第136話 ウェントスリッターへの道 3 国王とご飯様
「皆様こんばんは。本日はソルートンを守り、あの銀の妖弧を撃退。先日の魔晶列車の飛龍襲撃のときも勇敢に戦い、多くの乗客を守った勇者をお招きし、共にご飯を楽しみたいと思っています。堅苦しいのは無しで、とのご希望なので気軽に楽しんでくださいね」
国王フォウティア=ペルセフォス様のお言葉に広間にいるお偉いさん、騎士など、全員が拍手を送る。
時刻は十九時過ぎ。
俺が今いるのは、お城の大広間。国の大事な式典や、他国の客人をもてなすときに使う場所だそうだ。
果てしなく場違いなオーラが俺から漂うが、国王からお誘いを受けたから断れるはずもない。
堅苦しいのはマナーが分からないので、と言ったら立食形式にしてくれたが……これすらマナーが分からない。
とにかく豪華な食い物が並んでいるので、食いまくるか。この巨大なエビ、伊勢海老的なやつか? すごいな。見たこともない果物も並んでいるが、食べ方が分からない物は今回はスルーだな。みんな俺を見ているし……。
ロゼリィもド緊張で昔のゲームキャラみたいにカクカク動いている。
アプティは普通に静かにアップルティを嗜んでいる。さすがに服は借りたぞ。ジャージやバニーはまずいだろうし。着慣れないスーツみたいので肩が動かしにくいのが難点。
「初めまして、フォウティアといいます。サーズとラビコ、ハイラインからもあなたのお話はお聞きしました。あの我が儘魔女のラビコを従えているとか、よろしければ魔女が言うことを聞くコツをお教え願いたいです、ふふふ」
国王様が俺に話しかけてきたぞ、ヤベェ……言葉使いすらどうしたらいいか分からんぞ。
「こ、このたびは……このような豪華な……ご、ご飯を……ごにょごにょ……」
うーわ、アカン。言葉が出てこねぇ……俺ピンチ。
「まぁ、うふふ。いいのですよ、普通にお話し下さい」
フォウティア様が優しい笑顔。
サーズ姫様のお姉さんなんだと……しかしサーズ姫様といいこちらのフォウティア様といい、ペルセフォス一族ってのは美人揃いかよ。
長い髪を軽く結び、頭にはキラキラ光る宝石がついた王冠。長めのシルエットが美しい黒のドレス。そこからスラリと伸びる足がとても美しい。仕草や動きは完全に王族、って感じでスキがない。
「は、はい、では失礼を承知で……ラビコは従えたって言うこと聞く奴じゃないですよ。俺も毎日振り回されていますし。でも毎日一緒にご飯食べて、どうでもいいような話をして、笑って、怒られて、そして笑い合う。こういうどうでもいい毎日が大事なんだと思います。ラビコ含むみんなと過ごす毎日はとても楽しいし、大切な時間です。誰かに強制されるわけでもなく、お互いを助け合う。仲間っていつだって、どんなときだって対等だと思うんです。だから自然と側に行きたくなる、来てくれる。互いを想う心ってのは損得勘定アリじゃあ成り立たないですよ」
フォウティア様が軽く拍手をする。
「素敵です。なるほど、共に過ごすものは皆対等である。隠すことなくお互いの想いを毎日言い合う。結果トラブルになろうと、決して側を離れない。見返りを求めずどんなときも仲間のことを想い行動する。すごいですね……言葉として言うのは簡単に出来ますが、なかなか行動として出来るものではないです。やはりラビコほどの者や、うちのサーズの心を動かすだけはありますね」
げ、いつの間にか全員の視線が俺に向いてるぞ……早く帰りたい……。
「こ、こら~! そういう恥ずかしいこと普通に言うなって~変に素直なのも考えものだぞ~」
ラビコが焦って俺の口を塞いできた。
その行動を見て、みんなが笑う。
「あははは! うちで手を焼くラビィコールをここまで手懐けた君はすごいな。我が儘魔女マスターの称号を与えたいぐらいだよ。どうだろう、うちで騎士をやらないか? そうすれば魔女も一緒に国の為に動いてくれるかもしれんしな」
サーズ姫様の発言に周囲からどよめきが起こる。
か、勘弁してくれ。
「い、いえ……自分は力が無いもので……周りが強いから俺も一緒に活躍したように見えているだけで、実際はうちの愛犬ベスだったり、ラビコだったりが一番活躍しています。ありがたいお話ですが、せめて自分で納得出来るぐらいの力を手に入れてからじゃないと、胸を張れないと思います」
外部からの奴なんていい顔されないだろ。
ラビコぐらい、よほどの実力でもないと。
「そうかな? 周りに実力者が集まるのも才能だと思うが。なんの才能も魅力も無い者の周りに人は集まらんぞ。ラビィコールと私が共通で認める男は国内にはそういない、胸を張って誇って欲しいものなのだがな」
うーわ、どうしよう。これ褒められてるじゃん。
伊勢海老みたいの食って誤魔化そう、うん味普通。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます