。よかったなぁ、アンリーナ。


 おかげで最近アンリーナがマジで忙しそうだけど……。



 カフェジゼリィ=アゼリィでのお給料は、王都ペルセフォス基準でも相当高いクラスを用意してあるぞ。つか払うもん払わないと、ハイレベルな人員は集まらん。


 腕に自信のあるホール経験者、厨房経験者は今すぐ王都ペルセフォスのカフェジゼリィ=アゼリィに履歴書を届けてくれ。未経験でもナルアージュさんの面接を突破出来ればアルバイトで採用する。もちろん才能次第で正社員登用の道もあるぞ。


 もう一度言おう、お給料は高い。


 俺と同じ志を持つ気高き魂の兄弟、童貞組のみんな。君達は特に優遇するので参戦を待っている。



 帰りには王都ペルセフォスに寄るので、その時に状況を詳しく聞こうと思う。





「しかし、夜の森の横を通るルートは結構怖いな」


 ペルセフォスで数分の停車後、列車は南下。



 数十分後、列車は暗示の森の横を通るルートに。


 窓から見ていると不安になるほど暗く、広大な森。人工的な明かりは一つも見えず、線路から向こうはバグって空間がないんじゃないかと思えるほど黒く暗い。



「暗示の森は昔っから不思議な噂が飛び交う森だからねぇ~。未だに森の全貌も分かっていないし~、ペルセフォスお得意の飛車輪で空から見ようにも、とある地域に入るとなんか別の力が働いて上手く飛べないどころか、墜落の危機もあるんだって~。おっそろしいね~あっはは~」


 横に来たラビコが笑うが、うっへ……なんか人外の力が働いてそうでおっかねぇ。




 暗示の森、か。


 暗示は魔法、そして森は拒絶空間。


 誰かが意図的にそうした。俺にはそう感じる。







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