第174話 さぁ、ケルシィへ! 7 捕縛され歩く白い砂浜様
「それでは船は港にしばらく停泊いたしまして、補給を取らせていただきますわ。お時間は三時間ほどでしょうか、その間は自由に島のほうに降りていただいても構いません」
船が港に着き、クルー達が物資やエネルギーとなる魔晶石の補給作業で忙しそうに動き始めた。
これは部屋でおとなしくしているか、船から降りていたほうが邪魔にならないか。
うん、そうだよな邪魔にならないように降りるべきだよな。
今から三時間ってことはあれだな、水着美女を眺めながらお昼と洒落こめるんじゃないか。
「三時間で間違いを……三時間で間違いを……」
ロゼリィが下を向きながら何事か呪文を呟いている。
ついにロゼリィの隠れた能力が覚醒したのだろうか。
「三時間あれば余裕で始まりから終わりまで……そう、そしてこう……」
アンリーナも呪文を覚えたようだ。
さて、ベスにリードつけて散歩と行くか。
もしかしたら、あまりのベスのかわいさに水着美女が寄って来てウハウハになるやもしれん。時間が三時間と短いってのが惜しいなぁ。
「じゃっ、ここからは個人行動ってことで! 行こうベス、楽園が俺達を待っている!」
「ベスッ」
俺がベスを引きつれ、軽快にダッシュを始めたところで上からワッカが降ってきた。ロープか? なんだこれ。
ワッカは見事に俺を捕らえ、締め上げる。
ぬ、なんだよこれは……! 俺の楽園にこんな物は必要ないぞ。
「あっはは~一発命中~さっすがアプティ~こういうことに関して二人は協力を惜しまないのさ~」
振り返りると、いつものじゃないちょっと外行き仕様の水着のラビコがニヤニヤ笑っていた。
俺を縛るロープを持っているのは、かなり際どい角度の切れ込みの水着姿のアプティ。でもいつものバニーとあまり変わらない印象か。
ロープごと引っ張ってやろうと抵抗するも、端っこを持つアプティはビクともしない。
なんつー怪力……。
くそ! 俺のベスを使って楽園美女計画がいきなり頓挫したぞ。
「まぁまぁ~社長~どうせロクなこと考えてないんでしょ~? 変にトラブル起こされても困るから~しっかり管理させてもらうよ~あっはは~さぁ行こうか皆の者~」
「はい! あなたがいればこういう恥ずかしい格好でも大丈夫です!」
ラビコの声のあとに現れたのは、露出多めな水着姿のロゼリィ。
ひらひらがついた白を基調とした綺麗な水着。ロゼリィの出るとこは出て、引っ込むところは引っ込んでいる美しい体が水着の上からよく分かる。
こりゃー……すげぇ。
「ぐうううう……さすがにこういう勝負は分が悪いですわ……でも師匠の好みは大きさじゃないかもしれませんし!」
アンリーナも水着で歩いて来た。
ちょっと子供っぽいかわいらしい水着。さすがにロゼリィに比べると威力は落ちるボディか。でもかわいいな、アンリーナ。
そして俺は一度だけアンリーナのお胸様を生で見たことがあるから、大きさは知っているのだ。うはは。
ああ、ラビコのも生で見たことがあるぞ。
あれ、俺って結構すごい男なんじゃないか。
「ひゅー! お姉さん達、どうだいご飯おごっちゃうよ?」
「ふっ……僕はかの有名な企業の社長の息子でね、どうかなこれからホテルに……」
「白いお姉さん! どうだいこの筋肉! 惚れちゃうだろ?」
「やぁ、俺らと朝まで激しい運動とかどうだい?」
「おっ断りさ~。ホラ、木のウロが向こうにありそうだよ~そちらにどうぞ~あっはは~」
白い砂浜、青い海、そして眩しい水着男子に筋肉男子……。
俺はアプティにロープで捕らえられたまま、楽園へと足を踏み入れた。ベスのリードはロゼリィが握っている。
そして集まる欲丸出しの半裸男達。
俺達の周りは筋肉達で囲まれ、水着美女がかけらも見えない状況。たまに男達の引き締まった広背筋の向こうに、チラと美女らしきの手足が見えるぐらい。
なんだよこの目を開けていたくない地獄の視界は……。
まぁ、ラビコ、ロゼリィ、アプティ、アンリーナとはっきり言って美人揃いだからな。ナンパ男が群がるのも分かるけど。でもその群れの中の先頭に立たされ、盾がわりにされるってどういうことだよ。
メッチャ男達に睨まれて舌打ちされてるし。
「……帰ろう……」
「え~何~社長~?」
ラビコがニヤニヤ俺の右腕に抱きついて来た。
「船に帰るぞ! こんな男の楽園になど一秒たりともいたくない! あとどけお前等! 彼女達は俺の大事な仲間だ、お前等なんぞに指一本触れさせてなるものか!!」
俺は奇声を上げてロープを持つアプティごと引っ張る。
捕縛された男が暴れだしたことに驚いた筋肉達の海を割り、モーゼのごとく開いた道を皆を引き連れ歩く。
「あっはは~さすが格好良いねぇ~。じゃあみなさんさようなら~二度とお会いしたくないかな~さ、行こっか社長~」
「ふふ、じゃあ船で私の水着を見て下さいね」
ラビコが右腕、ロゼリィが左腕に抱きついてくる。
「……マスター、なんてたくましい動き……素敵です」
「そうですわね、この水着は不特定の殿方にご用意した物ではないです。船のデッキでこの島の空気を楽しみましょう」
アプティとアンリーナがロープを握り小走りで俺の後ろをついてくる。
くそぅ……結局ちょっと降りて砂浜歩いたぐらいで終了かよ。
楽園水着美女は男の筋肉の隙間に手足の先っぽしか見えなかったじゃねーか……。
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