第146話 ウェントスリッターへの道 13 俺の腹に厳しい流れ星様



『な、なんと最終コーナーでメラノス=サイスを抜き去りトップに躍り出たのはハイライン=ベクトール! 見て下さい、あの輝きを! その姿はまさに流星!』



 司会者の声と、一番で最終コーナーを回ってきたメラノスを抜き去ったハイラの姿に観客席から起こるどよめきと驚き。



 しかしハイラの放つ輝きを見た観客の声は次第に歓声に変わり、拍手が起こる。



「おお、すげぇぞハイライン! あのメラノスに勝ったのか!」


「最後はどうなったんだ!? くそっここからじゃ見えなかったぞ」




『さぁ今年のウェントスリッターが決まるぞ、皆様買ったチケットを……失礼。ハイライン=ベクトールのチケットを買った勇気あるお一人の方! おめでとうございます! そしておめでとうハイライン=ベクトール! 君の大逆転劇は王都のみんなが見ていたぞ!』



 ハイラがゴール地点を通過。


 沸き起こる大歓声と舞い散る多量のハズレチケット。




『優勝はハイライン=ベクトール! なんとなんと誰もが最下位を予想していた大穴がトップでゴール! しかしその輝きはまがい物ではなく本物であると我々は言える、そうだろうみんな! ここに新たなウェントスリッターの誕生だ!』



 ハイラに惜しみない歓声と拍手が贈られる。



 ゴールを通過し、慌てて大回りに旋回しゴール地点に戻って来て貴賓室のバルコニーを興奮しながらキョロキョロしているハイラ。


 何か察したラビコが上を指し、俺とお姫様が上空にいることに気付いたハイラがさっきの最高速度で飛車輪を操り突っ込んでくる。ちょっ、あぶね……。



「先生ーーー!! やりました……私やりました……!」


 ハイラが全速力で俺に抱きついて来た。


 ぐっふぅ……みぞおちぃ……が、我慢だ。サーズ姫様が慌てて飛車輪を操り、うまく衝撃を和らげてくれた。さすがっす。



「う、うううう……うわああぁぁ……先生……先生……怖かったです、怖かったです……」


 ハイラが泣き出してしまった。


 岩場で練習はしたが、実際のコースではぶっつけ本番だったしな。


 怖かったろうな、よくやったよ……ハイラ。俺はハイラの震える肩を軽く抱く。



「おめでとう、ハイラ。……ここまでよく泣かずに頑張ったな。もういいぞ、いくらでも泣け」


「ううううううう……! うわぁぁああああ……」


 ハイラが大声を上げ、子供のように泣き出してしまった。


 俺は頭を撫で、俺なんかの作戦を信じ怖い思いに最後まで耐えたハイラを強く抱きしめる。




「まるで親子だな。おめでとうハイライン、君のレースは見させてもらったぞ。自分の得意とする物を理解し、飛車輪の特性を理解し、よくぞ短期間でここまで成長した。素晴らしいの一言だ」


 サーズ姫様が優しい笑顔でハイラを労う。


「あびばぼうぼばいまぷぅ……うううう……」



 何言ってるか分からんがハイラが必死に返事をした。












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