第50話 見つけたコトと俺


「あ!」


つい自分の世界に入り込んでいた。


「そうだ、は・・・?」


キョロキョロと辺りを見回していると


「うわっ!!」


逆さまの顔が急に正面に現れた。


「ちょ、もう・・・心臓に悪いから・・・」


(基本ビビリなんだから、ホント勘弁して)


「なにがみえた?なにをみつけた?」


はなんだか嬉しそうに聞いてきた。


「なに・・・って」


俺は少し考えてコトバを選んでいたけれど


(ちがう、ココは・・・感じたまま、だよな)


もう構えたりとか、恰好つけたりとか、


どうでもよくなっていた。


「えっと・・・広~い空から見ると、ひとつひとつの灯りがすごくちっちゃくて、でもすごくキレイで・・・う~ん、見つけた?っていうのは、よくわからない、かなぁ・・・」


「よくわからない、かなぁ。」


は、そんな困った感じではないけれど


少し、”どうかな・・・”っていう顔をしていた。


「う~ん・・・なんか今までこうなったらいいのに、こうならなきゃダメなのに・・・って、やたらと欲しがっていたモノが、なんか・・・それって実はちょっと違うのかなって、思えてさ・・・いや、もちろんそうなるコトも大事だっていうか、実際お金だって欲しいし、有名にだってなりたいし・・・でも・・・なんかそうなってからの俺自身がまったく想像できなくてさ・・・今まで頑張ってきたワケじゃないしさ・・・いい歳して、全然現実が見えてないって言われそうだけど・・・でも、今まで・・・ただ欲しがっていただけっていう、そういうのはもう全部無しにしたいっていうか・・・お、俺自身をまっさらにして、もっと深く・・・いろいろ考えてみたい、っていうか・・・俺自身がシアワセでいるために、今の俺でも出来るコトを・・・ちゃんと探したい、っていうか・・・なんか・・・上手く言えないけれど・・・なんとなく・・・今のままじゃ、なんか・・・ダメな気がする、かな・・・」


「それがみつけたこと?」


「・・・どうなんだろ・・・なんか、こんなに広い空に放り出されるとさ・・・俺自身も含めて全部ちっちゃく思えてくるんだよね。単純だけど・・・でも、ちっちゃいなりにも、今まで真剣に、精一杯がんばってきたからさ・・・それだけは認めてやりたいっていうか・・・今まで俺の生きてきた世界で、・・・その、ちっちゃなひとつひとつも・・・実はすごく大事だったな、って、そんな風にも思っていて・・・いいコトも悪いコトも含めて、間違ってた、って思うコトも・・・きっと必要なコトだったって・・・無駄じゃない、って・・・だから、戻ったら・・・俺がココロから望む方向に・・・俺らしく生きていくために・・・俺はどうしたいんだ?どう生きていきたいんだ?・・・って、ちゃんと考えてみたい、かな・・・」


自分でも


”照れもなく何言ってるんだろう”


って、思ったけれど



ただただ優しい笑顔で


黙って聞いていてくれていた。


「ごめん、俺のハナシばっかで・・・そうだ!今からどこに行こうか?飛べるトコロまで行ってみる?西のそらのずっと・・・ずっとその先の向こうの街から来たんだっけ?それ目指していってみるとか・・・」


俺は空の飛び方なんて全然知らないけれど


不思議とこの青い翼は


違和感なく


自由自在に俺を飛ばせてくれている。



俺の提案に


賛成するワケでも


反対するワケでもなく


少し視線を外して


思いをどこかに向けているように見えた。


「・・・にしのそら」


「え?」


「・・・そのさきのずっとむこうのまち」


俺はが指差す方向を見た。


街の灯りも見えない


ずっとその先が


が戻るべき場所につながっているんだろうか。


「・・・もうすこし」


「え?」


よく聞こえなくて聞き返そうとしたら


がとびっきりの笑顔で振り返った。


ドキっ!とした。


「ぐる~っとまわって、ぷりんにいこう!」


「え!?ちょっ、ぐる~っと、って・・・どこ!?って、お、お、おーーーい!!」



楽しそうに俺の腕をとって


高く高く舞い上がって


大きく1周回って


東のそらに向かって羽ばたいていった。

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