言葉

『ねぇ、おいしい?』

うるさい位に何度もたずねた、かわいい君は、もういない。

”あぁ、おいしいよ。”

たった一言を。

僕はどうして言ってやらなかったのだろう。


『私のこと、好き?』

何度も尋ねられては、顔をしかめて言葉を濁した。

言わなくてもわかるだろうと、

思っていた僕は、大馬鹿者だ。


何の為に言葉がある?

わかっていても言って欲しいと。

君はあんなにも求めていたのに。

ただ、僕の言葉だけを。


『さよなら。』

”行かないでくれ!”

あの時そう言えば、君は戻ってきてくれたのだろうか。


”好きだ。”

”愛してる。”


何故なのだろう。

あの時どうしても、言えなかった言葉達。

今ならいくらだって言えるのに。

告げたい相手はもう、ここにはいない。

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