第80話 ソルートン防衛戦 13 たった一人の反撃作戦様

 


 地面が揺れるほどの爆発が起き、大きな水柱が上がる。




「ラビコ!!!」


「ラビコ!! もういい戻れ! 俺の横に……!」


 名を呼び叫び希望を捨てず待つが、ラビコの紫の光は見えることが無い。





 マジかよ……全滅とか……。




 俺はガクンと膝をつき、言葉が出ない状態。


 爆発の煙が晴れ、動く人影が見えた。目をこらすと影は二個。ラビコ……!




「さて……邪魔者はいなくなったね。僕とお話をしようよ」


 妖狐は右手で掴んでいたラビコの足を離し、ラビコは力なく海中へと落ちていく。





「ベスッ!」


 ベスが超警戒の姿勢。


 残るは俺達だけ。



 俺が戦って勝てる相手じゃあない。でもせめて一太刀……じゃないとみんなに会わせる顔がないぜ。


 ……やってやるさ。




 銀の妖狐が海でぽーんとジャンプし、波打ち際に着地。


 そこからゆっくり歩いて俺に近づいて来る。




「……」



 瞬間移動はしないのか。


 そういえば俺の首を掴んだときも、すごい速度で砂浜を走って近寄ってきた。


 一角獣の攻撃を避けたときも瞬間移動はせず、浮遊で避けていた。




「……なぁ、悪あがきをしてもいいか?」


「……どうぞ?」


 俺の問いに男は少し考え、優しく微笑む。



 ベス、ストップだ。攻撃はするなよ、と頭を撫でる。


 俺は砂浜に落ちている大きな貝殻を数個拾い、投げつける。



「……本当に悪あがきだ。申し訳ないが笑いそうになったよ」


 男は笑いを堪えながら、足を使い横に避けたり、軽く飛んで避けたりする。





「…………」



 思い出せ、みんなの戦いを。瞬間移動のときと、そうじゃないときの違い。


 こういうのには必ずルールがあるはずだ。


 こいつは何度も瞬間移動を使った。俺はそれをずっと見ていた。思い出せ!





「…………」



 地上と地上、地上と海、海と海。


 俺はみんなが残してくれたヒントを必死に思い出し、ルールを構築する。





 一つ、俺が一矢報いることが出来るルールが見えた。



 勝てるわけではない。


 本当に、一回だけあいつを殴ることが出来るかもしれないチャンスが一度だけある。


 そのチャンスも範囲が広く確率はかなり低いが、あいつは俺には何の戦力もないと油断している。いや、実際俺に戦力はないけど。


 だからこそ、俺に戦力がないからこそ、あいつは最短のジャンプで済ますはずだ。



 やってやる、みんなの仇を……一発だけでも殴ってやる。





 俺はベスの頭を撫で、この異世界で最後になるかもしれない戦いを始める。





「ベス! 撃て!!」








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