第39話

リゼリザの屋敷に帰ってきたシルメは、ユーファには話さなかった家族離散のことをリゼリザに話した。自分には行く場所がないので、また雇ってほしいと伝えるためだった。だが、リゼリザは意外なことをいった。


「君、剣の修行をしてみる気はないかい?」


 その言葉は、意外なものだった。


 今までの一度も、そんな話は出たことがなかった。


「知り合いの剣士が、弟子が少なくなったって漏らしていたんだよね。だから、君に弟子になってもらいたいんだ」


 リゼリザの話を聞いたシルメは、その話を断ろうと思った。シルメは今まで肉体労働ばかりしていたから、武器を握ったことはなかった。だから、素質はないと思ったのだ。


「君は賊から、ユーファを守った。素質はあると思うよ」


 リゼリザは、そう言った。


「けれども、俺は剣を握ったことがありません」


「そんなことは問題にはならないよ。君は、まだ若いんだから」


 リザリザは、そう言った。


 だが、シルメは信じられなかった。自分が剣士になる未来など。


「……将来、ユーファは僕の跡を継ぐよ」


 唐突に、リゼリザは言った。


 シルメは、それがどんな意味なのか分からなかった。


「そうなれば、君は危険と分かっていながらユーファを見送ることになるよ。でも、君がユーファの隣に並べるほどの剣士になれば、君は隣でユーファを守れるよ」


 シルメは、はっとした。


「ユーファは……そんなに強くなるんですか?」


 シルメの質問に、リゼリザは微笑んだ。


「このままでいけば確実にね」


 シルメは考える。


 一人前の魔法使いになれば、きっとユーファは今以上の無茶をするだろう。魔法を自由に使えるようになれば、無茶の幅も広がるかもしれない。そうなったとき、彼女を誰が止めるのだろうか。


「でも……そんな理由で剣士を目指してもいいんでしょうか?」


 シルメは、尋ねた。


 リゼリザは、頷いた。


「目指す理由は、人それぞれだよ」


 リゼリザは、そう言った。


 シルメは、少し悩んだ。


シルメの家族は、全員がいなくなってしまった。今ではユーファだけが、家族のようなものだった。その最後の家族をシルメは、守りたいと思った。


「剣の修行をします」


 シルメは、そう答えた。


 リゼリザは、満足そうであった。


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