第166話 大型高速魔晶船を確保様
「みんな聞いてくれ、出発の日が決まった」
俺はのんきに宿の食堂で三時のおやつをいただいているラビコとロゼリィに言い放つ。お、それうまそうだなアップルパイか。シナモンのいい香りがここまでするぞ。
「ふぉ、社長~船どうだった~予約取れたのかい~? 混んでたでしょ~来週ぐらいかい?」
もそもそ口を動かし、アップルパイを楽しみながらラビコが紅茶に手をかけた。
「ばか言え。明日の早朝四時だ、至急準備されたし」
ラビコとロゼリィが紅茶を吹く。
ベスが綺麗にしぶきを避ける。
「よ、四時……ですか? ま、まずいです……すぐに準備を……!」
ロゼリィが急いで残りのアップルパイをぞぞぞと吸い込み、自分の部屋にダッシュしていった。
「すごいね社長~ケルシィ行きは結構混雑しているルートで~予約取るの大変なのに~」
何も慌てずそのままアップルパイを食べ続けるラビコ。
まぁ、カバン一個だけだろうしな荷物。あとはキャベツ数個か……俺が持つんだけどね。
「驚け、なんと豪華大型高速船を確保した。しかも貸切、船内の施設は無料で使い放題、ご飯も食べ放題だ」
それを聞いたラビコがさすがに驚いた顔になる。
「あ~社長~お金があるからってそういうやり方は好かないな~抑えられる経費は抑えないと~」
「ふふん、ばか言え。お一人様二百Gで往復出来る」
ラビコが二度目の紅茶を吹く。
「うっそ……安い乗り合い鮨詰めプライバシーゼロ状態でも往復千Gはいくでしょう~しかも貸切~? 何をどうやったんだい~? まさかまた漁船……」
驚くラビコに俺は宿で売っているシャンプーを指す。
紅い透明なボトルのシャンプー、売り出して以来大ヒット。これだけを買いに来るお客さんも後を絶たない、超人気商品だ。
「シャンプー……? あ、もしかして~アンリーナの専用大型高速魔晶船かい? 確かに今、港に停泊しているみたいだけど~まさかアレに乗れるとか?」
「その通り、アンリーナに土下座で頼み込んだ。お金はいいと言われたが、食事代だけでも払うと言って二百Gで行けることになったぞ」
明日の朝四時出航にさえ間に合えば乗せてくれる。
つーか今から船に乗って待っていたほうが寝坊もしないし、いいのでは。
「うへ~すごいねそれ~アンリーナの大型高速魔晶船は~この世界に数隻しかないクラスの最先端の技術が詰め込まれた船さ~私も一度乗ってみたかったんだよね~これはラッキーだな~」
世界に数隻しか無いクラスの船……やっぱアンリーナってすごいんだな。
なんで俺普通に会話してんだろうか。
そして魔晶船、そうかこの世界では魔晶石をエネルギーとして動く物が一般的なのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます