私はドSですけど!? じゃあ、どうして顔が赤いんだ?
「——お、お……うぉ……あ、葵は——俺を……ころ、ころす……気かっ‼‼‼」
——あの嫌味な台詞より数分後、底が3メートルほどあるプールに投げ込まれた俺はバタバタと水しぶきをあげてから葵が投げたビート板にしがみついていた。
ニヤリと口角をあげ、この世のものとは思えないような笑みを溢しながらこちらを見つめる葵。銀髪幼馴染に見つめられて嬉しくないのは初めてかもしれない。
「はは~~ん、さっきの威勢はどこへ行ったのかしらねぇ、隼人君?」
「ど、どうしてくん呼び!? さっきからマジで顔が怖いんですけど? 俺なんか悪いことしたか⁉」
「した」
「なんだよ、何をしたんだよ、俺は」
「麻由里の水着見てたじゃんっ」
「そんなk————」
いや、確かに葵の言う通りだった。
葵と話している時は葵ではなく、目の前で翔と談笑している椎奈さんを見ていた——気がする。
俺が気付いてあっとした顔をすると、葵が不満そうに身を寄せてくる。
「うぅぅぅぅ‼‼」
水がぐわりと動き、水しぶきが上がった。
たぷんと水と空気の狭間で揺れる胸にもちろん目がいった。
——確かに、こう見てみると椎奈さんとは胸の大きさが違うな。
「——すまん、つい、な」
「ついって……そ、そんなに私に魅力がないのっ……」
頬を赤らめ、チラチラとこちらの様子を窺ってくる葵。
さっきまで自分の体にそれなりに自信があるとか言っていた人とは思えないが、言わせてもらうけど、葵に魅力がないことは断じてない。
いつもは服で隠れている部分が合法的に見える時に、男子は少し胸が高鳴るってだけだ。今思えば、小学生の時のプール授業の時ももっと見とけばよかった。純粋な時期に限って異性のことなど気にしていない事ばかりだからな。
「そんなことは——ない」
「じゃ、じゃあ——なんでっ」
「それはまぁ……フレッシュさと言うか。いつも会わない人のそういう姿って結構あれじゃないか?」
そう言うと、ムスッと顔を顰めた。
しかし、すぐに顔をあげて、俺の後ろを見つめる。
そして、一言。
「——私は、そそられないけど?」
「え?」
何がだろうか、俺も合わせて後ろを向くと翔の姿。
さすがにパーカーを脱ぎ捨て、椎奈さんとプールサイドで談笑していた。
というか、それはいくらなんでも——まぁ、聞こえていないだけ大丈夫か。ちょっとかわいそうだけど。
「あぁ——まぁ、そうかもな」
ちなみに、俺もあまりいい肉体だとは思わない。
「……じゃあ、そうじゃん」
「いや、男と女じゃ違うだろ。やっぱり、うん……葵の体、興奮するし————あ、いやそういうことじゃなくて——っ」
思わず、殴られると感じ咄嗟に肩を竦めると——顔を隠しながらうぅ、と葵は恥ずかしそうに唸りだした。
「——そ、そう……そっか」
「あぁ~~ま、まぁ」
「へ、へぇ―—そっか、お、お世辞がうまいわねっ!」
「お世辞じゃ——ないんだけど、うん。すまん」
「なんで謝るのよ」
「だって、少し怒ってそうだし」
「お、怒ってはないし——っていか、さっきからなんで私ばっかり赤くなってんのよ‼‼」
それは知らねぇよ。
俺はただ、褒めてただけだ。
「やっぱり、これじゃドSじゃないわね。もうちょっと付き合って、隼人」
「え?」
すると、やる気になったのか、拳に力を入れ始める葵。
気づいて、今一度足を後ろに退くと——そこには壁。
つまりはプールサイドだった。
「あ」
「ど、ドSとして——も、もっと!! いたぶってあげるからっ‼‼」
「お、おま——」
「さっきの借りもこれで返してやるわっ‼‼」
「そ、そんなこと俺は——」
「知らないっ‼‼ いいから頭差し出せやコラぁ‼‼」
「っ——あぁん‼‼‼」
そして、俺は再び。
ドSの定義のおかしさになど気づかず、その日が終わるまで水着を着た銀髪美少女幼馴染にいじめられる羽目になった。
<あとがき>
1日遅れてしまってすみません‼‼
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