STARTING OVER

🍱幕の内🍱

STARTING OVER (シナリオ第三稿)

■登場人物

ショウタ

ノリタケ

タケル

チカオ

ミツ

チサト

ショウタ(子供時代)

ノリタケ(子供時代)

タケル(子供時代)

チカオ(子供時代)

チサト(子供時代)

チサトの母


==========


○街の風景(夜のイメージ)

   電車を待つ人々

   タクシーの列

   所々に明かりのついたオフィスビル

   居酒屋で飲んでいる客達


○駅前

   携帯電話で電話をしながら場所を探して歩いているチカオ

チカオ「あ、うん。いま駅に着いてそっちに向かっている。遅くなってごめんね」


○居酒屋

   店の奥のテーブルに座っているショウタ、ノリタケ、タケルの三人。久しぶりに再会し近況報告で盛り上がっている。

   チカオからの電話を受けているノリタケ

ノリタケ「はーい、待ってるよ」

タケル「でも、よく出会ったね」

ショウタ「ホント、ホント。ノリはえらい」

   得意げなノリタケ

ノリタケ「でしょう。俺、得意なんだよね、人探し」

ショウタ「俺もあれから三回くらい引っ越ししているから、もう誰にも会えないんだと思っていたら、ノリが突然家に来たもんなぁ」

タケル「だから、また付き合いが始まったんだね」

   居酒屋の扉が開く。三人がみんな入り口を気にする。

ノリタケ「あ、来た来た」

   チカオ靴を脱ぎながら、すぐに、三人のテーブルをみつけ手を挙げながら席にくる。

チカオ「久しぶり。いやぁ、懐かしいな」

   一人一人をみて、

チカオ「うわぁ、ショウちゃん、うわぁ、ター坊。懐かしい」

ショウタ「何年ぶりだろう。チカちゃん転校したの卒業前だったから……」

タケル「に、二十、いや三十年近いよ」

ノリタケ「俺たち、もうすぐ四十だよ。四十。早いよなぁ、歳をとるのって……」

チカオ「でも、みんな変わってないよ。あの頃と全然」

ノリタケ「それと、ほら覚えてる?」

   カウンターを指差すノリタケ

ミツ「よう」

チカオ「なに、兄貴の同級生の……みっちゃん?」

ミツ「中学卒業して京都に修行に出たんだよ。十年前にこっちに帰ってきてここを開いたんだ」

   テーブルに生ビールがそろう。

ノリタケ「じゃあ、みんなそろったところで乾杯といきますか」

   みんなビールの入ったジョッキを持ち、ノリタケが乾杯の音頭をとる

ノリタケ「一丁目の悪ガキどもの再会に、カンパーイ!」

一同「カンパーイ!」

   お互いがジョッキをぶつけ合う。


○タイトル『STARTING OVER』

   ビールの泡の中にメインタイトルが浮かび消えてゆく。

   店の料理。他のお客さんの語らいの様子など。


○同・四人のテーブル

タケル「そう言えば、ショウちゃんってまだ独身だよね。なんか理由でも?」

ショウタ「えー、理由なんかないよ。ただモテないだけだよ」

ノリタケ「ちぇ、よくいうよ。小学校の時は結構モテてたじゃん」

   ショウタ苦笑い。

ノリタケ「まさか、初恋の相手が忘れられないとか?」

   からかうノリタケ。

ショウタ「まさかぁ……」

チカオ「あれ、まんざらハズレでもなさそうだね」

タケル「ショウちゃんが好きだったのって誰だったっけ?」

ショウタ「……」

タケル「チサト、じゃなかった?」

ノリタケ「えーっ、嘘!でも、チサトは絶対、俺に気があったね」

チカオ「よくいうよ」

タケル「そうだよ。確かチサトとショウちゃん付き合ってなかった?」

ショウタ「付き合ってなんかないよ。付き合うったって、小学生だぜ。手も握ったことないよ……」


○塾の帰り道(ショウタの思い出)

