愛のゆくえ

春の小径

第1話


「どうだろう。私と結婚してもらえないだろうか」


兄の親友からそう言われました。

彼は兄の学友だったこともあり、学生時代からの付き合いがある。

両親の死によって兄が当主として領地に戻ってきて以降、時々王都から訪ねてくるようになった。

領都の学校に通っていた私にとって彼は憧れの人だった。


「いまさら、だわ」


そう、なのだ。

私は正式に婚約が決まる前に精一杯の想いを告白したのだから。

でも「すまない。きみは妹にしか思えない」と見事に玉砕。

私は生前の父が交わした約束により、幼馴染みである公爵家の嫡男との婚約を受けたのだ。


「申し訳ない。あの頃は『親友の妹』としかみていなかった。だが、告白されて意識するようになった」

「だからとお答えしました。あなたにとって私の告白が『恋のはじまり』だったかも知れません。ですが私には『恋の終わり』だったのです」


何か言いかけて開かれた口は、一言も発することなく閉ざされた。

彼もまた、自分の告白が『恋の終わり』になったことに気付いたのだろう。


「これからも……変わらず来てもいいだろうか」

「お断りします」


私の拒絶に大きなショックを受けたようだ。

……どのツラ下げて、私の前に現れるつもりなのか。


「あなたは私への恋心に気付いてから……何をしたのか。私が、#私たち__・__#が気付いていないと思っていましたか?」


今度のショックは先ほどとは違うもの。

拒絶されただけでなく、自らがしでかしたことが私に気付かれていた驚きからだ。


「なぜ……」


ポツリと呟かれた言葉が彼の本音だろう。

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