第287話 だが変態だ!

「な、なんだと!?」

 リーゼント親分は驚いたような表情を浮かべる。

「ビャッコ! 戦うのはジャンケンで決める約束だろ! 何先に手を出してんだよ!?」

 セイリュウはビャッコの肩を掴んだ。

「向こうから仕掛けてきたんだ。許してくれよ......今度昼飯おごるからさ!」

 ビャッコは手を合わせてセイリュウに謝った。

「忘れるんじゃねえぞ! ゲンブ、ここはビャッコに任せることにしよう」

「そうだな。仕方がない......ビャッコ! オレの分の昼飯もおごれよ」

 そう言ってセイリュウとゲンブも下がった。

 ......昼飯程度で譲るのかよ! まあでも仲間同士で戦って『勝ったやつがあいつと戦うぞ』とか言い出さなくて良かったけどさ!

「待たせたな。オレが相手になろう」

 ビャッコは指を鳴らして戦う準備を始める。

「いいのかよ? 何なら3人まとめてかかってきてもいいんだぜ?」

 リーゼント親分は人を小馬鹿にしたような顔で挑発する。

「お前の方こそどうだ? 後ろに居るモブリーゼントどもと一緒に戦ってもいいんだぜ?」

 ビャッコも負けじと挑発し返した。

「おい! お前ら! 一緒にこいつを倒すぞ!」

 リーゼント親分は後ろに控えているモブリーゼント......って言い方可哀そうだな......を呼び寄せた。しかもさ......サシの勝負しないのかよ!!

「おいおい、本当に一緒に戦うのかよ? まあオレは一向に構わないけどな」

 ビャッコは呆れたような様子を見せる。

 モブリーゼントは軽く数えても50人は居るだろう。1人1人は弱そうとはいえさすがに数が数だけに大丈夫なのか心配だ。

「お前らやっちまえ!」

「「うーっす!」」

 リーゼント親分の掛け声で武器を持ったモブリーゼントたちが一気にビャッコに押し寄せる。対してビャッコは剣を腰から抜かず、首を鳴らして準備運動をしているのだ。

「さて、そろそろ行くか」

 ビャッコは準備運動を止め、空手の練習でやるような正拳突きをした。すると誰にも当たっていないのに20人くらい宙を舞い地面に叩きつけられた。

 どうやらビャッコはただの変態じゃなくて強い変態で安心したよ!

「貧乳は素晴らしい......」

 なぜかビャッコは横目で馬車から身を乗り出している僕の胸部を見つめている。

 ......いや、やっぱり変態だから安心はできないかな......

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