第9話 セイラに見られた

「おいレオ!」


 寮に帰って来たら友人に囲まれた


「なんだよ、怖い顔して」

 みんな真剣な目つきで俺を見ている


「お前、セイラちゃんと会ってるのか?」


「馴れ馴れしくセイラの名前を呼ぶなと言ったろ? 俺たちのことはお前らに関係ない」


「なぁ、ちょっと聞くが、セイラちゃんの何が気に入らないんだ? あんな清楚で可愛い子中々いないぞ」


「セイラが可愛いのは昔からだ、お前ら物珍しいだけだろ?しばらくしたらセイラも他の女のようになるかもな。今はただの垢抜けない田舎娘だけど」


「セイラちゃんがいるのに他の女と遊ぶのはやめろ。可哀想だろう」


「セイラがお前らに何か言って来たのか?」


「言うわけないだろっ!」


「じゃあ口を出さないでくれ! 卒業したら田舎に帰ってセイラと結婚する。俺の将来は決まっているんだ。学生時代の今しか自由がないんだ」


「おまえ、その考え方間違ってるいるぞ……」


******


 部屋に入り、ベットに横になる。セイラは可愛い、分かっている。そんな事は!

 ただセイラが田舎にいた時と変わらないから、イライラするんだ



 セイラが俺のことを嫌いになるわけがない。セイラは小さい時から周りに俺しかいなかったんだから多少放っておいても大丈夫だろ。手紙に返事をしなくても、手紙を寄越してくるくらいだ。


 何も知らないあいつらに、とやかく言われる筋合いはない。



 今日アイリといるところをセイラに見られてしまった。

 目があった瞬間パッと目を逸らされてその場を去った。



 ……気まずい。セイラの家に行って以来話す事もしていなかった。

 アイリたちにもセイラ婚約者の話はしていない。

 アイリと遊ぶくらいは別に構わないだろう。浮気をしているわけではないから



 それにセイラがこのことに関して文句を言ってくるわけではない。

 外野がうるさいだけだ。




******


 翌朝


「おはよう」


 昨日は言い過ぎたと思い、少し早めに朝食を取りに来て、言い過ぎたことによる謝罪をしようとした


「あぁ、おはよう」


 食べ終わった友人は挨拶をして、立ち上がった。いつもならくだらない話をしながらも待ってくれるのに


「おい、もう行くのか?」


「今日は早く出ようと思ってな。おまえテストが近い事わすれてんじゃねぇの?」


 テストが近いのか……さすがに勉強しないとまずい。次赤点を取ったら家に報告されてしまう

 はぁっ。面倒くさいな。



******




「レオ・ファーノン、何度も言わせるな、課題が出ていないのは、お・ま・え・だ・け」


 面倒な教師に会ってしまった……



「課題は出さない、授業はサボる、遅刻する、テストの点数も悪い、素行も悪い、良いところは顔だけか?」




 酷い言われようだ




「だせばいいんだろ? ちゃんと出すよ」

 この教師は課題を出すまでしつこい


「次赤点を取ったら、ご両親に連絡が行く。ついでに進級も見送る。そうなったらおまえの婚約者と同じ学年になるな、良かったじゃないか」



「それは勘弁してくれ……ってなんでセイラの事!」

「私はユベールの学生の時からの友人だ、見学に来ていた時にユベールと偶然会ってな。おまえの話を聞いた」


「ユベール兄さんから監視されてるってわけか……」



「それはないな。学園内の事を私から漏らす事はしないさ。ただしおまえの行動に目を瞑るつもりはない、学生は学生らしく過ごせ。取り返しがつかなくなるぞ」





 どいつもこいつも説教くさい。このままではダメな事は分かっている




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る