耳に届く

らんじょう

気がつくと

ボクは森の中を歩いていた


じわと湿る靴の感触が気持ち悪い

まだそれほど長くは歩いてはいないのだろう


大きな丸い月が

ボクの足元に陰を落とす


何処へ


ふとそんな疑問が頭を過る


立ち止まり

瞼を閉じ

意識を中へと潜り込ませる


記憶はまだ

浮かんでは来ない


「音が…聴こえる」


音のした方へ

顔を上げ

重い脚を持ち上げる


次第に音が

リズムへと変わってゆく

「祭囃子…」


恐怖など何処かへ置き忘れてきた

ボクの脚は少し

軽くなっていた


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