第205話【ネタバレ有り】衝撃の緩和【入門編】

 これについては結構悩んだんですよ。

 第203話で独断と偏見ではありますが「地上最強なのが戦車」といいました。

 この戦車ですが一両七十トンくらい有るのが世界の常識だそうです。

 最初に知った時は「七十トンてなんだよ、ハイスペック厨かよ」と呟いたものですが、自家用車七十台分って凄くないですかね。


 ところで日本の戦車は九〇式で五十トン級、一〇式では四十四トンとかなり軽量です。

 これは軟弱な地盤、さほど頑強でもない道路事情も考慮されてのことと聞いていますが、良い事ずくめの軽量化に問題があると知った時は驚きました。

 なんでも、「主砲弾の発射の衝撃はすさまじく、本来五十トン級の車体でもようやく受け止め切れているところ、四十四トンと軽量では受け止めきれない」ということのようです。

 これに関してはサスペンションの工夫でいなしているという記事を目にしたことがあります。


 さてさて、徹攻兵は運動能力が高く、そんな衝撃にも耐える、と設定するのは作者である私の勝手ではありますが、もう少しいろんなことを考えないといけないな、と思いました。

 まあ「熊のシャツ」の「ガッ○」だって義手に大砲仕込んでるくらいだし、ウールヴヘジンの徹攻兵がラインメタル撃ってもいいじゃないか。

 「だって格好いいんだもん」と思ってはみたものの、そもそも平均体重六十キロ~七十キロの、普通の体格の人に取っては七十トン級の戦車なんて千倍の重さな訳で、逆にいうと千倍の衝撃をその小さな体で受け止めるのは凄いなあ、と思ううちに、ふと、「ご本人の体は耐えられても、床はどうなるんだろう」と思ったのです。


 というのも戦車の軽量化に取り組んだ一つの理由として「日本の道路事情はそこまで頑丈じゃない」「五十トン級の道路だと走れる道が限られてくる」というものがあると聞き及んでおりまして。

 「戦車の履帯の面積が」と色々調べて計算してみると、どうやら六・五平米くらい有るのに対して、徹攻兵の両足はまあ、普通のサイズの足が装甲で肥大したとしても、せいぜい〇・〇六とか〇・〇七平米くらい、足の面積って余りに小さく、「こりゃ、一檄撃つたびに盛大にめり込むわ」と思いました。


 でも、一発ごとにそんなめり込んでいたら色々とハンデが強すぎるので「徹攻兵の足はめり込まない」ということにしました。

 「謎は謎のまま」の徹攻兵ですが「足下方向への衝撃は緩和される」ということにしています。

 これについてはこれ以上の理屈もなく「遊君」のモデルである人物からは「反重力、っていう言葉しか思い当たらない」と助言を頂きまして、そのまま「反重力が働く」としています。


 ただ、何でも「働く」って決めてしまえばいいものではなく、どの程度働くのかを決めておくことで、別の形で応用する時にも説得力が増すというものです。

 実際、「戦車の主砲弾を発射する時の足下方向への衝撃の緩和」だけでなく、別の形での足下方向への衝撃の緩和を考えるシーンが出てきまして、その二つ、三つの設定は数字の上で両立するのか確かめたくなりました。


 が、

 そもそもできの悪い作者本人にはどれくらいの衝撃かなんてどうやって計算したらいいかわかりません。

 ようやく調べて、ラインメタルの薬室圧力が六百六十メガパスカルとたどりついたのですが「メガパスカルってなんだよ、ハイスペック厨かよ」と呟いたものです。

 ちなみに小銃でも三百メガパスカルくらいの薬室圧力になるらしいです。

 はてさて、薬室圧力がわかっても「つまりどれくらいの衝撃なんだってばさ」という謎が謎のままでは「それってどーなの」「テキトーに書けばいいってもんじゃあないんじゃないの」と、折角読んでくださる方のためにも、作り手としてできるだけなんとか考慮したいと思いました。

 数週間、書き進めながら、調べながら、計算しながら、考えながらした結果、「あ、これつじつま合うわ」という計算結果にたどりつきました。

 具体的な数字はここでは触れませんが「メガ○○ってなんだよ、ハイスペック厨かよ」と呟きながらも、安心感でニヤニヤしてしまったことは否めません。

 まあその、計算結果なんてパラメーターの数字が少し狂えば大きく変わるわけで、私自身が要素として導き出した諸元も、どこまで科学的に正確かということも考慮しなければいけませんが、力は尽くしたかと。


 やっぱり戦車の主砲の発射エネルギーはすさまじく、それが緩和できるくらいなら「○○から○○背負って放り出される」くらい何ともないと。

 この「○○から○○背負って」の部分は是非本編をご覧頂きお確かめください。


 作中でも実戦投入前に試験しているシーンを描いていますが、試験に当たった人物達も、ちょっとハイになるほど男の子心をくすぐられる状況かと思っています。


 もし、お気に止まりましたら100話までの本編をご笑覧ください。

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