第74話 ソルートン防衛戦 7 街を駆け抜ける男様


「うおおお……!?」



 早足の魔法ってこういうのなのか。一歩大地を蹴るだけで五メートルぐらい跳べる。



「大股で走る感じで行けばいいのか」


「ベス……ベスッ!」


 あ、やべぇ……ベスの全力走りより早いのかこれ。一旦停止。


 俺はベスを抱え再びダッシュ。




「あと三分ぐらいか? 急がないと」


 早足効果が消える前に街の冒険者の戦力をグループ分けしたい。


 丘の上から見た映像を思い出し、一筆書きで街を抜け、港を抜け、街の南の砂浜まで行くルートを構築。



 一ヶ所目、三人グループの冒険者。全員近接、俺10段階評価でレベル2、2、5。


「お前等無事か! 敵はもう増えない! 残りの少数を叩いたら勝てる! お前等三人はこの道を真っ直ぐ港に移動して灯台側の五人と合流して、船にとりついている魚ゴーレムを頼む! 三体でいい、倒してくれ! 街を守るんだ!」


 濃い靄で敵が急に減り、何が起こったか分かっていなかった三人に指示を出す。



「お、勝てるのか!? 分かった! 港の五人と船のとこだな!」


 理解が早くて助かる。街を守りたいから危険を推してここに残った冒険者だ。想いは同じなはず。





「港に移動してくれ! 鮫は他の冒険者で落とす! ハンマーの二人は倉庫にいる四人と合流、倉庫内の魚ゴーレム四匹を頼む! 剣の五人はここを真っ直ぐ、花壇のある家を右! そこにいる弓使いの二人を援護してくれ!」


「おお、あんたジゼリィさんとこの人か! 分かった、みんな言われた通り他の人の援護に回るぞ」


 二ヶ所目、ハンマーレベル9、2、6。9の人が強いからいけるはず。


 剣レベルは1、3、2、10、8。弓の人と組めば、弓の牽制で剣が動きやすくなる。


 俺評価、剣10の女性。おそらく魔法のかかった剣使いでかなりの実力者。




「あと一分切った……! 早くあの二人のところに!」



 街を巡り、冒険者はほとんど港の魚ゴーレムに向かわせた。


 はっきり言って、空を高速で飛ぶ紅鮫相手に俺評価レベル1~9では攻撃が当たらない。しかし動きの遅い魚ゴーレムならばいける。




「いた! ローエンさん! ジゼリィさん!」


 宿のオーナー夫妻でロゼリィの御両親。


 上から見ていたが、その実力は俺評価では数字が付けられないほど。


 おそらくラビコ、海賊おっさん、農園のオーナーのおじいさんクラス。



「おっと、君が来たってことは敵さんの様子が変わったのかな」


 ローエンさんが南の砂浜のほうに視線を送る。そういうことです。


「街の冒険者の人はほぼ港の魚ゴーレムに向かってもらいました。空を素早く飛ぶ紅鮫の掃討にはお二人の力を貸して欲しい」


「へぇ、この靄の中で皆が急に統率取れた動きで移動し始めと思ったら、あんたが指示していたのかい。了解だよ。見えているんだね?」


 俺は頷き、簡単に状況を説明する。



「街上空にいる鮫の数は灯台側に二十九、商店街に六十九、公園付近に四十、港に九十七の合計二百三十五匹です。これを全てお任せしたい」


 俺は簡単な地図を書いて分布図を渡す。この二人ならばそう時間はかからないはずだ。


「おお、これは分かりやすい地図だ。数をメモりながら撃ち落としていくか、行こうジゼリィ」


「あいよ、速攻終わらせるよ」



 二人が俺の肩をぽんと叩き、笑顔を見せて走って行った。


 頼りにしてます。






 早足の効果が切れた。



 俺はベスを抱えたまま港の海賊おっさんのとこへ。




「無事ですか! 街はもう大丈夫です! あとはここにいる冒険者達で魚ゴーレムを倒せばなんとかなりそうです!」


「おお、オレンジの兄ちゃんか! がっはは、こんなもん小魚だ、小魚! 骨ごとペロリよ!」


 大斧を振り回し、魚ゴーレムをなぎ払う。すごいな、この人も。港は海賊おっさんを中心にすれば大丈夫だ。




「ベス、準備はいいか。ここからはお前頼りにさせてもらうぞ」




 俺は覚悟を決め、砂浜へ走る。







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