第12話 キャベツの魔法使い様 2
「…………あの、そのキャベツの刺さった杖振り回すのやめてもらえないです……?」
「あはは! いやぁ今日はいい日だ、まさかこんなに面白い少年と出会えるとはな」
俺の忠告は全く聞こえていないようだ。
いや、周りの人の迷惑だから元気に杖振り回すの止めて欲しいんだが……。
見た目だと、俺よりちょっと上ぐらいか。背は俺と同じぐらい。いかにも魔法使いっぽいフードつきロングコートをすらっと着こなした美人さん。
キャベツの刺さった杖を振り回していなければ、スタイルのいいモデルみたいな美人さん。
しかし……水着にロングコートって……エロいよな。
「ただいまーっす。キャベツ買って来ましたー」
「あ、はーい。お疲れ様でした、今日はいいお仕事は無かったんですか……」
お姉さんが俺を見て固まった。
正確には俺の横の女性を見て固まった。
「な、な、なな、な! なんですかその水着にキャベツの女は!!」
お姉さんが叫ぶ。うん、実に的確な言葉だと思う。
「うん? 私のことか? ああその通り、私は魔法使いさ」
話がかみ合っていない。
「あ、えーと……キャベツを運ぶのを手伝ってくれると言うので、お礼にお昼をご馳走しようかと……」
大体合っているだろ。
「あ、そ……そうなんですか……それはどうも……」
お姉さんが警戒モードのままお礼を言う。
「あははっ、お礼などいいさ。私はさっきこの男の物になった。尽くすのは当然のこと」
「……!!!! ちょっ……どういうことなんですか!!!!」
キャベツの人の言葉を聞いてお姉さんが激昂する。
あーーセーブポイントってないんだっけ? さっきの選択肢、やり直したいんだけど。
とりあえず昼ご飯。
焼き魚定食が本日のメニュー。ここの調理さんはかなりの腕前の料理人らしく、出て来る物はなんでうまい。
「あっはは~! おいし~おごりご飯ってこんなにも美味しいものだったとは~」
「……………………」
お姉さんが睨む。
あーご飯は楽しく食べたいなぁ……。
「それで、これはどういうことなんですか」
俺の左側に座ったお姉さんが右手で小突いてくる。
「あ、いやそれが俺もよく分からない状況でして……」
「あなたの物……とか……尽くす……とか……それって男女の……」
お姉さんの顔が赤くなる。いや、そういうんじゃないですって。
俺はお姉さんに細かにいきさつを説明した。
「ふぅん……まぁ信じますけど……キャベツ渡したら豹変ってなんなんですか、この人」
「いや、俺もさっぱり意味不明で……」
俺の右側でもりもり焼き魚定食を食べている自称魔法使いさん。そのご飯の食べっぷりは素晴らしいが、関わらないほうがよかったかなぁ。
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