むぅ、なんか嫌なの‼‼
「はぁ……」
まったく、朝からとんだ災難だった。
工学部情報科に通う俺はいつも通り、葵と一緒に大学まで行き、ついたらすぐに別れて工学部棟のある西学区へ向かったのだが————事件はそこで起きたのだ。
路上に恐らく上の学年であろう女性が研究会の資料らしきものをばらまきながら倒れこんでいたのだ。
「いたた……」
「あの、大丈夫ですか?」
「あ、いえ……ちょっと転んじゃって……たたた……」
「あぁ、血が……あの、これ使ってください」
「えっ、いや大丈夫ですよ!」
「いいから、これで止血してくださいっ。ばい菌でも入ったら足腐っちゃいますよ?」
「んっ……随分と怖いこと言うんですねっ……そこまで言うなら、使いますっ」
彼女にポケットから取り出したハンカチを渡し、横にしゃがみこんで散らばった資料を拾う。
まったく、こんなになってしまっているのに周りの大学生たちはどうして拾わないんだか。日本人の悪い所が出てるな。大学生にもなって人見知りは勘弁してほしい。
「えっと、これ洗った方がいいですかね?」
「あぁ、俺が家で洗うんで大丈夫ですっ」
「——うえっ、まさか私の血であんなことやこんなことを!?」
おい、この女。助けてやったのになんてこと言いやがるんだ。
「しないわ。名前も性別も知らないような女でやるかっ」
「せ、性別は女じゃいっ‼‼」
突っ込みながらも立ち上がった彼女。
どうやら背丈はあまり高くはないくらいで、女らしい塊もあまり大きくはないらしい。
「それで、俺はもう講義があるんで、じゃあ」
「あ、あのっ——」
振り返って立ち退こうとすると、彼女が俺の袖を掴んだ。
「な、なんですか?」
「あ、いえ―—その、名前を聞こうと——」
「名前ですか? あぁ、えっと俺は工学部一年の藤崎隼人ですっ」
「藤崎、隼人……なんか、どっかで……」
「知ってるんですか? 別に俺、有名人とかじゃないんですけど……」
「あぁ、いやっこっちの話です! あ、それで私は農学部三年の
「は、はぁ……」
「あ、ラインとか交換する? これもなんかの縁だしっ」
「いや、別に——」
「ほらほら貸して!」
俺のポケットから勝手にスマホを取り出し、さささっと操作していく。「はいっ」と返され、ラインを開くと「さとうかえで」という平仮名の名前があった。
「じゃ、私も行くね、ばいばいっ!」
「……」
颯爽と去っていく佐藤という女。
どこかで聞いたことがある響きだが——、と時計を見ると時刻は10時30分。
「うわっ、もう講義始まってるじゃん‼‼」
そうして俺もその場を走り出した。
「てなわけで……面倒な教授に変なこと茶々入れられて……ほんと、俺だけレポート10枚だってよ……ひどすぎるだろ」
「……何、その女?」
「え——?」
食堂のカレー定食をパクパクと口に運んでいると、葵が声色を変えて呟いた。
「だから、何? その女? 誰?」
「え、いや別に——」
「私は——誰かって聞いてるんだけど?」
「っ——さ、佐藤楓さん……先輩だよ、農学部三年の」
「へ、へぇ……それで、ラインも持ってるんでしょ?」
「や、別にこれは勝手に―—」
「むぅ……ひどい」
「え、いや何が……」
「ひどいもん‼‼ 私に内緒で変な女と‼‼」
「変とか言うんじゃねえ……」
「だって、そんなビッチみたいなやつ……なんでっ……」
涙目でむすっと頬を膨らませる葵。
まったく、どこに嫉妬しているんだ。別に想像してるような関係でもないし、金輪際関わることなんてないだろうし、心配なんてしなくてもいいのに。
「ビッチとか言うな。失礼だぞ。それに俺と彼女は何でもないから、ただ助けたってだけ、たまたまだ」
「うぅ……でも、なんかやだ」
「彼女かよ……まったく、大丈夫だって」
「彼女じゃなくても気になるのっ‼ お、幼馴染だし……」
何の理屈で言っているのかは分からないが——嫉妬している姿は可愛いからまあ、いいだろう。
はぁ、とため息をつき、俺は潔白だからと告げて彼女の頭を撫でる。
「っ……そういうのは、ずるい、なんか」
「信じてくれたか?」
「う、うん……」
「あ、でもな、俺も葵とあの矢吹って言うやつの関係気になるんだからな?」
「ん。別に、私は矢吹さんの事好きじゃないよ?」
「あぁ、知ってる。だけで心配だから、頼むな」
「……わ、分かった」
って、なんで俺たち——付き合ってもいないのに束縛し合ってるんだよ。
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いやぁカクヨムコンとmf文庫j新人賞第3期用の作品も考えていかなきゃなんですけど、難しいっすね。最優秀賞とか頂いて、僕より先進んでいる作家たちを蹴散らしたいです。カクヨムコンに向けた作品も2ヶ月後くらいに出していくと思いますが、応援して頂けると幸いです。
なんか1ヶ月で総合週間10位以内に入った中学生がいるらしいですね。
くそぉ。悔しいぜ
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