第180話 異次元空間の主 4 ベスとアプティの共闘様


「横に跳べ!」




 俺はアプティ、ベスに指示を出し横に跳ぶ。


 氷の塊は俺達がさっきいた場所をものすごい速度で通過し、後方の木を次々となぎ倒し凍らせていく。





「ではこれはどうでしょう。気付いたらあなたの体は真っ二つになっていると……」


「ベスッ!!」


 女性が瞬時に俺の前に移動し青く輝く鎌を振りかぶるが、ベスが吼え額から青い光を放ちシールドを展開。


 そのままベスが鎌を受け、痛いぐらいの冷気が周りに飛び散る。




「……こいつ……ただの犬じゃない……?」



 鎌の女性はベスの動きに驚いている、今がチャンスか。


「アプティ! 魔晶石なら五個持っている! 全力で行け!」


「……マスターの許可が出ました……行きます」


 アプティが口から激しく蒸気を噴き出し、お尻にあった尻尾が大きくなり四本に増える。


 え……あれ飾りじゃなかったんかい。




 ベスのシールドに攻撃を止められている女性の真横に跳び、強烈な蹴りを放った。


 鎌の女性は右手でアプティの蹴りを受け、後方に退避。


 ほとんどダメージは見込めない。




「貴様等……」




 こいつ等がラビコの言う本物の魔王なら、俺達じゃ勝ち目なんて無い。


 虚を突いてどうにかやり過ごして……それからどうする、逃げ道もないぞ。


 しかし黙ってやられるのも悔しいじゃないか。やれるだけ抵抗してやる……ラビコとロゼリィの元に帰ることを簡単に諦めるものか。






 その後、何度か俺に向かってくる攻撃をベスとアプティが協力して防いでくれ、俺は鎌の女性の行動を観察し、作戦を考える……が、はっきり言って銀の妖弧以上に無理ゲーと分かった。


 ベスのシールドがなんとか攻撃を弾くことが出来るぐらいで、まともに受けたらシールドごと斬られそう。うまくベスが当たる角度を考え、ぎりぎり攻撃を横にずらしている状態。


 攻撃の要はアプティだが、本気モードのアプティの攻撃はほぼ効いていない。物理的に衝撃を与えているぐらいで、ダメージはほぼ無さそうだ。鎌の女性が後ろに退避する。





「くふふ……ジェラハス相手によくやるではないか。よかろう、もう一分耐えてみよ」



 魔王が笑うが、一分どころか数秒先だって危うい状況なんだぞ……!




「こんなものですか、一秒あれば消し炭に出来そうなぐらいの弱さです」


 鎌の女性がつまらなそうに溜息をつく。こっちはこれでも必死なんだよ。



「ベス、かまいたちだ!」


 ベスが俺の声に即座に反応し、鎌の女性に向けかまいたちを乱打する。その間にアプティに魔晶石を投げ、エネルギーを補給させる。


「アプティ、頼む!」


 ベスのかまいたちを鎌で振り払う女性の横に跳んだアプティが、隙を突いて今までで一番強い蹴りを放つ。


 右腕で軽く受け流した鎌の女性は距離を取ろうと、後ろに飛ぶ動作を取る。




 この人が取る行動でパターン化出来たのはこの一個しかなかった。



 女性は鎌での攻撃が常に頭にあるらしく、近づかれて直接攻撃を受けるとその距離感を嫌い、長さのある鎌の刃が当たりやすいように少し後ろに退避する。もうこれに賭けるしかない……。



「行け……ベス、シールドアタックだ!」


 俺はベスに女性の着地点めがけ攻撃をするよう指示をする。


 ベスが指示通りの場所にアタックをかけるが、そこに鎌の女性の姿はなく空振りに終わってしまう。





「ほぅら、引っかかりました。強すぎる目というのも考え物ですね。あなたのそのギラギラとした目が舐めるように私の体を見ているのがずっと伝わってきていましたよ。正直気持ち悪かったですね……!」



 背後から女性の声が聞こえ慌てて振り返った瞬間、俺の腹に重い蹴りが入る。



「ぐはっ……がは……」




 一瞬呼吸が出来なくなり、咳が出たと思ったら俺は血を吐き出していた。




 これは……まずい……。








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