第160話 魔晶石は何味?様
「えーと、この辺か。アンリーナのお店」
来たのはソルートンの街でも高級品を扱うお店が並ぶ地域。
えーと、あの建物の裏あたりに例のエロ本屋があるんだよなー。行きたいなー……。
「いらっしゃいませ」
装飾が綺麗に施さた扉を開けお店に入る。すでに扉だけで高級感が伝わってくる。
エロ本屋じゃないぞ、アンリーナのお店だ。
店内に入ると、まるで王都のお城の中のような豪華な雰囲気。
こりゃーすごいな。床には赤い絨毯が敷き詰められ、店員さんが身なりの良い格好でお辞儀をしている。
ガラスのショーケースが並び、中には綺麗に魔晶石がディスプレイされている。ライトが当てられキラキラしてて、なんかお菓子みたいで美味しそう……。
さすがに俺は石は食わないが、味がありそうに見えるな。
とりあえず値段をチェック。
高いのはいくらでもあるが……どのへんがコスパいいかなぁ。
「あら、本当に師匠です。お久しぶりですわ、なにやら王都に行っていたとか」
お店の奥からアンリーナが歩いて来た。お、よかったアンリーナがいたぞ。
「ここしばらくジゼリィ=アゼリィに行っても師匠達がいなかったもので、お店のかわいい店員さんに聞いたら王都に言ったとか聞きまして。残念です……私にもお声をかけていただきたかったです……すぐにご用意いたしましたのに」
少しアンリーナが落ち込んだ仕草をする。
いやぁ、俺の思いつきの借金旅だったしなぁ……。
「何も言わず留守にして悪かった、心配をかけてしまったな」
俺はアンリーナの頭を優しく撫でる。髪からとてもいい香りがするな、さすがに高級品の香りだ。
「はうっ……! 師匠のなでなで久しぶりです……。出来ましたら毎日……ん?」
赤い顔からアンリーナの顔が敵発見の鋭い目になった。
「師匠……うしろの女性はどなたですの? ずいぶんと露出の多い……」
アンリーナが俺の後ろに無表情で立っているバニー姿のアプティに、腰に手を当てじろじろと視線を送る。
そうかアンリーナはアプティ初めてか。
「彼女はアプティ。とにかく魔晶石に目がなくてな、いい感じの魔晶石が欲しくてきたんだが……」
アプティが無表情にお辞儀をする。
嘘は言っていない。さすがに本当のことは言えないしな……。
「ふぅーん……まぁいいですわ。でも師匠、その魔晶石はお値段が……」
俺はアンリーナに近づき、耳元で小声で話す。
「し、師匠……? そんな急に……え、あら……王都でのレースで、それはやりましたね師匠おめでとうございます」
アンリーナに簡単にお金がある経緯を話す。
冷やかしではなく、俺は本当に魔晶石を買いにきたんだ。
「王都のレースですかーいいなぁ……一緒に行きたかったです……ぜひ来年はご一緒したいです」
そう言いながらアンリーナは魔晶石のお薦めをまとめてくれた。小さな物から大きくて綺麗な物など、当然値段の差がすごいが。
しかし見ただけではよく分からないな、アプティはどれが美味しく思えるんだろうか。
「なぁアンリーナ。試食とかないのかな」
「し、試食? 師匠……これ、食べ物じゃないですよ?」
アンリーナが驚いた顔をする。
「あ、ああ……冗談、冗談だ。お菓子でこういう綺麗な物があるから、つい味を想像してしまった」
「なるほど、確かに透明で綺麗なお菓子ありますわね。紫はぶどうの味かしら、ふふ」
慌ててフォロー。うーん、どうしようか。
この場でアプティにバリバリ食べさせるわけにもいかないし。
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