   人通りのない住宅街の夜道。

   塾の鞄を掛け坂道を歩くショウタ。そのすぐ後ろにチサト。

ショウタ「もっと、離れて歩けよ」

チサト「ねぇ、ショウちゃん」

ショウタ「なんだよ」

チサト「今日、何の日か知ってる?」

ショウタ「バレンタインだろ。お前、好きな人いるのかよ」

チサト「あのね……ノリちゃんが、あたしのこと好きだって……」

ショウタ「……そう……」

   一瞬の沈黙

   気まずい雰囲気を消すようにチサトがショウタを追い抜き振り返る。

チサト「口裂け女の話って知ってる?」

ショウタ「知ってるよ」

チサト「こないだ桃二小の子が見たんだって」

ショウタ「それ、本当?先月は谷戸小の子が襲われそうになったって……」

チサト「だんだん、近づいて来てるね。あたし、怖いよ」

ショウタ「お、俺だって怖いよ」

チサト「もし、今、口裂け女に出会ったらどうする?」

ショウタ「ど、どうするって、言われても……」

   懐中電灯を顔の下から照らしショウタに近づくチサト。

チサト「ねえ、どうする?どうする?」

ショウタ「笑わせてやる。お前が怖くないように、面白い事考えて……」

   チサト嬉しそうに、小走りになる。


○チサトの家の前

チサト「……約束忘れないでね……。じゃあ、また明日、学校でね……」

   家の前で手を振るチサト。玄関が閉まるのをみて走り出すショウタ。


○チサトの家

   玄関で靴を脱ぐチサト

チサト「ただいまー」

チサトの母(声のみ)「おかえり、あんたショウタ君にチョコ渡せたの?」

   黙って自分の部屋に行くチサト。


○住宅街の道

   何かから逃げるように走っているショウタ

ショウタ「いない、いない、口裂け女なんていない、いない……」


○居酒屋

ミツ「これ、東中野小の名簿」

一同「最近の?」

ミツ「そう。同窓会で買うんだよ」

ノリタケ「電話しようぜ」

三人「えっ?」

ノリタケ「せっかく名簿が手に入ったんだ。電話しようぜ」

ショウタ「誰に……」

ノリタケ「チサトに決まってんじゃん」

タケル「いるわけないって。普通、嫁にいってなきゃまずいだろ」

チカオ「面白そうじゃん。これ使っていいよ」

   自分の携帯電話をノリタケに渡す。

ショウタ「やめとけよ。親に迷惑だろ」

   構わず、電話をかけ始めるノリタケ

ノリタケ「あ、もしもし……」

   一同沈黙(聞き耳を立てる)

ノリタケ「わたくし、ショウタといいますが、チサトさんいらっしゃいますか?」

ショウタ小声で「あ、汚ねぇ……」

   一同展開を待つ。

ノリタケ「あ、チサトさんでいらっしゃいますか」

ショウタ「本人かよ!」

ノリタケ「あ、本当はノリタケですけど……覚えてます?小学校のとき一緒だったでしょ」

チカオ「おい。独身かどうか聞いてみてよ」

タケル「実家にいるんだから独身じゃないの?」

   嬉しそうなチカオ。

ノリタケ「実は、ショウちゃんと今一緒に飲んでるんだけど、ショウちゃんがチサトのことが好きで、今でも忘れられないっていうんだよ……」

ショウタ「やめろよ。そんなこと言ってねぇだろ」

ノリタケ「え、今何時だと思ってるの?って?」

   時計を見るチカオ

チカオ「とっくに十二時過ぎてますねぇ」

ノリタケ「スッゲェ、不機嫌」

   ショウタ、ノリタケから電話を奪う。

ショウタ「ショウタだけど、ごめん。こんな遅くに大人気なくて……。何十年ぶりかで小学校の仲間がそろったから、つい調子に乗ってしまって……また、改めてお詫びするから」

   電話を切り、チカオに返すショウタ。

ノリタケ、ショウタのまねで「……つい調子に乗ってしまって、また改めて……」

   一同、子供っぽくからかう。

ミツ「名簿貸してやるから、コピーしてこいよ」


※※※途中原稿紛失※※※


○ノリタケの仕事場(酒屋)

ノリタケ「今、ショウちゃんから電話あって、小学校がなくなるらしいって!東中野小学校がなくなっちまうんだよ。俺たちの母校が!」


○タケルの仕事場(営業車中)

タケル「そうか……。いよいよ少子化の波が身近にきたんだね。わかった、集まろう。日程決めたら教えて。必ず調整するから」


○街の風景(都市開発のイメージ)

   建設中のマンション、オフィスビル

   工事中の道路

   古ぼけた建物

   空にそびえるクレーンなど


○小学校 日変わり

   学校の前で待ち合わせた四人。懐かしそうにあたりを見ている。

ショウタ「懐かしいなぁ……」

タケル「なあ、何だかずいぶん小さいね」

チカオ「校庭だって、もっと広かったような……」

ショウタ「ああ!トチノキまだある」

ノリタケ「トチの実、よく拾ったよね」

チカオ「そうそう、朝早く来る唯一の楽しみ」

   トチノキのそばに落ちていたドッジボールを拾うショウタ。

   ノリタケに投げつける。

ノリタケ「痛てっ!」

   そのボールを投げ返そうと拾うと子供に変わったノリタケ。

   ボールを当てられた、チカオ、タケル、ショウタ、みんな小学生になっている。

   カラーボール当て。鉄棒。ドッジボール。鬼ごっこ。

   当時の遊びを楽しんでいる。突然、校門をみて動きが止まるノリタケ。

ノリタケ(子供)「あっ!」

   ドッジボールがノリタケに当たり視線の方向に転がっていく。

一同「???」

   ボールが転がった先に、一人の女の子が立っている。

ショウタ(子供)「チサト……」

   少女がボールを拾い、近づいてくる。

チサト(子供)「みんな、元気そうね。全然、変わってないね」

ノリタケ(子供)「(得意げに)一応、連絡しておいたから」

   一同よくやったといったノリタケを称える表情

ショウタ(子供)「俺……」

   ノリタケ、ショウタがチサトに近づくようにショウタの背中を押してやる。

ショウタ(子供)「俺、やっぱり、ずっとチサトの事……」

   チサト嬉しそうに、ショウタの告白を聞いている。

ショウタ(子供)「ずっと……」

   三人、ショウタの告白をニヤニヤしながら見ている

タケル(子供)「もう、大人なんだから、その先を言わなきゃ」

チカオ(子供)「そうそう、もう大人なんだから……ね」

   大人になっているショウタ。

   さっきまで、子供だった三人、大人になっている。

ショウタ「(真面目な顔から、くしゃくしゃの笑い顔で)また、面白い事考えてやるよ。チサトが怖がらないように……」

   チサトそんなショウタを見てクスクス笑い出す。

   二人の成り行きを見ている三人。

ノリタケ「うわぁーーー。全然ドラマチックじゃないじゃん。もっと感動を演出しようよ!」

チカオ「でも本当。またみんなに会えてよかったよ。本当によかったよ。十分ドラマチックだよ」

タケル「人生やっと半分。まだまだこれからだね」

   ショウタとチサトの再会を、幼なじみの再会を、祝福するかのように桜の花びらが五人を包み込む。


○エンドロール

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